[映画紹介]
ドイツ製のSF映画。
モーツァルトが35歳で死なず、
80歳まで生きたら、どんなに沢山の素晴らしい音楽を作曲できただろう?
シラーやマンデラやキュリーがもっと長く生きていたら、
どれほど世界に貢献できただろう?
という問題提起のもと、
この映画の近未来世界では、寿命の売買が行われている。
ドナーとレシピエントの間で適合した場合、
金銭で寿命が売り渡されるのだ。
冒頭、主人公のマックス・トーマが難民収容所で、
18歳の青年に寿命の提供を説得する場面が出て来る。
提供する年数は15年。
報酬は70万ユーロ。
それだけあれば、家族が移民できる。
そのかわり、青年は33歳に年取ってしまう。
青春を売り渡す代償だ。
実際は寿命を買うのは富裕層であり、
提供するのは貧民だった。
その革新的な技術は巨大企業AEONが管理し、
ルーシー・タイセン財団が後押ししている。
(スーパのイオンや英会話のイーオンとは無関係。念のため)
ノーベル賞受賞者に対して、
施術をして、長寿を獲得し、
社会に貢献してもらう計画だという。
しかし、反対派もいる。
アダム・グループは、
寿命を延ばしたノーベル賞受賞科学者を多数殺害する。
「寿命を商品化する者は、人間をも商品化し、
人間を家畜におとしめる。
他人の寿命を盗む者は、
我々が処刑する」
と犯行声明を出して。
主人公のマックスはAEONの優秀な営業マンで、
年間最優秀セールスマン賞を受賞、
276年分を仲介したとして表彰されている。
収入も上がり、マックスは妻のエレナと共に、
湖畔の家を買うことを夢見ている。
そのマックスに不幸が襲う。
住んでいた高級マンションが火事で焼けたのだ。
失火のため火災保険はおりない。
250万ユーロというローンの残債がのしかかる。
しかも、ローンの契約で、
支払えない場合は、妻の寿命で支払う契約がされていた。
寿命が担保という、シュールな展開。
マックスの方はドナーの経験があるが、
相手のレシピエントが最近事故死したため、ドナーの適合者ではない。
事態回避の努力をするが、
結局エレナは手術を受け、38年分の寿命が取り上げられてしまう。
ほどなくエレナに症状が現れ、
一挙に40歳も年取ってしまう。
しかも、エレナは実は妊娠していて、その子まで失ってしまったのだ。
そこでマックスはよからぬことを考える。
レシピエントを拉致し、
強制的に寿命を取り戻す手術を受けさせようとするのだ。
レシピェントは、なんと、AEONの最高経営責任者(CEO)の
ソフィー・タイセン。
エレナの寿命を受けて、若返っていた。
マックスは若返ったルーシーを拉致し、
リトアニアの医師との合流点に車で向かう。
AEONの武装部隊が追いかけて来る。
途中、拉致した女性はルーシーの若くなった姿ではなく、
実は、ルーシーの娘のマリーだったと判明する。
(マックスは疑っているが)
その上、潜伏場所にアダム・グループがやって来て、三人を拉致し、
AEONの武装部隊と対決する・・・
という、波瀾万丈の物語。
ついに科学は人間の寿命にまで手を付け、
それが金で売買されるようになる、という
人間の尊厳を懸けた内容。
寿命の売買における倫理観、正義とは何か、真の平等とは、
結局医学の進歩の果実は富裕層が取り、
貧乏人は搾取される、
など掲げるものは多く、
傑作になる要素は満載で、
途中までは面白いが、
最後はヘンにねじれて、
あまり上等とはいえない結末となった。
途中、ローンや火災の真相があかされたのは面白かった
マックスを演ずるのはコスティア・ウルマン。
「5パーセントの奇跡」 (2018) に出ていた人。
エレナとソフィーの手術前と後では、
別な俳優が演ずる。
やはり年齢差は克服できなかったか、
老婆になってからのエレナが怖い。
7月27からNetflix で配信。
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