逗子市池子で2020年2月、「ライオンズグローベル逗子の丘」敷地斜面が崩落し、歩いていた市内在住の高校3年の女子生徒=当時(18)=が死亡した事故を巡り、遺族がマンション区分所有者の住人や管理会社などに損害賠償を求めた訴訟で、住人側と遺族の和解が横浜地裁で成立したことが30日、関係者への取材で分かった。28日付。
遺族に住人側が賠償金として1億円を支払う。この後、責任の所在を追及するためとして、管理会社「大京アステージ」側との訴訟は継続するという。
遺族は、管理会社側が事故前日に斜面の亀裂を発見した管理員から連絡を受けたのに安全対策を怠り、また区分所有者の住人らにも危険な斜面に関する責任があるなどとして21年2月、計1億1800万円の損害賠償を求めて提訴した。
原告側代理人の南竹要弁護士は「請求額に近く勝訴的和解といえる」と説明している。住人側がマンション完成前に斜面の風化による強度低下が指摘されていた地質報告書の開示に応じたことを評価して「誠実に向き合ってくれた。共に暮らす地域住民でもあり、ご遺族の意向で和解に応じることとした」と述べた。
また弁護士は管理会社側に対して引き続き責任の所在を明らかにすると話した。
遺族は娘を弔うため、社会で同じことを起こさないために、これからも訴訟を闘っていくと話した。
県警はマンションの担当だった管理会社の男性社員(36)を、前日に亀裂を把握したのに適切な対策を取らなかったなどとして業務上過失致死容疑で書類送検した。検察が起訴するかどうかを検討する。
崩落した斜面は当時、県が土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に指定し、一部は現在では、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)となっている。
遺族側は、県に対しても事故直前に現場一帯を調査した際、崩落の危険を探知せず、危険な斜面が放置されたなどとして23年、県の責任を問う訴訟を起こしている。 神奈川新聞 | 2023年6月30日(金) 16:08記事
崩落現場の風景
逗子大京マンションと同じ危険を孕んでいるマンションは少なからずある。逗子は当時は土砂災害警戒区域(イエローゾーン)であり、私の住むマンションは特別警戒区域(レッドゾーン)に5年前に指定されたという点ではさらに危険の度合いが大きいと理解している。
わたしを含めて住民(区分所有者)は他人事でなくもっと深刻に対応を考えなくてはいけないと切に思う。
そのため関連情報をお知らせしようと思い、昨日は逗子市池子「ライオンズグローベル逗子の丘」まで電車を乗り継ぎ調査写真を撮ってきた。リアルな崩落現場を見て亡くなった18歳女子高生に弔いの念が湧かない人はいない。
逗子マンションの住民側が1億円を支払うという金銭的負担も仰天の結果であるが18歳の女子高生の死ということに住民は深い倫理的痛みを覚え、一生十字架を負うに違いないだろう。
今後万が一こうした崩落事故が我がマンションに起きれば区分所有者一同は不作為で未必の故意と糾弾されかねない。金銭的負担や倫理的負担を負うことになるリスクがかなり濃厚にある。わたしは何よりも不作為の当事者に成りたくない。
おそらく崩落危機を抱えるマンションの住民の多くも同じ考えではないかと思い危機管理の情報共有をしたいので記事を書いた。
崖崩落から命を守るには何が必要なのか。専門家は「危険な兆候を素早く通報することが鍵」と指摘する。
よく晴れた水曜日の午前8時ごろ最低気温は約1度。道路脇の高さ約16メートルの斜面が突然崩落し、68トンもの土砂に埋まった。事故は5日午前8時ごろに発生。マンション下にある高さ約15メートルの斜面上部が高さ約8メートル、幅約7メートルにわたり崩落した。県によると、崩落した斜面の斜度は約60度で、2011年に土砂災害警戒区域イエロー区域に指定されていた。
斜面の上には2004年築のマンション(38世帯)が建つ。敷地内の設備管理を行う「大京アステージ」(東京都)によると斜面の専門的な点検業務は契約に含まれておらず、同社は月1回以上の目視点検を実施していたが、「崩落の危険の予兆は把握していなかった」としている。
県が公表した事故の最終報告書は、主因を「乾湿、低温による風化」と指摘した。斜面は1960年ごろの市道整備の際に造成。2004年に現在のマンションが完成した。
斜面の安全対策は原則、所有者が講じるが、急傾斜地法に基づき崩壊危険区域に指定されれば、県が防災工事を行うこともある。しかし、県によると、同法は自然の崖を想定しており、下部が石垣で補強された現場斜面は対象外だったとの言い訳を行なっている。
管理会社大京アステージは以下の説明を行なっている。
マンションは2004年7月完成。管理会社アステージは、所有者と契約し、マンション建物の保守業務をしていた。崩れた斜面に関しての専門的な保守業務は契約に含まれておらず、管理会社は「月1回以上、目視による点検をしていた」という。
私のマンションも目視の点検をしているが信頼出来るレベルでないことは素人目にも明らかではないか。
マンションの保守業務を担っていた管理会社によると、定期的な目視点検でも斜面に異常は見当たらなかった。一方、管理人は事故前日、斜面に亀裂を見つけ、管理会社に連絡していた。だが、情報は県や市にすぐに伝わらなかった。
事故後に報告を受けた県の担当者は、昨年10月の記者会見で「できることは限られたと思うが、事前に情報をもらえれば(対応の)選択肢が広がった可能性はある」と悔しさをにじませた。
行政側も以下のように説明をしている。
逗子市は事故後土砂災害警戒区域(イエローゾーン)を緊急点検。対策が必要と判明した斜面は20カ所にのぼったが、うち13カ所は私有地だった。市の担当者は「崖はいつかは崩れるとの前提で危機意識を持ち、少しでも危険な兆候があれば、すぐに知らせてほしい」と話した。
国土交通省の土砂災害研究室長と研究官の2人が現地調査を行い神奈川県と国土交通省国土技術政策総合研究所は2日、「崩落箇所は表土が両脇の斜面より薄く、風化防止の作用が不十分だった」などとする最終報告を公表した。事故現場では同日、市の応急復旧工事が始まった。黒岩知事は県庁で記者団に「このような痛ましい事故が再び起きないよう、県民の安心確保に取り組みたい」と強調した。
管理会社大京アステージの対応はどうなっているのだろう。
「崩落は人災」遺族の父親
「娘は死なずに済んだ。崩落は人災。なぜ起きたのかを徹底的に追及したい」。亡くなった女子生徒の父親(55)は21日、裁判後に横浜市内で記者会見を開いて訴えた。「崩落を予見できる機会がありながら、誰一人危険を察知できなかったことに怒りを感じる」と胸中を明かす。