超空洞からの贈り物

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海の生物にヒントを得た新しい骨接着剤

2009年09月06日 10時35分23秒 | サイエンス
 海に生息する環形動物が巣を作るのに用いる天然の接着剤をヒントに、交通事故などで粉砕した骨を修復する新しい方法が開発され、先ごろワシントンD.C.で開催された米国化学学会(ACS)会議で報告された。サンドキャッスル・ワームsandcastle wormは体長1インチ(約2.5cm)ほどの生物で、細かい砂や貝殻を固める糊を分泌して岩礁に巣を作る。研究グループは、この糊を複製して医療用接着剤を作ることに成功したという。

 粉砕した骨を修復する従来の方法は、釘、ピン、ねじなどの接合具を用いて骨を支えるやり方である。しかし、小さな骨の破片をねじやワイヤーでつなげることは極めて困難であり、医療用接着剤のほうが優れた選択肢となる可能性がある。米ユタ大学(ソルトレークシティー)のRussell Stewart氏は、サンドキャッスル・ワームが用いる方法が完璧と考え、水に濡れた環境でも溶けることがなく、濡れた物でも接着できる水性接着剤の開発に取り組んだ。サンドキャッスル・ワームが接着剤を生成するメカニズムをもとに、水と混じらないが水溶性の液体接着剤を開発したという。

 この新しい合成接着剤はすでに細胞培養による毒性試験をパスしており、少なくとも瞬間接着剤と同程度の接着力があり、お手本としたサンドキャッスル・ワームの接着剤の2倍の強さがあるという。同氏らが開始している予備研究では、この接着剤によって骨折部位に抗生物質などの薬剤を送達できる可能性もあるとされている。

 「このような接着剤を作る上では、生体適合性が大きな課題の1つとなる。合成物を身体に入れると、それに対する身体の反応が周囲の組織を傷つける可能性がある。今後もこの点を監視していくつもりだが、現在のところそのような問題の徴候は認められていない」と同氏は述べている。

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