古森病院@福岡市博多区 病院管理者のブログ

ベイサイドプレイス近隣にある長期滞在型病院です。投稿記事は管理者の独自見解であり、医療法人の見解ではありません。

サルモネラ属ヘルシーキャリアー

2014-06-05 17:34:55 | 日記
こんばんは。
古森病院@福岡市博多区対馬小路です。

今日は、主として調理関係の方々に関係する話です。

内科外来をしておりますと、
調理関係の職種の方々が
「症状はないが、サルモネラが検便で検出されたので、除菌してほしい」
「症状はないが、O-●○(O-157などの仲間である0ナンバーと言われる腸管出血性大腸菌)が検便で検出されたので
除菌してほしい」
という主訴で受診されることがあります。

B型肝炎ウイルスの母子感染が有名ですが、病原体として有名な細菌やウイルスが人間と仲良く?
暮らしているケースがあります。
共存です。

本来なら人体は自己でないものは攻撃するという防御機能を持っていて
(例外あり。何でしょう?・・・・胎児への攻撃は基本的にありません。免疫寛容といいます。)
攻撃を開始すると、何らかの症状(疼痛とか発熱など)が出現します。これを炎症と言います。
サルモネラやOナンバーの大腸菌の感染症なら、感染後に腹痛、下痢、血便、発熱などが腸炎(腸の炎症)という形で
出てきます。

しかしながらサルモネラやOナンバーの大腸菌と仲良く暮らしている方が世間には一定の割合で存在します。
炎症が起これば、通常はばい菌は排除される方向に向かうのですが、炎症が起きないので定住しているのです。
こういう方々を一般に healthy carrier(健康保菌者、無症候性キャリアー)と言います。
ちなみにピロリ菌は胃に住みつき、炎症(胃炎)をおこすので、自覚症状には乏しいのですが
ピロリ菌感染している人は、healthyでないcarrierです。

症状がない人に便のばい菌検査をすることはありませんので、無症状のキャリアーの方々は
通常 発見されないのですが、これが発見されるのが、事務的に毎月、
便の細菌培養を義務付けられている調理関係の方々たちです。

大量調理施設衛生管理マニュアル
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/gyousei/dl/120518_01.pdf

食品取扱従事者の検便検査を行っている会社の健康保菌者のデータ
http://www.kenko-kenbi.or.jp/science-center/pathogen/topics-pathogen/4506.html


調理関係の方々の検便は健康保菌者を発見し、除菌するためにあります。
保菌者の方が手をあまり洗わずに調理した場合、食中毒の集団発生がおこる可能性があるためです。

横浜衛生研究所の記事から (サルモネラ属である腸チフスの健康保菌者の調理人から食中毒が発生したケース 有名なようでよく引用されています。)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/typhoid1.html

個人的には腸管における健康保菌者の方の除菌はあまり気が進みませんが(耐性菌になりそうだから)、
公衆衛生のために(あとご本人の就労継続のために)仕方がないのかな と思っています。

ホームページ http://komori-hp.cloud-line.com/






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