経済界の新年会で「インフレ率を上回る賃上げ」を要請した岸田総理。
それぐらいの賃上げなど、500兆円もの内部留保を貯め込んでいる大企業にとっては、ちょろいものだろう。
だが、日本の企業421万社のうち大企業は1万2000社だけ。わずか0.3%にすぎない。日本の労働者の7割は中小零細企業で働いている。全企業の9割を小さな会社が占め、 しかも、この国で働く人の4割が非正規労働者となっている。
大企業の500兆円を超える内部留保は、その下請けや孫請け会社にギリギリの安値を押し付けて、ずっと搾り取って貯め込んだカネだ。そんな「安く安く」を追い求めて、賃金カットばかりしてきた負のスパイラルが、デフレの泥沼にこの国の経済を埋没させてしまった。
政治が、大企業だけを優遇する政策をとり中小企業を泣かせてきた。そして、派遣労働の枠を次々と広げて賃金の安い非正規労働者を大量に増やしてきた。そんな失策の結果が賃金の上がらない国にしてしまったのだ。
この30年、賃金が上がるどころか下がり続けてきたのは、日本経済の一殺多生ならぬ多殺一生の経済構造に原因がある。
その構造的な欠陥を変えることを政治がやらないで、宴席で「賃上げ」のパフォーマンスを演じても、まじめに汗する国民の賃金など上がらない。
徹底して下請け会社から搾り取る。低賃金の働き手を増やし全体の賃金を安く抑えこむ。そんな犠牲のうえに成り立っている日本経済の構造こそ、賃金が上がらないカラクリだ。そこを改革しない限り、賃上げの好循環や、ましてや「所得倍増」などできるはずがない。
OECD に加盟する各国の平均給与の1位はアメリカ。2位はアイスランド、3位はルクセンブルク、4、5位にスイス、オランダが続く。お隣の韓国は19位、日本はというと22位だ。平均からもドンと下にいる。
GDPで1位アメリカと2位の中国に大きく離されながらも、辛うじて3位にいる日本。それなのに「豊かさ」の実感がまったくないのは、本当の豊かさである「賃金」が下がり続けているからだ。
間違いだらけのこの国の経済構造を、超ド本気で変えないと、世界一の借金大国日本は、経済3流国に堕ちてしまう。
岸田さん、飲みの席で「賃上げしてください」もいいけど、所得倍増に政治生命をかけるくらいの気迫で、マジホンキでやりんさい。