君にはもうふれられない
幻影でつくった君は
指の間からこぼれていくだけ
洞穴に
卵をぽこぽこ落としていく
白くて丸くて小さい
それは僕の分身
ふれるとわれてなくなる卵
ハマナスの花がたそがれて
海で暮らす風が
少年と少女を取り残す
少女は貝殻を取りにいき
少年は帰らない少女を待っていた
少年は海を見ていた
鷲と出会う
いつもの止まり木に悠然と
遠くを見る眼差し
少年と鷲
わかりあえない二つの個体は
いつまでも年をとることはなかった
君のことだけ考えて生きられたら
どんなに幸せなんだろう
僕はまじめななまけもの
だから君だけを見ていたい
これは神様が僕にくれた
奇跡の出会いなのかもしれない
こうして一人でいるとき
君を想える
君の肌の温もりは
やがて僕の肌から消えるけど
一人雨を眺めている
そんな僕は君を想う
空の向こうに話しかけて
君を忘れようともしたけれど
今の僕は君を想う
苦しく 切なく 寂しく
どうしようもない想いは
君に出会わなければと
つぶやいたけれど
君に出会えたから僕はそう
一人じゃないんだ
出会っていなければ
もっと大きな虚空に入り
明るい空さえ見えなくなる
鏡うつしのユメの奇蹟
そうこれは
神様がくれた
たった一つのおくりもの
猫がとおる
いつもいつでも
寂しくて
ずるくリンゴを
花に変えゆく