まさおレポート

孫氏 頭脳の97%

https://www.newsweekjapan.jp/yukawa/2019/09/post-19_4.php

孫氏は「ビジョンファンドを始める以前の18年間、アリババやヤフーなどに投資してきた。2、3人のアシスタントを使って趣味的に投資判断してきた。自分の時間や頭脳の3%くらいを投資に充てていた。しかしビジョンファンドでは専門家集団を作り、投資にわたしの時間や頭脳の97%を充てている」と語っている。投資の専門家として元ドイツ銀行のRajeev Misra氏が部下を連れてビジョンファンドに参画しているほか、孫氏は世界中から投資の専門家を集めてきており、 スタッフ数は株主総会の時点で415人。孫氏によると、今後1000人体制に拡大する考えだという。

 

孫氏によると、一般的なベンチャーキャピタルの利回りの平均は13%だが、ビジョンファンドは「年間当たり45%の利益を実現した」という。「投資していただいた皆さんには大変喜んでいただいた。2号ファンドにもぜひ参加したいという熱い声をいただいている」と語っている。

シリコンバレーのベンチャーキャピタルBenchmark社のBill Gurley氏は「ソフトバンクは資金を武器として使っている」と解説する。「ソフトバンクがあなたの事業領域に関心を持てば、あなたの会社はもう戦いに巻き込まれている」と同氏は言う。資金を必要としていないからといってソフトバンクからの出資を断れば、巨額の資金はライバル社に行く。「経営者にとっては非常に難しい選択だ」とGurley氏は指摘する。

 

Altimeter Capital社のBrad Gerstner氏は「(ビジョンファンドの)2号ファンドを中止してもらいたい」と訴える。「ライバル社同士を戦わせるのは、それらの企業にとっても、シリコンバレーにとっても、ソフトバンクにとってもよくない」と主張する。孫氏は株主総会で、1つの事業領域、地域で1社だけに投資するのでバッテイングはないと語っていたが、Gerstner氏によるとビジョンファンドは事業領域の重なるDoorDash社とUber社の両方の企業に出資していると指摘している。

このほかにも「投資対象になるようなユニコーンと呼ばれるような大型ベンチャー企業があまり残っていない」「AIを対象としたファンドと言いながら、WeWorkのようなコワーキングスペースにも出資している」「投資先のUberやWeWorkの業績が芳しくない」などと言った批判的、懐疑的な意見は多い。

 

1つは孫氏の言うようにシナジー効果が期待できるからだ。ビジョンファンドから投資を受けたベンチャー企業群が全体で大きなシナジー効果を発揮するまでには、まだしばらく時間がかかるだろうが、ソフトバンクがpaypayを実装するに当たってビジョンファンドの投資先の1つであるインドのキャッシュレスベンチャーのPaytmの技術支援を受けている。このような協業が今後も増えていくのだろうと思う。

もう1つの理由は、AIビジネスにはwinner takes all(勝者の独り勝ち)の傾向があると思うからだ。AIはデータがすべて。データが増えればAIはさらに賢くなり、サービスが向上する。サービスが向上すれば、ユーザーが増え、さらにデータが増える。さらにデータが増えれば、さらにAIが賢くなり、サービスが向上する。正のスパイラルに入るわけだ。検索や地図の事業で、先行するGoogleに後発企業がなかなか追いつけないのはこのためだ。

さらに1つの領域を支配するに至ったAIベンチャーは、関連するより多くのデータと成長機会を求めて周辺のビジネス領域に乗り出す。例えば東南アジアでタクシー配車アプリを提供するGrab社は、フードデリバリー事業に乗り出し、最近ではフィンテックの領域にも乗り出した。同社傘下の運転手の勤務データを持っているので、より手堅く運転手へ融資できるメリットがあるからだ。東南アジアの金融機関は、Grab社がフィンテックの領域に参入することを、数年前に予見できていただろうか。

 

ビジネスモデルは、アジアの新興国の間で生まれてくるのだろう。先進国は、既存のしがらみや規制があって、新たなビジネスモデルが生まれにくいからだ。Grab社が東南アジアで斬新なビジネスモデルを次々と展開しようとする中で、日本ではタクシー配車アプリのUberの参入がほぼ失敗に終わった。先進国で、新しいビジネスモデルが成功することの難しさを物語っている。

では日本の役割はどうなるのか。投資になるのではないかと思う。金融関係者によると、ビジョンファンドの2号ファンドには日本のほとんどの大手金融機関が参加しており、「オールジャパン」の体制になっているのだとか。

技術は米中、ビジネスモデルはアジア、日本は投資。これがAI時代の世界のビジネス勢力図になるのではないかと思う。

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