船体の耐食性、防水性を高めるために、
サメの肝臓を煮詰めた油(方言でサバニス)
を全体に塗っていることから「サバニ」の
語源だとも言われているが、その他さまざま
な言われがある。古い漁港に行けば、どこに
でも普通に見られたサバニもここ数年で
ほとんど姿を消しつつある。数年後には博物館で
しか実物を見られなくなるかも知れない。
宮古島へ来た当初は、もちろん船など持っていな
かったので、友人の父親(オジィ)が所有するサバニを
無断で使用して、遠くは八重干瀬まで乗っていった
ものだ。サバニにはエンジンを始動するイグニッション
キーなどなく、燃料さえあればエンジンをかける
ことが出来る。歩くよりも遅いスピードで八重干瀬まで
往復しても一升瓶の2本しか燃料をくわない。
燃費が良い分、遅いのは仕方がないけれど、サメの油を
塗りたくってあるので、服もズボンも真っ黒けに
なってしまう。なので、港を離れるとすぐに服をぬいで
真っ裸で船を走らせた。
船を操る者にとって何より恐ろしいのは時化にあい
船を失うことだ。サバニはちょっとした横波を受けても
転覆しそうなほど傾くが、万が一転覆しても木で作られ
ているので沈むことはない。不安定な船でいつも
転覆の危険をはらんでいるが「沈まない」と言う妙な
安心感があり、たとえエンジントラブルを起こしても
小さな櫂(オール)で漕げば前に進む。
昔、沖縄の海人はサバニに乗って遠くインド洋まで
航海したそうだ。今でも久松漁港では数隻のサバニが
現役で活躍しているが、乗る人の年齢は七十歳を超え
ている。漁に出ることもなくなったサバニが海を
眺めるように港で朽ち果てるのを待っているようだ。
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