
この店のママと思われる女性が
「写真撮るとお金いるの?」
おびえたような顔をして聞いた
店内などの撮影でたまに聞かれることもあるが
そんなふうに聞かれたことがなかったから
驚いた
ファインダーから見る
ママの顔は手抜きをした化粧
暗い場所ならではの濃いメイク
厚いファンデーションで隠されていたが
土色の肌をしているのがわかった。
長年の飲酒の積み重ねがそうさせたのかもしれない
ママの眼はまっすぐこちらを見ていた
まばたきもしないでしないで
私から視線をそらさなかった
それ以上 近づけなかった
撮ってるあいだ 気持ちが震えた
この写真の女性は酔っていたようだが
撮影中 背を向けたまま
聞き取れなかったがずっと何やら話していた
柳ヶ瀬撮影ははじめてではないのですが
何度通ってもなかなか感じたようには撮れない場所で
今回も昔ながらの柳ヶ瀬を撮るつもりでしたが
いつも撮影に一歩踏み込めない何かを感じていました。
今回は当時の面影を残す店を撮りたくて
思い切って店内に入り撮影を頼みましたが
予想どおり最初は受け入れてもらえなくて
今回の柳ヶ瀬撮影で
今まで何度となく通っていても
この場所に近寄れなかった理由を見たような気がしました。
怯えたママの眼
女性の冷ややかな口調
店の空気感
この街は直感で悲しい寂しい街なのだと知りました。
人の心の裏側に触れることは簡単なものではなく
軽い気持ちでこの場所は撮れないのだと知りました。
彼女たちにある心の裏側
私の心をつかんで離れなかったです。
「覚悟を決めて撮らないといけない場所」
撮りたい場所だけれど
そんな覚悟ができないでいます。