……… 上の丸へ抜ける出口から公園を出た所に、地蔵が座る小さな祠がある(北向き地蔵と呼ばれていた)。
そのあたりでこんな言葉をくれた。
もう、何度となく思い出し、今でも別れの言葉の中で一番大切にしている言葉。
『ここでお別れしたほうが.... そうすれば同じ頃家に着けるでしょ? 一人でお帰りになるなんて、寂しいわ』
その地点から階段を降り、明石駅からバスに乗って僕が家に着く時間と
香里さんが上ノ丸・太寺を抜けて、歩いて家に着く時間が同じ....と言う程の意味でそう言った。
結局、暗い道が多いので太寺天王町まで送ってゆく事にしたのたが、今でも心に残る別れの言葉だった。
沈丁花の会話があったのは、その直後、上ノ丸から太寺への途中だった。
「ジンチョウゲが匂っている。どこからだろう?」
『ほら、あの家の生け垣。でも、私はチンチョウゲって言う方が好き』
彼女は好き嫌いをはっきり言葉にする。
その時も、僕はその花の名の謂を話しはじめようとして思いとどまった。
中国原産の沈香と、丁字の二つの匂いが....、等と言えば、言下にこんな返答が返って来そうだったから。
『それはそうかも知れませんけど、私はチンチョウゲって言う方が好き』
だから僕はこの日の会話、たったその一つきりの記憶だけを沈丁花の香をかぐ度に思い出す。………
(昭和41年3月 遠い一つの早春の記憶から 抜書き)
▲ ジンチョウゲは常緑樹、花が咲く頃には次の葉が出る準備が始まる。▼
▲ 沈丁花に花弁は無く、目立つのは萼片、同色の萼筒…などと説明したら、きっと香里さんは怒りだしたかも知れない。
何十年も昔のことだから、早春の夕暮れ散歩の折の幾つかを想起しながら一人苦笑してしまった。▼
ジンチョウゲ(沈丁花) ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属 Daphne odora
(2021.03.07 林崎町・林)
☆
幾つかのジンチョウゲの仲間
フジモドキ(チョウジザクラ) Daphne genkwa 別名に「瑞香」「輪丁花」
ダフネ・クネオルム Daphne cneorum 別名に「ガーランド・フラワー(garland flower)」「ローズ・ダフネ(rose daphne)」
セイヨウオニシバリ Daphne mezereum 別名「ヨウシュジンチョウゲ」「フェブラリー・ダフネ(February daphne)」
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ジンチョウゲ 白の萼筒 ジンチョウゲ 赤紫の萼筒 2006.3の独り言
まぁ~思い出のチンチョウゲですね。
萼筒・萼片ですね~
こいもも何も考えずにお花として載せましたからハッとしました。
これで忘れないと良いのですが・・・
赤色と白色の沈丁花…とても素敵です。
毎年一つずつ確実に歳を重ねているのに、咲いている花も匂っている香りも同じ。
そう思うと浮かんでくるものだけが、その一瞬で止まってしまっているのも頷ける気がします。
何日か前にも、あぁこのあたりで匂っていたなぁ~なんて、
殆ど様変わりしている古い生け垣の側でふっと思い浮かべていました。
このチンチョウゲのお話、思い出しました。
良いなぁ~と思って読ませていただきました。
この時に、すでに萼筒・萼片を教えていただいていました。
何とも恥ずかしいです。今度こそは憶えたいと思います。
ありがとうございました。
高校時代の後輩で私の卒業後に写真部に入ったそうです。
もう60年近く前の話ですけれど、毎週高校近くの喫茶店で男同士が集まって喋っている時には
才媛の話題が時折出てきます。
「沈丁花の話」は確かに懐かしいです。