減り続ける熊本震災ボランティア、必要なのはむしろこれから
今回の熊本地震でも、当初は多くのボランティアが被災地に駆けつけた。ところが、せっかく来ても「することがない」ボランティアも多く、その様子はメディアでも大きく報道された。その影響からか、震災から2か月が経った現在、ボランティアの数は減り続けている。
東日本大震災時は宮城県気仙沼市でボランティアセンターの運営を行い、現在は熊本で支援活動を行っている日本国際ボランティアセンター(JVC)の岩田健一郎さんに、震災ボランティアの状況について話を聞いた(以下、岩田さん談)。
「することがない」状況から一転、人手不足に
熊本市や益城町では、県外からのボランティアを受け入れるボランティアセンターが早期に開設されましたが、訪れたボランティアを十分に受け入れられない状況が生じました。一方で、5月の連休以後はボランティアの数が減少し、人手不足に陥っているとの報道がなされています。こうしたボランティアとニーズのミスマッチは、受け入れ側の態勢の整備や、被災者にボランティアの存在が浸透するまでに時間がかかることなどから、一定期間はやむを得ない現象だと考えられます。
今後重要になってくるのは、声を上げにくい被災者の埋もれがちなニーズを掘り起こし、それをボランティアにつなげる「調整役」の存在です。調整役には、戸別訪問等を通じて被災者の声に直接耳を傾けるなど、きめ細やかな動きが求められます。
また、ボランティアを計画している人には、被災者のニーズが徐々に生じてくることを踏まえて、長期的な視野で意思を持ち続け、活動に参加することを願います。震災直後はボランティアの安全が確保できなかったり、ニーズの調査が不十分だったりするため、それほど多くの作業はありませんでした。むしろ、必要なのはこれからなのです。
応急仮設への移住で懸念される「地域コミュニティの崩壊」
今回の震災で約1万8000もの家屋が「危険」と診断され、そこに住む人たちは当面の住居がなくなりました。今後、熊本市内では「みなし仮設(一般のアパートなどを行政が借り上げて、仮設住宅とみなして被災者に提供する制度)」が用意され、益城町や阿蘇市ではプレハブ型の応急仮設住宅が建設されることになると思われます。
その際に懸念されるのは、避難先に移住することによって、元あったコミュニティがバラバラになってしまうことです。東北ではコミュニティがバラバラになった結果、地域の互助関係が崩れ、これまでなかった孤独死が発生するなどの事態が発生しました。
また、地域コミュニティがバラバラになってしまっては、復興を促進する母体そのものがなくなってしまいます。熊本市のような都市部にはその例がどこまで当てはまるかはわかりませんが、他の地域ではその点を強く懸念しています。
支援の網の目からこぼれ落ちる被災者のサポートを
また、被災地の復旧が進むにつれて、支援の格差が生まれることも予想されます。東北では、避難所からみなし仮設に移った住民や被災した家屋に住み続けた住民が、応急仮設住宅に入居した住民に比べて、支援物資も情報も、ボランティアによるサポートも受け取りづらいという状況が生まれました。高齢者や障害者もまた、十分な支援を受けられない状態に置かれる可能性があります。
東北での経験から、そのような事態が起こらないよう、行政に強く訴えていくとともに、支援の網の目からこぼれ落ちる被災者へのサポートの必要性を感じています。
※日本国際ボランティアセンター(JVC)は現地協力団体と協力して、熊本での支援活動を開始している。また、募金も受け付けている。詳しくはJVCホームページを参照
http://www.ngo-jvc.net/jp/notice/2016/05/20160519-kumamoto.html
<取材・文・撮影/白川愚童>