8月29日19:00より久留米工業団地福祉会館において、久留米工業高等専門学校・機械工学科・渡邊悠太准教授をお招きして溶射法についての講演をしていただきました。
最初に溶射法の基礎的な知見をご説明いただきました。溶射の歴史は1909年スイスで発明されてから、供給された材料を個体粒子衝突を用いて対象に皮膜を生成させることで表面改質を行う手法として発展してきたそうです。その溶射法については高速フレーム溶射や爆発溶射などの物理的な加熱方法を用いたものや、電気的に発生させたプラズマ使用するアーク溶射などの原理を説明いただきました。これらの溶射は高い熱を伴うという特徴があり、それを踏まえたうえで渡邊先生のご専門であるコールドスプレー法についてのお話をしていただきました。
コールドスプレー法は粒子速度を上げることで低温での溶射が可能です。そのため皮膜速度に優れ、圧膜の生成が可能で、皮膜材料への入熱が少ないという特徴があります。またなぜコールドスプレー法で皮膜ができるかという原理(衝突による粒子表面の酸化被膜が露出することで結合し皮膜ができる)から粒子速度による皮膜の形成の違いなどを実際の電顕の写真を用いて説明いただきました。一方でコールドスプレー法は行う環境下が現場が多いためパラメーターの決定が難しい部分があることもお話しされていました。
最後にこれらのコールドスプレー法を用いた実際の事例と渡邊先生が現在行ってらっしゃる研究についてお話しいただきました。特にエアロゾルデポジション法(粒子を衝突させるのに加圧ではなく陰圧を使う方法)ではフィルム型色素増感太陽電池は焼成をせずにフィルムに製膜できるというのが興味深い内容でした。また光触媒酸化チタン有機物汚れを分解する特徴があるのですが、熱を加えると触媒活性が落ちてしまいます。現在渡邊先生が行ってらっしゃる光触媒酸化チタンを入熱せずに樹脂に製膜させるコールドスプレー方法はそれを解決する糸口になっているそうです。
質疑応答は大変白熱し、特に溶射の技術で積層することによって3Dプリンター的に使う技術について後加工が可能かどうかの質問があり靭性の特徴についてのご回答を頂いたり大変印象的でした。
大変貴重なお話を分かりやすくしていただいた渡邊先生にあらためて感謝いたします。
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