謡曲「高砂」の友成ゆかり(?)の神木
「私の母方の曾祖母までは、代々、御座船が迎えにきて住吉大社に仕えており、曾祖母は津守家の姫のお相手役だったらしいのよ。その津守家が天火明命の子孫とは知らなかったわね」
ヒメが思いもかけないことを言い始めた。
「この天火明命が、古事記に書かれたニニギの兄なのか、それとも播磨国風土記に書かれた大国主の子どもなのか、これは、播磨、摂津、葛城、丹後、丹波、尾張の古代史に関わる重要な争点だね」
カントクの言うとおりである。
「その議論は、明日、火明命を祀る粒坐天照神社に行った時にしません?」
ヒナちゃんが珍しく割って入ってきた。
「それがいいね。それより、イヤナギの体に付いた黄泉の国の汚れた垢を洗い流した時に生まれた底筒男命・中筒男命・上筒男命の方が問題だよ。この住吉3神を祀る住吉神社は全国に約600社とも2000
社あるとも言われているけど、わが筑紫の一宮の住吉神社が、最初の住吉神社と言われているからね」
博多っ子のカントクとしては当然だ。
「大阪の住吉大社の方が格が上じゃないの?」
「天皇家との繋がりで大阪の住吉大社の方が格が上になっているけど、古書では博多の住吉神社が『住吉本社』『日本第一住吉宮』と書かれている」
ヒメとカントクでどんどん「高砂」から離れていっている。
「神戸にある本住吉神社が、住吉大社より先にできたと思われますが、本住吉神社も住吉大社も神功皇后が帰還した時に創建されたとしているので、博多の住吉神社から移された可能性が高いと思います」
ヒナちゃんも神社には詳しい。
「底筒男命・中筒男命・上筒男命の『筒』ってどういう意味なの?」
ヒメの頭の中では、いろんなストーリーが生まれてきているようだ。
「住吉神社では、ツツは星を意味していると言って、航海・海上の守護神としているね」
「星男って名前はいいなあ」
「しかし、筒男(つつのお)は、対馬の上島の南端、『豆酘(つつ)』の男という説もある」
「『津島』の中の『津=港』か。なるほど」
「問題は、この豆酘(つつ)には住吉神社がなく、上島の北端の美津島町雞知の上ヒナタにある住吉神社が式内社の住吉神社に比定されているんだ」
「いずれにしても、海(あま)族の神、ということになるね」
「対馬の住吉神社の境内には、和多都美神社があるから、海神(わたつみ)族と関わりの深い神であることは間違いないね」
「本住吉神社、住吉大社のある場所は、どちらも摂津国で、古くは『津国(つのくに)』でしたから、津に関わりがあります」
ヒナちゃんが補足した。
「住吉大社のことがわかってきたけど、最初に戻って、なぜ謡曲の『高砂』が結婚式で歌われるようになったのかしら? 」
ヒメは最初の疑問点を忘れてはいなかった。
「阿蘇宮の神主・友成が、高砂から住吉に船で向かう場面を謡った歌が、結婚式で謡われる、というのは確かに、奇妙だね」
カントクの言うとおりである。
「私は、この歌には、高砂から住吉へ船で向かう4つの場面が重なって謡われていると思います。1つは、歌詞のとおりの友成の行動です。2つ目は、高砂の男が住吉の女の下へ、妻問いにでかける場面です。3つ目は、阿蘇宮の神主が友成と同じように船で住吉に向かい、住吉で結婚を祝うという場面です。4つ目は、高砂の松の霊が、住吉の松の霊を訪ねる場面です。
高砂が結婚式で謡われるようになったのは、こ高砂の男と住吉の女が結ばれ、それを阿蘇宮の神主が祝う、という伝承があったからに違いありません」
ヒナちゃんの推理は、さすがという以外になかった。
「ありがとう、ヒナちゃん。謡曲『高砂』の謎は半分を解いたね。残る、高砂の男と住吉の女は誰か、という答えを、当然、考えているわよね?」
ヒメの推理小説の謎解きもできあがってきたようだ。
「これは、単なる推測ですが、高砂神社に大国主の霊(ひ)が祀られていること、二人が別々に暮らしながら心が通じ合っていた、という物語からみて、高砂の男は大国主、住吉の女は「ツツ一族」の王女だと思います。大国主が播磨から摂津に支配を広げていく中で、二人は結ばれ、それを阿蘇宮の神主が祝った、というような伝承があったのではないでしょうか?」
ヒナちゃんはいつも最後まで考え抜いている。いつも情報整理に留まっている高木には、とても及ばないところであった。
※ 本ブログ中の文章や図、筆者撮影の写真は、ご自由にお使い下さい(ただし、出典を記載して下さい)。リンクもご自由に。
資料:日向勤著『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』(梓書院)
参考ブログ:邪馬台国探偵団(http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/)
霊の国:スサノオ・大国主命の研究
(http://blogs.yahoo.co.jp/hinafkinn/)
霊(ひ)の国の古事記論(http://hinakoku.blog100.fc2.com/)
帆人の古代史メモ(http://blog.livedoor.jp/hohito/),,,
「私の母方の曾祖母までは、代々、御座船が迎えにきて住吉大社に仕えており、曾祖母は津守家の姫のお相手役だったらしいのよ。その津守家が天火明命の子孫とは知らなかったわね」
ヒメが思いもかけないことを言い始めた。
「この天火明命が、古事記に書かれたニニギの兄なのか、それとも播磨国風土記に書かれた大国主の子どもなのか、これは、播磨、摂津、葛城、丹後、丹波、尾張の古代史に関わる重要な争点だね」
カントクの言うとおりである。
「その議論は、明日、火明命を祀る粒坐天照神社に行った時にしません?」
ヒナちゃんが珍しく割って入ってきた。
「それがいいね。それより、イヤナギの体に付いた黄泉の国の汚れた垢を洗い流した時に生まれた底筒男命・中筒男命・上筒男命の方が問題だよ。この住吉3神を祀る住吉神社は全国に約600社とも2000
社あるとも言われているけど、わが筑紫の一宮の住吉神社が、最初の住吉神社と言われているからね」
博多っ子のカントクとしては当然だ。
「大阪の住吉大社の方が格が上じゃないの?」
「天皇家との繋がりで大阪の住吉大社の方が格が上になっているけど、古書では博多の住吉神社が『住吉本社』『日本第一住吉宮』と書かれている」
ヒメとカントクでどんどん「高砂」から離れていっている。
「神戸にある本住吉神社が、住吉大社より先にできたと思われますが、本住吉神社も住吉大社も神功皇后が帰還した時に創建されたとしているので、博多の住吉神社から移された可能性が高いと思います」
ヒナちゃんも神社には詳しい。
「底筒男命・中筒男命・上筒男命の『筒』ってどういう意味なの?」
ヒメの頭の中では、いろんなストーリーが生まれてきているようだ。
「住吉神社では、ツツは星を意味していると言って、航海・海上の守護神としているね」
「星男って名前はいいなあ」
「しかし、筒男(つつのお)は、対馬の上島の南端、『豆酘(つつ)』の男という説もある」
「『津島』の中の『津=港』か。なるほど」
「問題は、この豆酘(つつ)には住吉神社がなく、上島の北端の美津島町雞知の上ヒナタにある住吉神社が式内社の住吉神社に比定されているんだ」
「いずれにしても、海(あま)族の神、ということになるね」
「対馬の住吉神社の境内には、和多都美神社があるから、海神(わたつみ)族と関わりの深い神であることは間違いないね」
「本住吉神社、住吉大社のある場所は、どちらも摂津国で、古くは『津国(つのくに)』でしたから、津に関わりがあります」
ヒナちゃんが補足した。
「住吉大社のことがわかってきたけど、最初に戻って、なぜ謡曲の『高砂』が結婚式で歌われるようになったのかしら? 」
ヒメは最初の疑問点を忘れてはいなかった。
「阿蘇宮の神主・友成が、高砂から住吉に船で向かう場面を謡った歌が、結婚式で謡われる、というのは確かに、奇妙だね」
カントクの言うとおりである。
「私は、この歌には、高砂から住吉へ船で向かう4つの場面が重なって謡われていると思います。1つは、歌詞のとおりの友成の行動です。2つ目は、高砂の男が住吉の女の下へ、妻問いにでかける場面です。3つ目は、阿蘇宮の神主が友成と同じように船で住吉に向かい、住吉で結婚を祝うという場面です。4つ目は、高砂の松の霊が、住吉の松の霊を訪ねる場面です。
高砂が結婚式で謡われるようになったのは、こ高砂の男と住吉の女が結ばれ、それを阿蘇宮の神主が祝う、という伝承があったからに違いありません」
ヒナちゃんの推理は、さすがという以外になかった。
「ありがとう、ヒナちゃん。謡曲『高砂』の謎は半分を解いたね。残る、高砂の男と住吉の女は誰か、という答えを、当然、考えているわよね?」
ヒメの推理小説の謎解きもできあがってきたようだ。
「これは、単なる推測ですが、高砂神社に大国主の霊(ひ)が祀られていること、二人が別々に暮らしながら心が通じ合っていた、という物語からみて、高砂の男は大国主、住吉の女は「ツツ一族」の王女だと思います。大国主が播磨から摂津に支配を広げていく中で、二人は結ばれ、それを阿蘇宮の神主が祝った、というような伝承があったのではないでしょうか?」
ヒナちゃんはいつも最後まで考え抜いている。いつも情報整理に留まっている高木には、とても及ばないところであった。
※ 本ブログ中の文章や図、筆者撮影の写真は、ご自由にお使い下さい(ただし、出典を記載して下さい)。リンクもご自由に。
資料:日向勤著『スサノオ・大国主の日国―霊の国の古代史』(梓書院)
参考ブログ:邪馬台国探偵団(http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/)
霊の国:スサノオ・大国主命の研究
(http://blogs.yahoo.co.jp/hinafkinn/)
霊(ひ)の国の古事記論(http://hinakoku.blog100.fc2.com/)
帆人の古代史メモ(http://blog.livedoor.jp/hohito/),,,