桜散る稲田園の池
昨年10月の衆院選では、国民は安倍首相に政権を負託したとは言えません。
選挙比例区では自民党と公明党の得票率は、全有権者の僅か45%でした。直前の世論調査でも安倍内閣に政権を期待しないが51%ありましたが、選挙結果として、国会では議員過半数の支持を得て安倍首相が誕生しました。
野党は、民進党は立憲民主党、希望の党、無所属に分裂し議席を増やせず、小選挙区では公明党、共産党、維新の会が減少して、野党は政権を取ることができませんでした。
衆院選後、おごりと緩みが見え見えの安倍首相率いる「1強安定政権」が再選されました。
衆院選挙は森友・加計学園問題への追及をかわす安倍首相の大義なき独断専行の解散でした。
安倍首相は、選挙では憲法改正を前面出さず、北朝鮮情勢やアベノミクスの成果を訴えた権力ゲームを展開したのに対し、立憲民主党の枝野代表が安保法案の撤回や個人の尊重と、草の根の民主主義を訴え対抗し、票を伸ばしましたが対抗軸不明な点で及びませんでした。
首相の独善的で不当な姿勢は解散に現われていました。
憲法53条に基ずく野党からの臨時国会召集要求を、安倍首相は3か月間も放置した挙句、あらゆる国会審議を拒否して冒頭解散に踏み切ったことです。
政権党が憲法や法律を破る行為を、国民に要求することがあってはなりません。
国会与党の多数は憲法と国会をないがしろにする政争の果てに得た不当なものです。
選挙前の世論調査でも、民意は自民党が公約した9条への自衛隊明記に賛成は37%、反対は40%でした。
憲法は選挙での争点に出さないで、選挙後には着々と国会に憲法調査会を設置して、憲法改正国民投票を準備しています。
昨年の今ごろには森友・加計学園問題において、首相が明らかに加計学園に関わりを持っていたとして、予算委員会が大騒ぎになりました。
この1年間、首相や財務省関係者は国有地払い下げの事実関係を積極的に明らかにしないで、その事実関係を否定したり,証拠文書を改竄し、決済文書を隠したりしていることがあるのに、事務担当者が文書改竄の事情を説明しないことが政治問題になっています。
ここに来て、財務省の公文書偽造と言う不法行為が明らかになって来ました。
森友・加計学園問題では、財務省は3月12日に本省理財局において森友学園に関する14の決済文書の「文書改竄」認めました。
森友学園への国有地売却問題で、地価のゴミの量を見積もっていた2016年当時、近畿財務局が大阪航空局に積算量を増やすように依頼したとを、取引に関わった当事者が説明していることが明らかになりました。
国有地の売却について、大阪航空局が16年4月に地下のゴミの量を1万9520トンと推計し、撤去費用が約8億2千万円になるとの見積もりを近畿財務局に提出しました。
この見積もりを考慮することを条件に不動産鑑定を得て、財務局が値引き額を決定したことが分かりました。
売却価額8億円に上る値引きの根拠が明らかになりました。
9日の参院決算委員会で、財務省太田充理財局長は値引きの理由とした地中のゴミの撤去を巡り、学園側に虚偽の説明をするように求めていたことを認めました。
ゴミの撤去費用に関し「相当かかったような気がする」「トラック何千台も走った気がするといった言い方をしたらどうか」と理財局職員が森友側弁護士に電話で話したと言います。
国有財産の管理に責任を持つ財務省が、取引相手にウソをつかせ、口裏合わせを持ちかけた前代未聞な話です。
口裏話は、値引きした8億2千万円の算定自体に根拠がなく、財務省がそうした事実を隠そうとしたことを示しています。
売却価額については、財務局の職員が学園に「ゼロに近い線まで努力する。だけど、1億3千を下ることはない。」との発言した音声データが残っています。
森友学園問題では、財務省はなぜ国有地を格安で売却し、文書を改ざんまでして何を隠そうとしたのか。
財務省のトップである麻生財務相が「書き換えは理財局の1部の者によって、全体の信頼が失われた」と自身の監督責任を棚上げして、現場に責任を転嫁しています。
この疑惑は財政8億2千万円を不問にできません。財務省の値引きについて安倍首相にも行政全般の政治責任があります。
安倍1強政権が隠したいもう一つの加計学園の獣医学部新設問題について。
首相が進んで明らかにすべき事項を、首相が問題をはぐらかして、行政の信頼を揺るがす事実が次々と出て来ます。
真相解明に後ろ向きの政権に、国の行政全般を任せるわけにはいきません。
国会では、官邸や官僚側が明らかにすべき重要な事項の「証人喚問」に応じないで、国会では噓があっても罰せられない「参考人招致」で逃げようとしていることを見れば、安倍政権の国会での答弁が「嘘」であるか、「証拠の抹消」であることが分かります。
愛媛県に保管されていた文書には「愛媛県の職員や加計学園関係者ら」が、2015年4月に官邸で面会した際の柳瀬首相秘書官の発言として「本件は、首相案件」と記載されていたが明らかになりました。
首相は、その発言は「県が作成した文書に記載されたもので国がコメントする立場にない。」と意見を拒否しています。
首相は学部新設までのプロセスは適正で自分が指示したことはないと述べています。
ここでも、安倍1強政権は学園問題の真相解明をすることで政権に対する疑惑を晴らすのでなく、逆に後ろ向きであるから、「嘘」と「誤魔化し」で証人喚問を逃げています。
しかし、県の文書には、15年4月以前に首相と加計孝太郎理事長が会食し、獣医学部の問題を話題にしたとみられる記述があります。
それが事実であれば、学園の計画を首相が知ったのは、学園が特区の事業者に決まった17年1月だとする首相の国会答弁は噓で「適正なプロセス」であるとは言えません。
首相は、学園計画は17年以前に知りえたものであり、県文書の柳瀬首相秘書官の「首相案件」発言を認める状況が膨らんできます。
安倍首相と柳瀬首相秘書官は官邸において、愛媛県の職員や加計学園関係者には会ったことはないと回答して文書を疑問視しています。
この文書は、獣医師法などを担当する部署の課長補佐級の職員が、前任から引き継いだ資料に含まれていました。
愛媛県の職員が作成した文書がどうして農水省に渡ったのか。
当時、愛媛県や今治市にとって獣医学部の新設は悲願だったのです。
獣医師の数は増えすぎていて規制され、学部新設の提案は何度も却下されていました。
この厳しい状況で「首相案件」は「岩盤規制」を突破する力が必要であったのです。
4月2日の官邸の面会で柳瀬秘書官は「獣医学の空白地帯が解消されることは、農水省・厚労省も歓迎する方向」と発言し、内閣府で面会した藤原豊・地方創生推進室次長も「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」と話されています。
愛媛県の中村時広知事は13日、この文章に書いてある官邸の意向を他の省庁にも伝えたかったから「特に熱意を伝えることが大事であった。こんな状況になっているのでよろしくおねがいします、と使ったということ」と語っています。
愛媛県や今治市と官邸の面会があった後から「国家戦略特区」で獣医学部の新設する動きは加速して行きました。
国会が柳瀬秘書官の証人喚問を採用すれば、この真相がはっきりします。
しかし、国会で自民党が証人喚問を決定することはないと思われます。与党には安倍首相への忖度があります。
いくら与党が、忖度しようとも財務相以外からの次々と、「首相案件」文書が出て来ます。
4月13日斎藤農業水産相は、柳瀬首相秘書官と愛媛県の職員らとの面会記録を記した同県の文書が省内で見つかったと発表しました。
面会記録が、農水省に渡った経緯は既に述べた通り「岩盤規制突破」に必要だとして愛媛県の職員が作成して持参したものです。
身内と部下をかばい続け、責任の所在を曖昧にする麻生財務相の対応が、不信を募らせ国会の混乱に拍車をかけています。
安倍首相も部下の柳瀬首相秘書官の面会疑惑を否定できなくなっています。
審議拒否を続ける野党をいつまでも批判し続けるのではなく、柳瀬首相秘書官の「首相案件」も面会を否定する立証は難しく、時間稼ぎだけであれば、首相は、国権の最高責任者として機関国会を早く正常化すべきです。
首相と柳瀬首相秘書官が米国から帰国する20日以降も「証人尋問」が実現するか目が離せません。
つぎには、イラク日報問題です。防衛庁が存在しないとしてきた自衛隊のイラク派遣の際の部隊活動報告(日報)を4月16日初めて国会に開示しました。
2004~2006年の派遣期間中の日報に、現地の治安状況などに「戦闘」や「銃撃戦」の文字が複数あり、宿営地周辺で攻撃があったことが詳細に記述されていました。
開示したのは2006年9月6日までの間435日分、計1万4929ページ。
派遣期間の45%に当たる日数の記録で、治安が悪化したイラク派遣部隊の後期の記録が多くなっています。
詳しい日報の内容は、後回しにします。先ずは開示に至る経緯をから隠蔽体質はを見て行きます。
開示の1年以前に、イラク日報の存在を防衛省・陸上自衛隊が大臣にも報告をしなかった隠蔽疑惑を追及します。
安倍政権下で財務省、文科省、防衛省、自衛隊、内閣府次から次へと文書改竄や、隠蔽が明らかになっています。
政権維持のためには、行政は複雑多岐だから、国民に知らせなくてよいと考えている政治家の身勝手が一般的に行われています。
公文書管理や情報公開、国会答弁を政権の都合で軽視する風潮が強まっています。
イラク日報の存在を問われて稲田元防衛長官は「見つけることは出来ませんでした。」「日報は残っていないことを確認している。」と答えて済ましていました。
質問する国会議員が不勉強なのか、「公文書管理」「情報公開」軽視する政権体質は、国民の生活と財産が関わる安保政策の審理での答弁でないように思われて仕方がありません。
稲田防衛相は2日後に事務方に探索を指示してから、陸上自衛隊研究本部は35日後に日報を「発見」を報告しました。
日報の存在を確認しながら大臣、政務3役、内部部局、統合幕僚幹部には内容を報告しなかったのです。
イラク「現地は非戦闘地域」という政府の説明と矛盾する日報の記述を明るみに出したくないから、
組織的隠ぺいがなされたのです。
独立性が高いとされる特別防衛査察官ですら曖昧な認定しかできなかったようです。
再発防止を誓って就任した小野寺防衛相の下でも隠蔽体質は引き継がれています。
4月4日小野寺防衛相が、イラク日報を今年1月に見つけたと発表しました。
しかし、防衛相は、日報の存在を陸自が把握したのは昨年3月だったと説明しています。
1年以上にわたって伏せられていたのです。文民統制(シビリアンコントロール)が問われる事態です。
南スーダンでの日報は、3月17日から特別防衛監察が始まりましたが、教訓課長はイラク日報については報告する必要があるか認識がなかったと述べています。
4月17日に小野寺防衛相が、過去の自衛隊の海外派遣に関するすべての日報を統合幕僚監部集約するよう通達を出し、情報本部の全部署で存否を確認すると、2部署でフォルダーを見つけました。
この文書発見について、9日の参院決算委において小野寺防衛相は「私ども文民が自衛隊と言う実力組織を管理することが、戦前の軍事の暴走を防ぐ最大の役割でした。
(現状は)シビリアンコントロールに疑念を持たれても仕方がない。」と述べました。
安倍首相は、同じ決算委で「自衛隊の最高指揮官として深くお詫びを申し上げたい。」と陳謝しました。
公文書は政策決定過程を検証し、今後に生かす重要な資料であり、国民共有の資産であります。
この資産を厳重に保管し、後世に残す責務を負担する最高責任者総理大臣の言葉としては軽すぎると思われてなりません。
この1か月前には稲田朋美前防衛相は、統合幕僚監部部内で日報の電子データーが見つかったとき、保存されていた日報データーは(開示の対象にならない)個人データー」との認識を示していました。
この際には、事務次官と統合幕僚総括監が稲田朋美氏に「不開示で問題がない。」と説明していたのです。
政府、防衛省の隠蔽体質は直りません。政府に都合の悪い事実は隠し通して、時間をかけて忘れさせるのです。
政府の隠蔽体質が、遂に4月16日、日の目を見ます。
防衛省は存在しないとしていた自衛隊のイラク派遣部隊の活動報告を開示したのです。
開示された膨大なイラク日報には、現地の治安状況などを示すくだりに「戦闘」や「銃撃戦」の記載が複数あり、多国籍軍の活動状況、陸自の爆弾被害、サマワの宿営地の周辺で攻撃があった詳細な記述がありました。
当時の政府は、憲法解釈で海外での武力行使を禁じており、「他国軍の武力行使との一体化」ととられないよう、活動範囲を「非戦闘地域」と限定してきました。
日報を見る限り危険なロケット弾、武装勢力の射撃、爆弾被害等の戦闘被害が報告されていました。
公開された日報には、多国籍軍の活動状況は「黒塗り」となっていました。
「黒塗り」は、他国軍の活動状況を日本が勝手に公表できないとして、公表前に消したのです。
他国軍との活動の「開示」は、他国との信頼関係によるとしていました。
南スーダンPKO活動の日報問題での防衛省・自衛隊の隠蔽体質が明らかになりました。(23日追記)
16年7月、南スーダンで政府軍と反政府軍勢力の対立が激化し、PKO活動中の自衛隊の隊員が、武器携行命令を受けていたことが分かりました。これは元派遣隊員の証言で今月22日に分かりました。(23日追記)
7月8~10日陸自が活動していた首都ジュバで激しい銃撃戦が起き、宿営地から断続的に射撃音が確認されるなどしていた。隊員はこの時に「実弾を込めて武器を携行するよう上官から指示があった」と証言していました。(23日追記)
この時期の日報を巡っては、16年10月の情報開示請求に対し、同年10月に「破棄した」として不開示を決定。(23日追記)
17年3月に陸自内に日報データが残っていたことが発覚しました。(23日追記)
陸自は、翌日にはイラク日報問題で宿営地を置いたサマワ近郊のルメイサで2005年12月4日、陸自車列が群衆に囲まれた「ルメイサ事件」を記した報告書を公表しました。(24日追記)
「警備隊員と至近距離で対峙」と群衆の中に「遠巻きに見ていた者2~3名が武器を携行」などの記載があり、緊迫した状況が伺われたと公表しました。(24日追記)
20日を期限とした海外派遣時の日報の探索では、イラク日報では新たに34日分が見つかり、近く開示するとしています。(24日追記)
防衛省は4月27日、新たに見つかった34日分の日報を公表しました。
陸自派遣期間の49%に当たる469日分の記録で、イラク復興支援群が作成した05年7月29~31日の三日分と、イラク後送業務隊作成の06年6月30日~9月7日の間の31日分。何れも教育訓練研究本部訓練評価部の外付けハードディスク内から見つかったものです。(28日追記)国会を軽視して来た政権は、イラク日報の報告書全容解明でも乗り切りは大変です。
日本では、安全保障関連法が成立後も「大義なき戦争」の実態を米欧外国のように徹底的に検証することもなく派遣しました。
自衛隊が活動する地域は非戦闘地域と限定して海外活動の幅を広げる安全保障関連法を強行成立させています。
公開された1万4千ページの日報を見る限り、報告まで2ヶ月以上かかったことを見ても、総ての海外派遣活動が開示されているとは思われません。
陸上幕僚監部が日報の存在を把握してから統合幕僚への報告が1ヶ月を要していることや、1万4千ページの日報を大野敬太郎防衛政務官をリーダーに、大臣官房審議官、陸幕監察官と鈴木総括官が日報調査チームを組み1枚1枚確認しています。
憲法は「海外での武力行使」を禁じています。
国民の知る権利に反して、政府が不都合な情報を隠す恐れが指摘される特定秘密保護法の制定がある中で、首相は国会審議での国民への丁寧な説明を求められます。
安倍政権は、イラクでの自衛隊の海外活動が「他国軍の武力行使と一体化」と捉えられることのない日報でなければなりません。
政府は、他国を武力で守る集団的自衛権行使を解禁しました。
武力行使の一体化につながる他国軍への後方支援を拡大し、専守防衛の国是を踏み出す心配があります。
すべての海外活動を鈴木総括官の調査チームが、問題のある日報を総て開示することは出来ません。
日報調査チームが見つかった日報の経緯などを調べているが難航しています。
電子データーを行政文書と認識していなかったことや、様様な証言が正確にかみ合ったものであるか調査しており、組織再編によるファイル移転の影響を調査対象にしているという。
調査の正確性確保には、開示された435日分以外の隊員活動はどうであったか。国会において野党議員も日報調査チームに入れるのか。イラク派遣部隊の期間中の日報調査会を別途立ち上げれば、他にも自衛隊員が危険に晒されていたことが分かります。
それが与党に拒否されれば、戦闘行為の疑惑と安全保障関連法の違憲性の実態は明らかにならないでしょう。
財務省も同じですが、官庁が国有地売却の公文書を改ざんし、組織的隠ぺいを見逃したりが繰り返されるときは自浄機能は発揮できません。
政・官体制のすべてがゆがんできています。
国家の骨幹に関わる問題です。
特に財務省と官僚を政権の道具としか見ない官邸は、国民の信頼を失っています。
「文芸春秋」は今回の改ざんの背景には「艦艇との距離を少しで も縮めたい財務省のなりふり構わぬ事情」「何とか権力中枢と結んで俺たちが仕切ってる感をもう一度取り戻さないと組織のモラルが本当に底抜けしかねない、との本能的な危機感」があったという。
「規制改革」は官僚が政治家の要求を断る口実を奪う事態を招いた。
加藤創太政治学者は、その結果の一つが「国家戦略特区」で「加計学園問題」だと言います。
「政治主導」を掲げた改革で内閣人事局が出来て、内閣が官庁幹部600人の人事を左右できるようになりました。
600人は、次の役職が与えられなければ退官と言う立場になります。
以前は天下りポストが用意されていましたが、少なくなってしまいました。
ここに忖度がはびこるのです。
日本の政治体制をどのように改革したらよいか考えてみましょう。
米国の大統領制は大統領が変わると、官庁幹部は大幅に入れ替わります。
日本と同じ英国や豪州の議院内閣制どうでしょう。議会多数派は首相と一体ですから、内閣による人事を議会がチェックするのでは十分でありません。
代わりに、幹部公務員は公募を原則として、独立の選考委員会が能力を審査しています。
登用された公務員は政治家との接触が制限され、政治的中立が求められます。
こんな国会や政府にしたのは、国民責任です。国会議員に任せていては何もよくなりません。
国民の大衆行動で国会解散を求め、新しい国会で選挙制度、議院内閣制、人事院制度の改革を議論して行きましょう。
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