「もう生まれたくない」
長嶋有 著
この小説は死の物語だ。
死をテーマに物語っている。
けれど直接的ではない。
テレビに新聞にネットにラジオで見聞きする、
有名人のまたは事故のあらゆる死。
その死は少しの感傷を促したあと、日常へと帰依する。
さあ死とはなんだろうか。
読み終わった後にタイトルへと帰るのだろう。
異化から見た風景はまなざしを開けて、閉じて、
死へとつながる。
死はどれほど身近にあるのだろうか。
事故の描写の両方の視点、
おもう二つの視線。
死は繋がっていく、連続の表裏。
”三の隣は五号室”のようなつながりが、
死と少しく同調し今の時代に合わさっていく。
死を間接に見る聞くたびによぎる、
つるりとした表面の記事の裏側の生活。
そして通り過ぎていく。
新型コロナという時代の毎日の感染者、重傷者、
死者という数字の淡々とした羅列に、
違和感を混ぜ合わせて生きる死を見詰めざるをえない。