博多区対馬小路の古森病院です。
今日は出生前診断についての話題です。
以下 引用
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<出生前診断>誤報告した函館の医院に1000万円賠償命令
毎日新聞 6月5日(木)21時42分配信
北海道函館市の産婦人科医院「えんどう桔梗(ききょう)マタニティクリニック」で2011年、胎児の出生前診断結果を誤って伝えられた両親が、人工妊娠中絶の選択権を奪われたなどとして、医院側に1000万円の損害賠償を求めた訴訟で、函館地裁は5日、1000万円の支払いを命じた。
鈴木尚久裁判長は判決理由で「結果を正確に告知していれば、中絶を選択するか、中絶しないことを選択した場合には心の準備や養育環境の準備もできたはず。誤報告により機会を奪われた」と指摘した。
判決によると、母親は胎児の染色体異常を調べる羊水検査を受け、ダウン症であることを示す結果が出た。しかし医院の院長は11年5月、母親に「陰性」と誤って伝え、生まれた男児はダウン症と診断され3カ月半後に合併症で死亡した。
両親側は誤報告により生まれたことで、男児は結果的に死亡したと主張していたが、鈴木裁判長は「ダウン症児として生まれた者のうち、合併症を併発して早期に死亡する者はごく一部」として因果関係は認めなかった。
判決を受け両親は「ミスの重大性や、生まれた子供の命を否定しなければいけなかった親の心情を深くくみ取ってくれた。この裁判がきっかけとなり、患者や家族に寄り添う医療につながっていくことを願っている」とのコメントを出した。【鈴木勝一、久野華代】
遺伝情報の扱いに詳しい桜井晃洋・札幌医科大教授(遺伝医学)の話
出生前診断を含めた遺伝子検査では、患者がなぜ検査を受けるのか、結果をどう受け止めるのかまで考慮した、専門家の目を通して情報が伝えられるべきだ。今回の例は羊水検査の結果を単純に見誤って伝えたものだが、技術の進歩に伴って、検査結果があいまいな形で出るものも増えている。慎重さが求められるという意味で、判決は医療従事者への警鐘になる。
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2人が確定検査受けず中絶=新型出生前診断で、異常ない可能性
時事通信 6月11日(水)22時3分配信
妊婦の血液から胎児のダウン症などの染色体異常を調べる新型出生前診断で、異常の疑いがある陽性と判定された141人のうち、少なくとも2人が確定検査を受けずに人工妊娠中絶していたことが11日、分かった。実際には問題がなかった可能性があり、報告を受けた日本医学会はカウンセリングの強化など対策を検討する。
検査でダウン症が陽性だった場合の精度は、35歳の妊婦で80%。検査対象の他の2種類の染色体異常では精度はさらに低く、いずれも羊水検査などの確定検査が必須だ。
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新しい出生前診断について
国立生育医療研究センター http://www.ncchd.go.jp/hospital/section/perinatal/nipt.html
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designer baby
遺伝子解析で赤ちゃん設計? 外見や能力予測、米で特許図:デザイナーベビーに関する特許
拡大デザイナーベビーに関する特許
【岡崎明子、ワシントン=行方史郎】青い目で足が速く、乳がんになるリスクが低い子どもが欲しい――。親が望む特徴をもつ赤ちゃんを作る「デザイナーベビー」につながる遺伝子解析技術が考案され、米国で特許が認められた。自分と、精子や卵子の提供候補者ごとに遺伝情報を解析して、望み通りの子どもが生まれる確度を予測するシステムだ。科学者からも「倫理的に大きな問題」と批判が出ている。
特許化されたのは、米国の個人向け遺伝子解析会社の大手「23アンドミー」(本社・米国pカリフォルニア)の手法で、米特許商標庁が9月24日付で認めた。
同社はIT大手グーグルの共同設立者らが出資。2007年から、唾液(だえき)に含まれるDNAの遺伝子配列のわずかな違い(SNP)を分析して、アルツハイマー病や糖尿病など約120の病気のリスクのほか、目の色や筋肉のタイプなど計250項目を判定する事業を展開している。価格は99ドル(約1万円)で、利用者は50カ国以上、日本人を含め40万人を超えている。
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引用終わり
個人的には出生前診断を受けるか否かは、当事者が決めることで、第三者がとやかくいうことではないと思います。
問題は障害児を産むか否かということではなく、そのような障害を抱えた子や人の介護環境が整っていないことが最大の問題であり、現状の日本では、生まれた後ではどうにもならないので、事前に排除していくような風潮になっているのだと思います。
仮に国策として出生前診断を推奨するなら、科学的アプローチの優生政策となり、こういう発想が肥大化していくと、かのナチス・ドイツのT4政策のようになっていくのかもしれません。
風疹流行時の、胎児の耳が聞こえなくなったらどうする?→だから風疹ワクチンを受けよう。という
コマーシャルも行きすぎると、ワクチンで予防可能な障害を避けるという意味だけでなく、別の意図にも
聞こえます。(社会の負担を増やすなといったような)
ちなみに英国では出生前診断は無料で受けられるとのことです。一頃「ゆりかごから墓場まで」と
称されるほど、福祉制度が比較的整っているとされる、英国での現状ではどうなっているのか、興味深い記事ですので引用します。
www.jdsnews.jp/p/contentsview.php?content_id=0000001809
出生前診断を受けるかどうかを個々人で判断し、その判断の結果について誰も責めない時代が長く続くこと、
先天的、後天的に障害を負ってもある程度フォローされる体制が整うことを願っています。
以上、古森病院でした。
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