超空洞からの贈り物

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可視光でも高効率の光触媒開発

2009年01月30日 20時18分12秒 | Weblog
現在の光触媒製品は紫外光型光触媒を用いた製品が中心であり、紫外線の少ない室内等での利用は限られています。高性能な可視光型光触媒は、従来の光触媒では充分に効果が得られなかった室内において、空気浄化・防汚・抗菌・抗ウイルス等の機能を発揮し、安心・安全な環境作りに貢献します。本プロジェクトでは、日本発かつグローバルに先行している光触媒を素材として、利用者が効果を実感できるレベルの可視光型光触媒の開発を目標としています。将来的には内装用途をはじめとした光触媒の新市場を開拓することで、約2兆8000億円と見込んでいる光触媒市場の創出を狙いとしています。

酸化タングステン微粒子に銅イオンを担持した可視光型光触媒を開発しました。この触媒は、従来の可視光型光触媒である窒素ドープ型酸化チタンと比較して、10倍以上の活性を有しています。光触媒の可視光活性向上のメカニズムとして、担持した金属への電子の移動(界面電荷移動)とその金属における電子の貯蔵(多電子還元)が有効であることを明らかにしております。

ただし、酸化タングステン微粒子を原料とした本可視光型光触媒は、耐アルカリ性(洗剤等への耐久性)やコストに課題があり、今後さらなる検討が必要です。最終的には、より安価で安定な物質である酸化チタンを原料として、同レベルの可視光型光触媒の開発を目標としています。

昭和電工グループ 昭和タイタニウム株式会社(富山県)にて、パイロット設備を設置し、今回開発した酸化タングステン光触媒の量産化を可能にする体制を整えました。既に数kgオーダーのサンプルを作成し、プロジェクト参画企業による製品形態での性能評価を始めるところです。今後、窒素ドープ型酸化チタンと同等程度の価格での販売を目指しています。


パナソニック電工株式会社(大阪府)が、東京大学駒場リサーチキャンパス内に実証住宅を建設し、光触媒製品の効果の検証を行っています。 4月を目処に、プロジェクト参画各社が、今回開発した可視光型光触媒を用いた部材サンプルを本実証住宅に設置し、光触媒効果を実感できる光触媒活性の目標値を明確にします。同時に、酸化タングステンを原料とした場合の課題の抽出と、それら課題を回避できる用途展開について検討します。

産学官が連携して材料開発から製品開発まで一体となって推進すると共に、マーケティング担当メンバーまで参画して、将来の市場をにらんだ事業化を目指しています。また、プロジェクト内で光触媒機能の評価方法の標準化活動(JIS化・ISO化)も行い、光触媒製品の信頼性向上にも努めて参ります。


「用語解説」

窒素ドープ型酸化チタン:酸化チタンの結晶格子の中に少量の窒素イオンが添加されている物質のこと。窒素イオンが不純物準位を形成することで可視光を吸収することができ、近年では有望な可視光型光触媒として期待されていた。

界面電荷移動:触媒表面上において、酸化チタンや酸化タングステンから担持した金属へ電子が移動すること。

多電子還元:白金や銅イオンが光誘起電子のアクセプター(電子を受け取ることが出来る物質)となり、多電子を貯蔵し、効率的に還元反応を行うこと。

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