河分神社の右の道、細い方の道を走るのが洞川への道だということでした。ところが、この道路の入り口に、洞川に行くにはこの道を戻って国道169号線で行けという案内が出ています。確かにクルマで走るには心細い道です。私はスクーターですから大丈夫ですが、クルマでは絶対に近づくことはないだろうと思います。今日は植林の中の細い道を走るのにずいぶん慣れました。
一定の距離ごとに、ここが県道48号下市洞川線だという案内が出て来ます。神社を過ぎたところでオフロードバイク1台とすれ違っただけで、前にも後ろにも誰もいません。路肩の崩れたところもあり、舗装も修理して修理しての跡が見えるくらいです。
だいぶ上ってきたら、左側の視界が開けて、「きっとあそこが赤滝だろう」と思える集落が見えます。また、高圧の送電線が北の方面へ架けられているのが見えます。きっと、このずっと先に青根ケ峰があるに違いない。そろそろ小南トンネルも近いはずと思って走っていると向こうからやってきたのはサファリと思しき大きなオフローダー。後席から子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてきます。この道を河分神社まで走るのでしょうか。私にはクルマでこの道を走る勇気はありません。
小南トンネルまでやってきました。エンジンを切ると、カナカナカナカナ…ヒグラシの鳴き声が聞こえます。もう夏の終わりのような心細さを感じます。山の斜面に張り付いた道路が左にほぼ直角に曲がってトンネルに入る格好です。ですから、トンネルの入り口にはカーブミラーが据えてあります。が、この曇りよう。ミラーの用をなしていませんね。また案内板によると、ここから一番近い電話は、天川村側には3km先に、黒滝村側に戻れば7km先にあるそうです。今日は無駄な動きが多かったので天川村には入らないでおこう、小南トンネルまで来たら黒滝村へ引き返そうと思いながら上ってきたのですが、里に下りるには天川側のほうが近いものと思われ、トンネルをくぐりました。トンネルは一直線ではない様子です。ほんの100mほどのトンネルだと思いますが、照明もなく心細いこと。
天川村側に出たら、道路標識はへこみ、トンネルの高さを知らせる標識はあさってのほうを向いている。きっと過酷な環境に長年さらされているのでしょう。そう思ううちに、トンネルから爆音が進んできます。大阪ナンバーの乗用車が追い越していきました。トンネルから少し下ったところで、1台の乗用車とすれ違いました。そのあとに自転車でこの坂を上ってくる兄ぃ。割と通行のある道路のようです。
洞川キャンプ場はなかなかの賑わい。龍泉寺辺りまで下ってくると、いつもの夏と変わらないかと思えるほどの人出です。やはり、コロナでも田舎は安全だとみんな思っているのでしょう。いつぞや入ったことのある蕎麦屋さんは14時を過ぎているというのに店の前で並びが入り、観音峯登山口休憩所の駐車場はクルマでいっぱい。川合まで下りてくると、行者還林道方面から帰ってくるクルマとの合流地点で渋滞が少し。コロナ禍でも、天川村はいつもと同じ夏の喧騒のなかにありました。
メモを確認すると、黒滝村の道の駅(名称を道の駅吉野路黒滝という)から小南峠までで36分かかっています。峠から洞川、川合を経由して黒滝村の道の駅に戻るのに34分。国道309号線のふたつのトンネルの存在は偉大です。
私はこの1日、ほとんど人としゃべっていません。「天空の展望台」で子供たちを連れた母親らしき人と「こんわちは」とひと言。展望台から下りるとき、金網のゲートを閉めてくれた兄ぃに「ありがとうございます」と言っただけです。コロナの被害者にも加害者にもならないように、無口で走った160kmでした。
(おしまい)
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