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日記 … Kametarou Blog
映画「約束」と名張毒ぶどう酒事件
仲代達矢氏主演の映画「約束」を見た。名張毒ぶどう酒殺人事件の犯人とされた奥西勝という人の獄中半世紀の話である。
この事件について、私は恥ずかしながら全くといっていいほど知らなかった。そして映画を見て、感動と怒りを禁じ得なかった。
昭和36年(1961)の3月28日、三重県名張市のはずれの小さい村で行われていた懇親会で、日本酒(男用)とぶどう酒(女用)の楽しいひとときの中で、女たちが突然苦しみ始め、5人が死んだ。この犯人とされたのがこの映画の主人公奥西である。彼は妻と愛人の三角関係を清算するために女を毒殺しようとしたというのである。
第一審では無罪、しかしその後第二審は死刑判決、最高裁で死刑決定がなされた。その後、何度も再審請求が行われたが結論は変わらなかった。
50年余の独房生活と死刑を待つ暮らし。今奥西氏は何度目かの再審請求を行い「再審開始」の決定を待っている。
この事件は物証がほとんどない。唯一といっていいぶどう酒の王冠の歯形も、奥西氏の自白と矛盾する。
2010年4月、最高裁は、弁護団の特別抗告を受けて毒物を詳しく検証するように名古屋高裁に差し戻した。この動きが再審の扉を開けることになるのか。
私は昭和20年代前半にあった政治的意図を持ったいくつかの事件(この最たるものが「松川事件」だった)を調べたことがあった。それこそ半世紀も前だった。悲しいことに名張ぶどう酒事件はこの映画を見るまで知らなかった。
まだこういった冤罪の裁判が続いているとは!?
第一審で無罪の判決を出した裁判官はその直後判事を辞めた。そして有罪判決を出した高裁の裁判官はすぐ栄転していったという。
この映画は、日本のカゲの部分を明らかに教えてくれる。そして裁判の問題点も。
民主主義というのは、国民が立法・行政・司法の国家三権をしっかり監視できる政治的能力を持ち合わせていないとうまく機能しないのだということもまた再確認させてもらった。
ぜひ多くの人たちがこの映画を見たらいいと思う。
主役は日本映画の主役といってもいい仲代達矢氏と樹木希林氏。
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