「著名人も勧める」というのが謳い文句の毛髪育成剤の宣伝がある。著名人として元お笑い芸人が取り上げられている。そう言えば、いろいろな商品の販売に際して、タレントが起用されているのが当たり前のようになっている。
しかし、タレントや芸人、モデル、歌手(その違いはよく分からないが)等が、売ろうとしている商品を知悉していることは稀だろう。かつて、瀬戸内の島にある有名な寺の門前町の食堂で食事をしたが、その店には、たまたま訪れたらしい若いタレントが店の料理を食べ、ついでに書いてもらった色紙があった。店では、「○○さんも推奨の△△(料理名)」と商売に利用していたが。年端もいかぬタレントに味など分かるわけもないだろうし、また他の客の口に合うかどうかは保証の限りではあるまいと可笑しかったことを思い出した。
テレビコマーシャルでは、薬、サプリメント、栄養食品などを売り込もうと、映像を使いながら、「効能」を声高に叫んでいるが、画面の片隅に、見えるかどうか極限まで小さい文字で、「これは(画面に出ているモデルの)個人の感想であり、効能を示すものではありません。」とあるのが普通である。誇大広告という批判を避けるための姑息な手段である。CMの大部分を占めるイメージと効能ではない旨の説明とは明らかに矛盾する。意味不明の構造である。商品の効能と関係のない個人の感想(主観的な言いぐさ)をなぜ同居させているのか、商品の効能と出演している人物の映像や言葉は、何ら関係ないのであるが、このような、いわば詐欺的手法は一般的になっており、もはや視聴者は、疑問にも思わなくなっている。時に商品が有害であったり、欠陥品であったりするから、本当は怖い情報なのである。全部が言葉による情報なら熟慮する余地もあろうが、イメージというのはそれを許さない。言葉を介在させ、言葉に変換して、情報の意味や問題を捉え直さなくてはならないようだ。