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昨年ですが10月の連休に主人と青森観光してきました。
仕事を終えた名古屋空港発17:45便で1時間半のフライト。
航空性の中耳炎で耳が痛くて大変でした。
海外も検討していたので行かなくてよかったです。
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21時頃青森駅にあるホテルに到着。
廊下には絵画などの美術品がありました。
宿泊したのはホテル「ReLabo」
有機農産物を食材とした食事、設備や調度品、備品などウェルネスをコンセプトにしたこだわりが随所に見られたホテルで気持よく過ごせました。
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翌朝、ホテルからのパノラマビュー。
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朝食を済ませホテルを08:30出発。
八甲田山〜奥入瀬渓流〜十和田湖を巡ります。
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青森市街地から八甲田・十和田ゴールドラインと呼ばれる国道103号を、八甲田山麓南側を周回して十和田湖に向かいます。
沿線にはスキー場や三角屋根の古い施設や売店が見られました。
写真は雪で押し倒されたであろう柵。路面の傷んだ道路があちこちで見られ、一帯が雪深い地であることがわかります。
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緩やかな勾配の上り坂を走り冬季通行止めのゲートを通過すると、樹齢300年のヒバの丸太がそびえ立つ岩木山展望所があります。
厳しい風雪に耐える強い生命力をもつ「青森ヒバ」
青森県を代表する木として1966年に制定されています。
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展望所傍らには八甲田除雪隊の歌碑がありました。
毎年、青森市側と十和田市側の双方から除雪作業を行い、中間地点にあたるこの場所で除雪の苦労をねぎらい歌い継がれているのが「八甲田除雪隊の歌」
歌は8番まであり歌碑に記された歌詞は4番と8番でした。
「八甲田除雪隊の歌」
作詞 竹内博 作曲 鶴谷ミツ
1 春の息吹に萌えろよ緑 別れ惜しむな妙見に
横内の里あとにして 今ぞ眺まん八甲田
横内の里あとにして 今ぞ眺まん八甲田
2 雲谷より眺むる青森湾に 汽笛もかすむ連絡船
岩木に無事を祈りつつ 雪降りやまぬ展望台
岩木に無事を祈りつつ 雪降りやまぬ展望台
3 茅野の空に月影寒く 明日は難所の七曲り
丈余の雪も何のその 今こそ腕の見せどころ
丈余の雪も何のその 今こそ腕の見せどころ
4 春の吹雪に行く手阻まれ 凍てつく機械いたわりつ
寒水沢から城ヶ倉 悪戦苦闘の除雪隊
寒水沢から城ヶ倉 悪戦苦闘の除雪隊
5 仙人ゆかりの女中坂だよ 友よあれが酸ヶ湯沢
明日への英気を湯煙に 星空高き 地獄沼
明日への英気を湯煙に 星空高き 地獄沼
6 大岳 石倉朝日に映えて 睡蓮沼のその先は
雪 雪 雪の魔の峠 負けてなるかと雪男
雪 雪 雪の魔の峠 負けてなるかと雪男
7 南部平野を眼下におろし 猿倉見えれば一息と
油にまみれた顔と顔 雪焼け面の吾が友よ
油にまみれた顔と顔 雪焼け面の吾が友よ
8 百戦錬磨のつわものどもが 熱と意気と誇り持ち
十和田の春を呼び起こす ああ 八甲田除雪隊
ああ 八甲田除雪隊
この記事を作成している2015年1月の青森市街地では連日の大雪で積雪が120cmに迫り、八甲田山麓ではすでに4mを超える積雪で県内では豪雪災害救助法が発令されました。
比較的標高の高い場所にある青森空港では年間10mを超える降雪量があり、地元の建設会社や農家の人で構成される「ホワイトインパルス」と呼ばれる除雪隊が連日稼働し冬の運航を支えています。
八甲田・十和田ゴールドラインは雪のため11月〜5月まで通行止めになりますが、春になると高さ10mにもなる雪の回廊を楽しむことができるそうです。
今年は例年より雪が多く強い寒波が居座っています。雪の回廊はもっと高くなるかもしれません。
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展望所では津軽富士と呼ばれる青森県最高峰1625m岩木山を望むことができるのですが、樹木に阻まれ何処にあるのか分からず(この場所が岩木山じゃないのかと 笑)観光タクシーのドライバーさんが教えてくれたビューポイントから眺めた岩木山がこの写真です。小っさぃ・・・
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八甲田山麓にある八甲田・十和田ゴールドライン(国道103号)を走り、萱野高原に到着しました。
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このあたりは火山性の高原で以前は牛や馬の放牧地になっていました。
現在は十和田八幡平国立公園になっています。
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ダケカンバ
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ミズナラとダケカンバ
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熊の好物、ドングリ(ミズナラ)がたくさん落ちていました。
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遠景に見えるのが前岳、赤倉岳、ロープウェイのある田茂萢岳。
紅葉はまだでしたが、快晴の八甲田山を見れて良かったです。
ところどころにある木は放牧した牛や馬の日除けとして使われていたそうです。
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せっかくなので・・・
さて、八甲田山ですが、八甲田山という山はなくて、いくつもある山の総称で八甲田連峰です。探しました八甲田山・・・笑
八甲田山は青森県の中央に位置し南側にはカルデラの十和田湖があります。
大岳を主峰に、高田大岳、井戸岳、赤倉岳を中心とする10の山々で構成する北八甲田連峰と、櫛ヶ峯、乗鞍岳を中心とする6つの山々で構成する南八甲田連峰とに分かれた火山群です。
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八甲田ロープウェイに到着しました。
連休初日とあって1時間の乗車待ちです。
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ロープウェイからの眺め
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北八甲田連峰のひとつ、田茂萢岳山頂にある山頂公園駅に到着すると麓の駅での喧騒がなくなり雄大な自然に囲まれます。
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映画『八甲田山』1977年
撮影時の写真が展示されていました。
青森市街地から十和田湖までの約70km、標高約1000mの八甲田山麓を走る一帯は今も語り継がれる「八甲田山雪中行軍遭難事件」の地。
明治35年、冬の陸軍八甲田山雪中行軍演習で将兵210名中199名が死亡した遭難事件として知られている日本有数の豪雪地帯です。
※雪中行軍ルートは八甲田山麓北側から周回する県道40号青森十和田線沿い
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屋上展望デッキで青森の眺望を楽しみます。
写真右奥に雲にかすんだ岩木山が見えます。
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青森市街地を望む
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毛無岱湿原と南八甲田の山々
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相次ぐ熊の被害で6月から9月まで登山道が閉鎖されていました。
入山規制解除直後とあって登山はやめて山頂駅付近の散策としました。
知らない山道は逃げようがないですから。
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山頂公園ウッドデッキ
写真左、大岳の奥が南八甲田の山々です。
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山頂公園駅ウッドデッキからの眺め
ナナカマドの実が真っ赤に色づいていました。
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三山ビューポイント
左から赤倉岳 井戸岳 大岳
井戸岳山頂では噴火口を見ることができるそうです。
この先に田茂萢湿原がありますが道がぬかるみ滑りやすかったので山歩きはここまでとしました。
スニーカーを履いていましたが、ソールのしっかりとした登山靴の方が歩きやすいと思いました。
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なだらかな傾斜で気軽に山歩きができ、山裾には湿地帯も多く植物鑑賞もできる。
熊の件がなければ散策したい場所でした。
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六甲山麓の林道を走り、奥入瀬渓流へ到着しました。
道を包むような背高のブナの林が午後の日差しを和らげてくれます。
舗装された道路を走っているのに森の中にいるようです。
青森県では野生動植物の生態系を維持するために過度な道路整備は行わないようにしているそうです。
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十和田湖から緩やかに北流する奥入瀬渓流。
十和田湖の流出口(子ノ口)から蔦川と合流するまでの約14kmの区間が奥入瀬渓流です。緑豊かな森が澄んだ水を育み、滝や清流、岩といった変化に富んだ景観をつくりだしています。
十和田湖は活火山で「十和田火山」といわれています。
何度か噴火を繰り返してカルデラを形成したあと、そのカルデラに水が溜まってできたのが十和田湖です。やがてカルデラが決壊し流れ出た湖水でつくられたのが奥入瀬渓流です。
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奥入瀬の渓流の美観を形成する植物のひとつが苔。
岩場や歩道のかたわらでいくつかの種類の苔の着床を見ることができました。
地元にも渓流はありますが、水分が多かったり乾燥したり、他の草花が育ったりと苔はなかなか定着しません。
奥入瀬では生育環境が整っているのでしょう、苔の種類が豊富でよく育っていました。
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十和田湖に到着すると斜陽が眩しく、カルデラの山に日が隠れようとしていました。
十和田湖では遊覧船に乗りました。
高い透明度と冷たくきれいな水はヒメマスの放流漁業地として利用されています。
十和田湖にはもともと魚は生息していませんでした。
明治時代までの十和田湖畔は凶作が深刻で農作物が育たないため、人々は飢饉に苦しんでいました。
和井内貞行が湖畔住民の飢饉救済のために養魚事業に取り組み、北海道の支笏湖に生息するヒメマスの卵を十和田湖畔で孵化させ、湖に放流したことからヒメマスが棲むようになりました。
※北海道の阿寒湖とチミケップ湖がヒメマスの原産地で、北海道の支笏湖と青森の十和田湖に放流されました。
ヒメマスは海に戻れなくなった紅鮭が淡水魚として繁殖し世代を繰り返した個体群です。
現在の十和田湖ではヒメマスの他、コイ、ギンブナ、ワカサギやイワナも生息しているようです。
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水深はもっとも深い場所で326m。
水恐怖症なので船内アナウンスで「このあたりがもっとも深い場所になります」といって湖上で船を止めた時は「噴火でできた(しかも巨大!)陥没穴上にいるんだ」と恐怖で体が震えました。
でもジオパーク的視点で旅をするのも面白いかもしれません。
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高村光太郎『乙女の像』
詩人であり彫刻家でもあった光太郎最後の作品です。
箱根の「彫刻の森美術館」にある『みちのく』と同作品のようです。
十和田湖のカルデラ山と湖面に映る山の影を、向き合う2人の裸像で表現しています。
2人の裸像は実体と影(ものごとの奥に潜む真の姿、自己を写す)、2体の彫刻の3つの点と線で結ばれた配置と空間は、爆発でできたカルデラの円錐空間と、
心や体、魂の調和、高次への意識の上昇、などといった精神的な意味を表しているのではないかと思います。
『乙女の像』は詩集『智恵子抄』で知られる光太郎の妻・智恵子がモデルといわれていますが、光太郎自身は「見る人が決めればいい」というスタンスでした。
体のモデルは当時19歳のモデルクラブに所属していた藤井照子という女性です。
人が写っているのでトリミングしましたが、台座には智恵子の愛した故郷・福島の黒御影石が使われており、傍らには光太郎の詩が刻まれています。
十和田湖の裸像に与う
高村光太郎
銅とスズとの合金が建っている。
どんな造形が行われようと
無機質な円形にはちがいない。
はらわたや粘液や脂や汗や生きものの
きたならしさはここにない。
すざまじい十和田湖の円錐空間にはまりこんで
天然四元の平手打ちをまともにうける
銅とスズとの合金で出来た
女の裸像が二人
影と形のように立っている。
いさぎよい非常の金属が青くさびて
地上に割れてくずれるまで
この原始林の壓(圧)力に堪えて立つなら幾千年でも立ってろ。
精神を病んで亡くなった智恵子。
その姿は病弱で華奢であったろうと思いますが、
十和田湖の「乙女の像」は豊満で逞ましさすら感じます。
光太郎は智恵子の心の安寧を願いながらも、厳しい自然の中でも挫けない心の強さや、生きる活力に満ちた力強くたくましい東北の女性を智恵子と重ねて、
光太郎の最期まで心の中に生き続けた智恵子への願いやメッセージが込められているようでした。
裸形
高村光太郎
智恵子の裸形をわたくしは恋ふ
※中略
わたくしの手でもう一度
あの造形を生むことは自然の定めた約束であり
そのためにわたくしに肉類が与へられ
そのためにわたくしに畑の野菜が与へられ
米と小麦と牛酪とがゆるされる
智恵子の裸形をこの世にのこして
わたくしはやがて天然の素中に帰らう
この詩が発表された4年後『乙女の像』が除幕されました。
光太郎は智恵子への思いを自らの命を引きかえに渾身の力で像を刻み、ほどなくその生涯を終えました。
智恵子とともに生き、智恵子にすべてを捧げた生涯でした。