ゲーデルの輪廻観はわたしが漠然と考えていたことを単純明快に述べている。
ゲーデルは神秘主義ではなく理性で霊や輪廻転生に迫ろうとした。55歳のゲーデルが82歳の母マリアンヌに送った手紙は来世の存在を述べていることから「神学的手紙」と呼ばれている。
この手紙には大変興味ある内容が盛られている。また、高齢の母の死の不安を和らげる優しさが強く感じられる。
「もし世界が合理的に構成されていて、意味のあるものであれば、来世での再開が存在することに間違いありません。人間は、限りなく変化し、発展を続ける可能性を与えられています。それにもかかわらず、その千分の一も達成できないで終わってしまうような人間が存在することに、一体なんの意味があるのでしょうか。それでは、莫大な費用をかけて、注意深く設計した大邸宅の土台を築いておきながら、その上には建物を建てずに無駄にしてしまうようなものです。」
限りなく変化し、発展を続ける可能性を真理であると置いている。そこから上述の言が生まれる。
「来世では、すべての物事を2*2=4のように、絶対的に誤りのない正確さで理解できるはずです」
絶対的に誤りのない正確なことが真理であると置いている。
「カトリックの教義によると、私達の愛する神が、永遠に地獄に送るだけのために、大多数を想像したことになります。もちろん、善良なカトリック教徒だけは除かれるそうですが、それは教徒のなかでもさらに少数のはずです」
このカトリック教義批判はカラマゾフの兄弟のイワンの「神の作った世界をみとめない」に通じる。
「世界は、合理的に構成され、疑問の余地のない意味をもっているという信念を、私は神学的世界像と呼んでいます。この信念は即座に次の結論を導きます。私達の存在は、現在ではきわめて疑わしい意味しかもたないのですから、それは、来世の存在と言う目的のための手段に違いありません。そして、すべてのものに意味があるという信念は、すべての結果に原因があるという科学的原理とも対応しているのです」
「すべてのものに意味があるという信念」は仏教の縁起に通じる。
プラトン的であり、大乗仏教的でもある。法華経はすべてのものに意味があるという信念から合理的に再構成され、編まれた経典だから。
ゲーデルは真理だと直感で悟れる命題から壮大な数学世界を創り上げた人物らしい。