ぶろぐのおけいこ

ぶろぐ初心者は書き込んでみたり、消してみたり…と書いて19年目に入りました。今でも一番の読者は私です。

観音峯(1)

2019-10-21 15:46:38 | PiTaPaより遠くへ

 山登りにあこがれています。若い頃は考えもしなかったのですが、他の力に頼らず、自分だけで何かをすることに魅力を感じるようになったのは年を食ったという証拠かもしれません。知り合いに、スペインの巡礼をしたり、自転車で旅をしたりする人がいる影響もあるかもしれません。「こころ旅」や「グレート・トラバース」のカブレかもしれません。

 とはいえ、町歩きくらいはできるものの、山登りとなると思い付きでやってみるわけにもいきません。私が山登りにあこがれる前にすでに中高年の登山のブームがあって、その危険性も指摘されていました。そもそも、山登りをするには、私には知恵も技術も道具も、先達も友達もない。

 でも、一か所だけ、自分でも行けそうなところがあるのです。それが、奈良県天川村の観音峯。もとより、計画性とか準備とかを携行しない私が、9月のある日、観音峯に行く気持ちになってしまいました。

  観音峯登山口休憩所に着いたのが、10時半ごろ。平日でもあり、駐車してあるクルマは三重ナンバーの一台だけ。いつもここを通りかかるとほぼ満杯のクルマなのに、得をしたような心細いような気持ち。では、靴の紐を閉めて…。この休憩所には登山届出書と書かれた紙と箱がおかれています。これはどうしたものかとしばらく考えたのですが、私にとっては立派な登山!とその届出書に住所やら、氏名などを書き始めた…ものの、登山予定経路略図を眺めてペンが止まってしまいました。大普賢岳だの行者還岳だのは書かれているのに、どんなに探しても観音峯は書かれていません。観音峯は登山のうちに入っていないのだと気づきました。すぐ横の案内板をよく見ると、「観音峯ハイキングコース」と書かれている。なぁんだ、ハイキングなんだ。ハイキングと登山の違いもよくわかっていないのでした。書きかけの登山届出書をそっとディパックに入れて、出発。

 ところがそのハイキング。山へ入る吊り橋の横に、まさかの、「熊に注意」の張り紙。大峯はツキノワグマの生息地ですと書かれている。いや、私はそんな大層な山に登りません。観音峯にハイキングですから…。ところがもう1枚の張り紙にはこう書かれています。「観音峯に登られる方へ 近頃『観音峯』で、クマの出現が確認されています。登山される方はクマよけの鈴を着用されるなど、十分ご注意ください。」こんなこと言われても鈴なんて持っていません。バイクのキーには友人から十勝岳の土産にもらった鈴がついているけど、今日はクルマで来ました。鈴は持っていません。

  ここまで来て、鈴を持っていないという理由で引き返すわけにもいかず、「丸腰」のまま、登り始めたのでした。植林の中をもちろん一人で歩きます。実は第一展望台までは、紅葉の時期にみたらい渓谷の散策のおまけで歩いたことがあります。

   この第一展望台で、83歳だという老人と話しました。今から振り返ると、仙人のような老人でした。これから観音峯まで登るというその老人に、私のような知識も道具もない者でも、その観音峯というところまで行けるのかと尋ねたら、弁当と水筒があれば行けると教えてくれました。私が一人きりでも観音峯まで登れると思った根拠はこの時の会話にあるのです。逆にいえば、これしか根拠がありません。

 

  その第一展望台には20分弱で到着。ここを過ぎると傾斜は比較的緩やかになった感じで、楽に歩けます。しかし、ここまで歩いてきても誰とも会いません。ついでにクマにも遭いませんように。歩きながら、もしクマと遭遇したら、まず背中の荷物で身を守って…とシミュレーションをしてみますが、まぁ無意味でしょう。死んだふりはよくないそうです。ついでに、写真を撮るというのも×。背中を見せずに後ずさりするのが正しいと、さきほどの注意書きには書かれていました。

   また階段状の斜面が出てきたりして、そこを越えると、建物があったことがわかる基礎が残っているところがあります。何が建っていたのでしょう。

   一瞬だけ右手に景色が開けるところがあって、この真下はみたらい渓谷だろうと思いました。苔の緑と杉林の幹の色が対照的で美しいと思いました。

 出発してから約50分で、初めて建物を見ました。これが観音平休憩所。森の中ではあるけれど確かに、平らなところではある。しかし、ここに至るまでの道沿いには、かつて建物があったのかしらんと思われるような、平らなところが何か所かあって、何百年も前には人がふつうに暮らしていたのかと想像されます。

  観音平。ここには質素ではあるけれど鳥居があります。鳥居をくぐると、玉八大権現と書かれた碑があります。その横には、菊の御紋。「久邇宮殿下御下賜金一壹封」という碑もあります。この休憩所で腰を下ろしてお茶を飲みます。休憩はいいけれど、ここから観音峯にはどっちへ行ったらいいのか案内がありません。何しろ、計画性も準備も地図さえ携行しない私です。ええぃと碑の横を登っていくと、お歌石なるものがあって、たぶんこっちでよかろうと思いました。

 

(つづく)

 


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