タランティーノの『パルプ・フィクション』でサミュエル・L・ジャクソン演じるジュールスがエゼキエル書25章17節を引用するシーンは、この引用自体が間違っているというおちがつくことを知って一層印象に残る。
この間違った引用によって、殺し屋ジュールスのまともな読書経験のない凄まじい殺し屋
稼業で必死に得た生きるすべが表現される。
ちなみにジュールスはつぎのように言う。
聖書を読むか?
いいや あまり…
暗記してる文句がある。
エゼキエル書25章17節
心正しい者の歩む道は
心悪しき者の利己と暴虐で阻まれる
愛と善意で暗黒の谷で弱きものを導く者に祝福を
彼こそ兄弟を守り 迷い子を救う者なり
私は怒りに満ちた懲罰をもって兄弟を滅ぼす者に復讐をなす
彼らに復讐をなす時 私が主である事を知るだろう
人を殺す時 おれはいつも この文句を聞かせた
よく意味は考えず―
殺す場にふさわしい冷血な文句に思えたからだ
今朝いろいろあって
初めて その意味を 真剣に考えた
貴様が心悪しき者で おれが正しい者
銃を構えてる そいつが―
悪の谷間で おれを守る羊飼い
あるいは貴様が心正しい者で おれが羊飼い
世の中が悪で利己的なのかも
そう考えてぇ
だが真実じゃねぇ
真実は―
貴様が弱き者
おれは“心悪しき者の暴虐”だ
だが努力はしてる
羊飼いになろうと一生懸命 努力してる
セリフを言う前に「旧約聖書のエゼキエル書25章17節」と引用元を言うが、これは間違った引用で、実際の25章17節に載っているのは最後の2行でしかも、その2行もあまり正確では無いという。
正確で無いことでこれほどの効果を生むことを他に知らない。