門前の小僧になりたいくらげ

学究的な空気に憧れて専門家の周りに出没しては雑感を綴るブログ。化石鉱物系がやや多し、の予定。

2017.07.02 雅楽講座

2017年09月24日 | 和物(伝統芸能・歴史・考古学など)

 雅楽・・・上代から伝わる日本固有の歌舞と、仏教伝来の頃から順次入ってきた古代アジア大陸諸国の音楽と舞が融合してできた歴史の長い芸術・・・というくらいの知識しか持っていないのですが、縁あって講座に参加させていただきました。

 

国風(くにぶり)の歌舞:神楽・倭舞(やまとまい)・東游(あずまあそび)・久米舞(くめまい)・五節舞(ごせちのまい)など

大陸系の歌舞:唐楽→中国系、勇壮で明るい曲調が多い。左方舞(さほうのまい)ともいう。

       高麗楽→朝鮮系、哀調を帯びた曲調が多い。右方舞(うほうのまい)ともいう。

歌物:催馬楽(さいばら)・朗詠

 

・・・と、ざっくり習ったところでいきなり楽器とご対面です。

 くらげびとは雅楽器と聞いて真っ先に思い浮かべるのが笙(しょう)なのですが、その姿は翼を立てた鳳凰をかたどり、音色は天から差し込む光を表すと言われている、なかなか大層な楽器です。具体的には17本の竹を束ねたような形をしており、息を吹いり吸ったりすると中にある15個の金属製リードが震えて音が出る構造になっています。出せる音が決まっているので和音や調律担当です。なぜ竹の本数とリードの本数が合わないのかというと、大陸から伝わってきた舞楽が日本に根付いていく中で、和音として受け入れられにくい音のリードが外され、楽器の形だけが残ったからだと推測されているようです。曲によってはその曲用の音階の笙を別に用意するのだとか。(それが消えたリードの音階かどうかまでは不勉強なので知りません、すみません。)

 篳篥(ひちりき)は18㎝ほどの竹筒に蘆舌と呼ばれるリードを差し込んだ縦笛で、主旋律担当です。こちらは地上の音を表すと言われています。同じ指づかいでも責(せめ)と和(ふくら)という息づかいの違いでほぼ1オクターブ音階が変わります。ただこの楽器、国内で最も蘆舌に適した蘆の生育地に高速道路が通ることになっていまして、将来がちょっと心配なところです。他の生育地の蘆では蘆舌に適した硬さやサイズがなかなかなくて使えないそうです。消耗品ですから数が要りますしね。。。かといって万人が使うものでもないので反対運動が全国的に盛り上がるわけでもなく。。。影響、出ないといいんですけどね。。。

 話が逸れました。龍笛は天地を行き交う龍の声を表し、主に副旋律担当の竹製横笛です。これも責と和で音階が変わります。

 上記3つが雅楽の代表的な管楽器で、回を追うごとに篳篥・龍笛・笙に触らせていただきました。しかも篳篥と龍笛の貸し出し付き。・・・これは練習してこいという意味ですよね、やはり。

お借りした篳篥:左のリード部分が噂の蘆舌

参考:宮内庁HPトップページ→皇室に伝わる文化→雅楽

   NEXCO西日本「鵜殿ヨシ原の環境保全について」

 


いのちのたび博物館〜北九州市立自然史・歴史博物館〜20170611

2017年09月22日 | 博物館

 福岡県北九州市にある自然史・歴史博物館です。日本で唯一ティラノサウルス”スー”の全身骨格が常設展示されており、他にも大型恐竜や古生物の全身骨格が大量に展示されています。地球の成立から現代の人の営みに至るまでのいのちの旅をたどる俯瞰的な展示の一方で、北九州に密接に関係する資料も充実した博物館です。ちなみに2017年は開館15周年とのことで、様々なイベントが行われています。詳しくはこちらをどうぞ→いのちのたび博物館公式サイト

 自然史ゾーンに入ると恐竜たちがお出迎えです。スーのすぐ後ろにセイスモサウルス(左)とカマラサウルス(右)が。日本でこの2体の全身骨格を常設できる大きさの博物館があるなんて。。。しかも後ろに次々と全身骨格が並んで大行進しているのです。恐竜好きな方にはたまらないのではないでしょうか。

パルナイバイア(ジュラ紀のシーラカンス)

  そして喧伝はされていませんが、この博物館にはくらげびとが知っているだけでも複数のシーラカンスのholotype specimen(完模式標本)※があります。

・Mawsonia brasiliensis(マウソニア・ブラジリエンシス)の完模式標本

・パルナイバイアの完模式標本(すみません、伝聞情報です。)

・Whiteia oishii(ワイテイア・オイシイ)の完模式標本の片方※とparatype(副模式標本)

こんなに揃っているってすごいことだと思うんですけれど。。。みなさま機会がございましたら、シーラカンスにもぜひ!注目してみてください!

             

  解説員さんにオススメしていただいたエンバイラマ館は白亜紀前期の北九州地域を復元した<白亜紀ゾーン>とその復元に用いられた標本や研究成果を展示した<リサーチゾーン>で構成されています。ネタバレするので詳しく書きませんがこれまた恐竜好きさんが喜びそうな展示です。・・・と、すごく偏った分野の展示しか拝見していないのですが、時間切れで他のエリアが見られなかったので、また来たいです。

博物館公式HP→いのちのたび博物館

 

※1 新種記載する際に基礎となるtype specimen(模式標本)は通常複数あるが、そのうち最も基準になる個体の標本をこう呼ぶ。holotype以外のtype標本はparatype(副模式標本)と呼ぶ。

※2 もう片方は城西大学水田記念博物館大石化石ギャラリーにある。

 

参考資料:「いのちの旅博物館ミュージアムガイド」23 March 2013  北九州市立自然史・歴史博物館発行

       「化石101号」March 2017 (p86) 日本古生物学会発行

 

日本古生物学会2017年会 in 福岡その4

2017年09月21日 | 古生物学・地学

 2日間にわたってお邪魔させていただいた学会ののち、会場となった北九州市立自然史・歴史博物館名誉館員のO先生に案内していただきました。館の設立に関わった方のお話を直接伺えるなんて機会、そうあるものではありません(お誘いいただいたT先生に感謝です。)、ありがたくご一緒させていただきます。

 解説を拝聴するのに必死であまり撮影できませんでしたが、これだけは。息子のハートをわしづかみにしたティランノサウルスのスー(全身骨格レプリカの常設展示は国内でここだけ、かも)です。階段の段差を利用した展示になっているので、ごく間近で見上げる形になり、迫力満点です。少し離れたところにスタンも展示されており、このエリアだけでも何日でも入り浸りになりそうです。

 束柱類パレドパラドキシアの前でH先生の解説もあり(息子最前列。うらやましすぎます。)、息子にとっては至福の時間です。在館できるギリギリまで粘り、後ろ髪を引かれる思いで博物館を後にしました。

 

 

 ところで今回の最大の収穫は、古生物学者になりたい息子その1への専門家からの助言。

「古生物学者は儲からない。考え直すなら今のうちだよ。」(そんな身も蓋もない!でも現実か。。。)

「学校の勉強をしっかり頑張りなさい。どの分野の研究をするにしろ、希望する大学や研究機関に進めるだけの基礎学力がなければ意味がないからね。」

「(古生物学者を目指しているなら)理数系科目は得意だろうから、英語を得意科目にできるように。話せないと研究仲間と意思疎通すらできないし。論文も最低限英語必須だよ。」

「恐竜だけでなく、いろいろ見聞を広めるといいよ。どの将来を選ぶにしろ、それは確実に君のためになる。」

・・・お忙しいのに親身にアドバイスいただき、ありがとうございました。

 

 

会場となった博物館のHPです→いのちのたび博物館公式サイト


日本古生物学会2017年会 in 福岡その3

2017年09月20日 | 古生物学・地学

 A会場は昼からは古脊椎動物の部になっていて、息子その1のおめあての恐竜関係もこのグループになるのですが、息子がまず聴講したがったのは40万年ほど昔のワニ、マチカネワニについてです。長頚竜亜目の新標本(ポリコティルス科)の方が見かけは恐竜に近いし、知りたいのでは?と息子に聞いてみると、

「海棲爬虫類は恐竜じゃないし、ポリコティルスはイルカっぽいから姿も(恐竜とは)違う。骨は見つかったけど生態の研究はこれからだろうし。ワニは進化の分岐が恐竜に近いから。。。これから聞きたい。」

と、いっちょまえの返事が返ってきたのでマチカネワニのお話から聴講することにしました。

 なのに。残念ながら。本っ当に残念ながら。ちっとも集中して聞くことができませんでした。マチカネワニから束柱類までの口頭発表7本、中身は本当にわかりやすく、質疑応答でも学者さんのプチ議論?があったりしてすごくすごく興味深かったんですが、息子その1が居眠りしてぐらんぐらんに船を漕いでいたからです。なぜに?直前まであんなに張り切っていたよね?出入り口付近の端っこに座ろうとしたら、前の方のど真ん中に陣取ったの、君だよね?日頃の君の言動および見聞きしているものからすれば、内容もそこまで難しくない、はず。なのに。2日間とも最初から最後まで寝っぱなしなんて!!発表者さんからは『Are you sleepy?Are you up?』なんて声掛けされてしまうし・・・よく会場を追い出されなかったものです。いや、自発的に退出するべきなんだろうけど、出ようとすると息子怒るし、前の方で出る出ないで騒ぐのも迷惑だし、、、関係者の皆様、ほんとうにすみませんでした。あんなんだったのに発表の内容はくらげびとより頭に入っている息子・・・なぜに?

 追記:このページを見た息子にダメ出しされました。「イルカっぽいって言ってない。イクチオサウルスとかを連想しちゃうでしょ?誤解を招くから訂正して!」はい。訂正します。すみません。

(下記は10日午後の聴講できたタイトルです。敬称略。)

A08w 林昭次・小林快次・飯島正也・佐野祐介・伊東隆臣・恩田紀代子・中野貴由・上田貴洋・江口太郎

   骨組織から考察するマチカネワニの年齢と性別

A09w 田中公教・小林快次・Timothy Tokaryk

         白亜紀の潜水鳥類ヘスぺロルニス目の体重進化

A10w 高崎竜司・千葉謙太郎・小林快次・Philip J. Currie・Anthony R. Fiorillo

   Nipponosaurus sachalinensisの成長段階の骨組織学的評価および系統位置の再検討

A11m 久保孝太・小林快次

   獣脚類恐竜・オルニトミモサウルス類の走行能力適応 アークトメタターサルの力学的機能

A12m 犬塚則久

   マンモスの復元の問題点

A13w 澤村寛・安藤達郎・新村龍也

   椎骨・脊柱の形態から展開する束柱類の水生性

A14m 松井久美子・河部壮一郎・遠藤秀紀・對比地孝亘・甲能直樹

   頭骨形態を指標とした束柱類(哺乳類:?アフリカ獣類)の水棲適応の定量的解析-Paleoparadoxia 梁川標本を例に-

 


日本古生物学会2017年会 in 福岡その2

2017年09月19日 | 古生物学・地学

 ランチョン小集会に出遅れたので適当に食べてからポスター発表会場へと移動しました。ポスターは高校生の発表を含めると45枚、じっくり見ているととても時間内には終わらないので、発表者の方がおられるブースを主に回りました。

 中でもHP1の木更津高等学校さんは各々が自発的に責任を持って分担されていて、お聞きしていて爽やかでした。古生物に興味を持たれるきっかけになったのは恐竜だったという方のお話やポスター中のフローチャートの作成苦労話など伺えて楽しかったです。スーパーサイエンスハイスクール(S.S.H)の研究発表会なんかも夏休みにあるとか情報をいただき、息子その1、古生物学者になる前段階での目標がぼんやり見えてきたようであります。(結局予定が重なってしまってS.S.Hの発表会には行けませんでした。残念です。)

 

 以下は直接ご解説いただいたポスターのタイトルです。 

P09 岐阜県大垣市のペルム紀赤坂石灰岩から産出するツノガイ類(掘足綱)の分類学的再検討

  →主要研究テーマから化石友の会のお話まで幅広くお教えいただきありがとうございます。

P13 四国北東部の上部白亜系和泉層群から産出するノストセラス科アンモノイドとその進化的意義

  →超素人の質問に根気よく答えてくださり感謝いたします。

P17 道北地域の白亜系および新第三系から産出した十脚類化石の追加記録

  →ポスターの第一印象が想像していた内容と違って驚きました。ご説明ありがとうございます。

P25 ブラジル下部白亜系サンタナ層産ピクノドン科魚類Iemanja palmaの新標本とその意義

  →解説の途中から加わったくらげびとたちのために再度お話ししてくださりありがとうございます。

HP1 千葉県君津市西谷地域から産出する化石単体サンゴ

  →親身になっていろいろ教えていただき、本当にありがとうございます。

HP2 現生と化石のシャミセンガイの元素分析

  →化石になる時に「貝の身の部分」は鉱物に置き換わって変質してしまっているだろうと思い込んでいましたが、こういうアプローチもあるんだな〜と、目からウロコでした。いろいろ質問してすみません。

 

 そしてポスターを拝見しているうちに時は流れ。。。慌ててA会場へ向かう我々なのでした。

「おめあての発表が始まってしまう!!」

(学会編まだ続きそう。。。)

 

参考 S.S.Hとは→国立研究開発法人 科学技術振興機構公式サイト 次世代人材育成事業 

 

 

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