ビスクドール・雛人形店・オーディオ販売 佐久市 ヤナギダ店長ブログ

ビスクドール64体他お節句雛人形をフランスへ輸出128年、軽井沢方面がお店の場所。

「砂丘のたもとにて」 ―最終回 後篇―

2017年08月14日 22時49分20秒 | owarai
「やめます」
と、言ったのです。

若い看護婦さんと、少し年配の看護婦
さん。ふたりは唖然とした表情で、わ
たしを見ていました。驚きのあまり、
あるいは、呆れてしまって、声も言葉
も出ないという感じすです。

わたしは彼女たちを残して、手術室か
ら走り出ると、もといた部屋までもど
って、手術着を脱ぎ捨て、そこに置い
てあった旅行鞄のなかから、衣服を取
り出しで、まるで脱走するかのように、
病院から飛び出しました。

大通りまで出て、流しのタクシーを拾
って駅まで行き、そこからは電車に揺
られて、アパートまでもどったのです。

帰り道、少しだけ出血があったけれど、
すぐに止まりました。本当は走ったり
してはいかなかったのだけれど、わたし
の赤ん坊は強かった・・・・・。

ねえ、音羽さん。
その時はたぶんまだ、親指の先くらい
の大きさしかない、頼りない細胞のか
たまりですよ。まるで木の芽のような
小さな儚い生命が、わたしに「生きた
い」と言ったのです。烈しい力で、大
木をなぎ倒すようにして、わたしに
中絶をやめさせたのです。

それが、あなたです。
わたしが身籠っていたのは、音羽さん、
あなたなの。

あなたがわたしに「生まれたい」と
言ったのです。
あなたの力が浅はかな女を、罪深い
人間を、動かしたのよ。あなたが、
わたしを、救ってくれたの。

 お願いです。そのことを、どうか
覚えていて。

この手紙の最後に、あなたのお母さん
に対する感謝の言葉を書きたいと思い
ます。

あなたのお母さんは、
出産時の麻酔事故と出血多量で昏睡
状態に陥り、そのまま目覚めなくなっ
たわたしの代わりに、あなたを引き取
り、

順ちゃんと一緒に、おふたり子ど
もとして慈しみ、可愛がり、美しく
聡明な女性に育て上げて下さいました。

あなたのお母さんはこの世にただひ
とり、あなたを育て上げてくれた人
しかいません。そして、あたなたの
お母さんはわたしに、この手紙を書
くことを許してくれました。

この世の中には、奇跡としか思えな
いようなことが、満ちあふれていま
す。素晴らしい奇跡もあれば、悲し
い奇跡もあります。

人はそれらをすべて、受け入れるこ
としか、できないのです。受け入れ、
許し、愛することしか、できない。
わたしがそうであったように、
あなたを、愛することを、やめられ
ないの。

もうじき、夜が明けます。
手術が成功して、もしも歩けるよう
になったなら、わたしはまっさきに、
あなたに会いにいきます。

腕が自由に動かせるようになったら、
まっさきにあなたの躰を抱きしめた
い。口がきけるようになったなら、
わたしがまっさきに呼びたい名前
は、あなたの名前。

音羽さん。
愛しい順ちゃんの娘。
わたしの娘。おとはちゃん。
この手紙を読んだら、あなたの
握りしめている白い小鳥を飛び
立たせて。

わたしの青空に、あなたの小鳥を、
放して。
You White Bird,Released Into My
Azure Sky.

待っているから。
真っ白な小鳥が、わたしの青空を
飛ぶ日を、待っているから。
今までずうっと待ってきたんだ
もの。

大丈夫、これからも待てる。
あなたを愛しているから。

砂丘のたもとにて
  とき子より


「マグロ女」は返上する」

2017年08月14日 19時33分27秒 | owarai
出会いがあって、
セックスが二人の関係を
より深めることもあれば、

残念ながら、別れるキッカ
ケになってしまうことも
めずらしくありません。

男にとっての分岐点は、そ
の女性ともう一度エッチを
したい、と思うかどうか。
(まあ、逆も同じですが・・・・。)

男は相手に対して、それほど
のレベルを求めていません。

思ったより胸が小さかったと
か、意外に経験がありそうだ、
ということを、

チラっと思うこと
があっても、そのせいで嫌いに
なることはほとんどありません。

ただし、鈍重な女性には、正直、
男は疲れます。

男は自信がない分、やはり女性
には、最初処女のごとく、が賢明
です。

だからといって、鈍重=マグロ状
態がいいというわけではありませ
ん。

相手に呼吸を合わせることがで
きるかで違ってきますし、

失敗があるとすれば、
「動かないからだ」というより「気
づけない心」ではないでしょうか。

『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』

2017年08月14日 09時04分16秒 | owarai
よく百人の女と寝たとか、千人切りだ
とか自慢たらたら豪語する男がいるが、

そういう男はおそらく、ただ一人の
女をも、ろくに満足させられなかった
に相違ないと思うのだ。

 充分な歓びを与えられたのなら、女
というものそう簡単にその男と離れは
しない。離れられるものではない。

であるから、捨てられたとみせかけて、
本当は女の方がその男を捨てたので
ある。

百人の女とやったという男は、実は
百人の女たちに見捨てられたたいした
ことのない男なのである。

知らぬは本人ばかりで、おめでたい
話しにならぬようにしたいものだ。

ことセックスに関するかぎり、普通、
男も女もかなり臆病なのではないだ
ろうか。

相手の躰のことは、それこそ手探りの
状態だ。

男は、すべての女が同じところを悦ぶ
とい勘違いのエラーを起こしがちだ。

セックスとは、盲目の人がゾウの脚を
さすってゾウの全体像を想像するのと
同じで、だいたいはずれ、かゆい
ところになかなか手など届かない
ものだと思ってよい。

よれより「きみ、○○されるの
好き?」と最初にひと言訊かない
のだろうか(!?

恋のかけひき

2017年08月14日 05時45分51秒 | owarai


恋っていうものは暖炉の
中で燃えている火のような
もの、時々かきたててやら
ないといつのまにか消えて
しまう。

だからこそ、約束の時間に
ぴったりと現れちゃダメ、

いかにも嬉々として見える
から。
三十分ぐらい遅れてちょうど
よい。

いちばん大事なことは、あな
た自身がステキであること。
すぐに他の女とすげ替えが
できないようないい女、

絶対に失いたくないような
魅力的な女であることが
先決。

さて、こうした手練手管を
全部身につけて恋に挑んだ
とする。多分、相手の男は
こう言う。

「君、ひとつ訊いてもいい?
ほんとうに僕のこと、

愛しているのかい?」








「砂丘のたもとにて」 ―最終回 前篇―

2017年08月14日 00時00分11秒 | owarai
「三ヶ月ですよ」って。

わたしにとってこの妊娠は、ちっと
もおめでたくありませんでした。
歓迎もできない、喜べもしない、実
に厄介なことが起こってしまった、
とわたしは途方に暮れました。

あんなにも好きだった、好きで
好きでたまらなくなって、それな
のに泣く泣く別れた、順ちゃんの
子どもですよ。だけど、わたしに
とっては、迷惑でしかなかったの
です。

この子を産んで、この子とふたり、
残りの人生をけなげに生きていこ
う、そんなこと、露ほども、思え
なかった。自分勝手だと思うし、
冷酷で、非常だと思うけれど、で
もそれがその時のわたしの正直な
気持ちでした。

順ちゃんのことは、好きだった。
だけど、わたしが好きだったの
は順ちゃんであって、決して順
ちゃんの子どもではなかった、
そんな理屈というか、

言い訳を
自分に対して一生懸命しながら、
わたしは「中絶しよう」と決め
ました。ひと晩だけ悩んで、
決心したのです。


そして、最初に診察してもらっ
た産婦人科ではなくて、電車で
三十分くらい離れたところにあ
る、市立病院で手術を受けるこ
とにしました。

どうしてだと思いますか?
それはね、市立病院の方が日取り
が早かったから。一日でも早く、
このことから開放されたかった
のです。

けれど、思いもよらないことに、
その病院では、前のから入院し
て、堕胎は翌朝におこなう、と
のこと。
がっかりでした。こんなことな
ら最初の病院にするべきだった。
でも後悔先に立たず。

夕方、子宮口を広げるという処
置を受け、その夜は、六人部屋
だったか、八人部屋だったか、
ほかの患者さんたちとアコーデ
ィオンカーテン一枚で仕切られ
た一角の、冷たいベットの上に
横たわっていました。

その夜のことです。
ひと晩中、悶々として、一睡も
できないまま、蛹(さなぎ)み
たいに身を硬くして、天井や窓
や壁を意味もなく眺めていたの
だけれど、明け方、ふっと何か
が舞い降りてきた気配のものを

感じて、朝まばたきの闇のなか、
懸命に目を凝らすと、一羽の小
鳥がわたしのベットの縁に止ま
って、じっとわたしの方を見つ
めてたのです。まっ白な小鳥。

今までに一度も見たことのない、
きれいな形をしていました。
小鳥は、わたしにそっと囁きま
した。なんて言ったのか、その
時はわからなかった。

だけど確かに、小鳥の声が聞こ
えたの思うです。
幻か何かだと思うでしょう?
そんなの、目の錯覚だって。
もちろんわたしもそう思いま
した。

純白の小鳥が見えたのは一瞬
だけ。もしかしたらそれは、
窓から射し込んできた明けの
明星の一瞬の光だったかもし
れません。

朝が来ました。わたしはスト
レッチャーに乗せられ、手術室
に運ばれていきました。
前日の午後から、何も食べては
けないと言われていたので、お
なかがぺこぺこでした。

おまけに睡眠不足で、心身とも
によれよれです。
なのに、わたしの躰のいったい
どこに、あのような力が残って
いたのでしょう。

手術室に着いて、今まさに手術台
に移し替えられようとしている
時、自分でも制御できない力が、
身の内から湧き上がってくるのを
感じていました。

看護婦さんたちの腕や手を払い
のけるようにして、わたしは
床の上に足を下して仁王立ち
になり、
「やめます」
と、言ったのです。