叫ばざるをえなかった
脅威の失意と
渦のように現われた朝の雲
大地と空があやふやになり
眩暈が押さえ込んできた感情を
大きく開いた口から声が出る
引き裂かれる空間
渦を巻く顔の歪み
叫び
叫び
叫びは底のない天へ伸びていき
ブラックホールに呑み込まれる
まるで何もなかったかのように
静けさだけが広がっている
音の無い世界
そして声の無い叫びが
眠りから起こされる
眠れる才能が
瞬間で一瞬の出来事によって
這い出て来る
背けられない目は
潰れることを覚悟する
甘美の美酒を飲み干すように
胸が張り裂けそうになる
研ぎ澄まされていく感覚は
近づくものに嫌悪し
罰せられていく螺旋の無限
取り壊そうとする歪な壁は
たくさんの人だかりで守られる
か ぜ
風が胸を吹きぬける
音の無い風が
当て所も無く彷徨えば
いつかの幕が立っている
桜の咲く、花びらの舞う
諸行無常を謳うかのような
桃色の道
何に追われている?
何を追っている?
失うものなど何も無い
でもどこかで待ち望んでいる
悲しく憐れで惨めな個体
這いつくばり追いすがる
泥にまみれた手の平は
表情を病魔に変えてゆく
今まで歩いてきた道程が
見るも無残に散らばっていく
色も臭いも記憶も
不思議に乱した髪は
不協和音をクレッシェンドする
演技していく細胞は
朽ち果ててはまた蘇り
受話器を持つか迷いだす
街灯は炎となり
鳴り止まない音楽は
写真のように切り取られていく
今まで何と繋がっていたのか
何とも繋がってはいなかったのか
愛する人すら呼吸すら
唇の音も瞳の演舞も
何もかもが無意味だった
身体全てと言っていい
発する叫び全てと言っていい
いつだっかた忘れてしまった
傷が熱く燃えて紅く染まる
赤い海を流れていく
引き戻されない光の海に焦がれて
ああ 風が呼んでいる
その時の
本に出会いて
ものがたり
むすばれてまた
ほどかれていく