ある毒物に汚染された魚介類を食べると、冷たいものがやけどしそうに熱く感じられるなどの症状を呈する。この不思議な症状[シガテラ食中毒]を引き起こすシガトキシンという物質は、地球上で最も奇妙な毒物かもしれない。
シガトキシンは非常に大きな分子で、熱帯の海洋に生息するある種のプランクトンによって作り出され、それを食べた魚の体内に蓄積される。写真のフエダイ科の魚レッドスナッパーもその一種だ。
[シガトキシンの毒性は、フグ毒(テトロドトキシン)より百倍近くも強いが、1匹の魚に含まれる量が極微量なので中毒しても死亡することは少ない。しかし、神経(ナトリウムチャネル)に作用するので、知覚・温覚異常のほか、目まいや脈拍・血圧低下、マヒなどに数カ月以上苦しむことになる。
日本では沖縄地方が主な発生地だったが、温暖化に伴い、近年では発生域が北上し本州でも事例が報告されている。千葉県勝浦市近辺において、水揚げされたイシガキダイの料理によるシガテラ中毒について、製造物責任法に基づき料亭に損害賠償責任を認めた事例がある]
その大きく複雑な構造から、シガトキシンの合成にチャレンジする有機化学者は多いが、治療法を研究するためには、再生可能な形で供給できなければならない。[天然のシガトキシンは採取と単離が困難で、0.3mg単離するために、最も毒を多く含むドクウツボを870匹、5年がかりで採集する必要があったとされている]
幸い、東北大学の平間正博氏教授と井上将行助手らが2001年に、シガトキシンやその関連物質の分子の構築に成功している。
シガトキシンは非常に大きな分子で、熱帯の海洋に生息するある種のプランクトンによって作り出され、それを食べた魚の体内に蓄積される。写真のフエダイ科の魚レッドスナッパーもその一種だ。
[シガトキシンの毒性は、フグ毒(テトロドトキシン)より百倍近くも強いが、1匹の魚に含まれる量が極微量なので中毒しても死亡することは少ない。しかし、神経(ナトリウムチャネル)に作用するので、知覚・温覚異常のほか、目まいや脈拍・血圧低下、マヒなどに数カ月以上苦しむことになる。
日本では沖縄地方が主な発生地だったが、温暖化に伴い、近年では発生域が北上し本州でも事例が報告されている。千葉県勝浦市近辺において、水揚げされたイシガキダイの料理によるシガテラ中毒について、製造物責任法に基づき料亭に損害賠償責任を認めた事例がある]
その大きく複雑な構造から、シガトキシンの合成にチャレンジする有機化学者は多いが、治療法を研究するためには、再生可能な形で供給できなければならない。[天然のシガトキシンは採取と単離が困難で、0.3mg単離するために、最も毒を多く含むドクウツボを870匹、5年がかりで採集する必要があったとされている]
幸い、東北大学の平間正博氏教授と井上将行助手らが2001年に、シガトキシンやその関連物質の分子の構築に成功している。