スポーツ選手の言葉に、「ファンに感動を与えるようなプレイをしたい。」という言い回しがある。これは、歌手やタレントにも共通することばである。悪意のかけらもないはずの口から出る言葉であってみれば、少々残念である。
一方で、料理番組などで、「○○にお砂糖を加えてあげる」というような言い方もあり、こちらも違和感がある。
前者の場合、選手がファンを下に見ている、つまり「上から目線」(この言葉も問題ありだが)でいるわけではなさそうである。それなら、「ファンに感動してもらえるようなプレイをしたい」と言えばよいのである。
後者については、ペットや無生物、料理の素材などに「……してあげる」などと丁寧な言葉を用いる必要はない。丁寧すぎて悪いわけではないが、それは、言葉の意味が十二分に分かっていて、その上で使用している場合や、ペットや無生物に、人間、しかも自分にとって愛すべき、かけがえのない存在の人間と同等の愛情や敬意を持っている場合に、「他人の介入することではないから放っておいて!」と言いうるのであって、そうでない場合は、やはり違和感がある。「……砂糖を入れます」で事足りるのである。
時々、テレビ番組の司会者が、ゲストについて、「それでは、○○さんをお呼びしましょう。」ということがある(「ある」というより、同じような状況下では、常態ともいえるが)。「呼ぶ」という言葉には敬意を含まない。「お」を付けたところで、ゲストに対する敬意は感じられない。表現者の意図に反して失礼なことになっている。どうして「では、○○さんをお招きしましょう。」とでも言えないのだろうかと不審でならない。
アナウンサーの読み上げるニュースを聞いていても、首を傾げたり、吹き出したりする表現が少なくない。アナウンサーが悪いのか、原稿の書き手が悪いのか、原因は分からないが、聞き流せないで、記憶に残ることがある。「人間だもの……」といって聞き流して「あげればよい」というべきか。