http://mainichi.jp/articles/20160122/ddl/k43/040/299000cより転載
慈恵病院が開設へ 県内で初 貧困や孤食問題に対応 高校生以下無料で提供 /熊本
毎日新聞2016年1月22日 地方版
親が育てられない子供を匿名で受け入れる「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)」を運営する慈恵病院(熊本市西区)が、地域の子供に食事を提供する「子ども食堂」を早ければ4月にも開設する方針を決めた。子供の貧困や孤食などの問題に対応するのが狙いで、開設されれば県内では初となる。【井川加菜美】
慈恵病院によると、院内の社員食堂を「エンゼル食堂(仮称)」として原則週1回開放し、夕方から夜にかけて高校生以下を対象に温かい食事を無料で提供する。メニューは病院の栄養士や調理師が栄養バランスなどを考慮して決め、配膳などには地域のボランティアの協力を得る予定。
慈恵病院は2007年のゆりかご運用開始に合わせて相談窓口「SOS赤ちゃんとお母さんの妊娠相談」を設置しており、妊娠や出産に悩む全国の女性たちから相談が相次いでいる。背景には貧困があるケースも多く、新たな支援策として全国で広がりを見せる「子ども食堂」の開設を思いついたという。今後は地域のニーズなどについて調べた上で、行政とも相談して食堂のあり方を決める方針。
厚生労働省が発表した国民生活基礎調査によると、平均的な年収の半分を下回る世帯で暮らす17歳以下の子供割合を示す「子どもの貧困率」は12年に16・3%と過去最悪を更新した。都道府県別の「子どもの貧困率」は出ていないが、県内でも一人親世帯や生活保護世帯に属する子供の数は増加。子供の貧困問題への対応は大きな課題となっている。
慈恵病院は食堂を子供たちが宿題など自由に勉強ができる場にもしたい考えで、蓮田健副院長は「皆で楽しく過ごせる時間を週に一度でも提供できればいい」と話している。