まさおレポート

映画「The reader」を観る

60型ディスプレイを購入してからよく映画を見るようになった。昨夜はThe Readerを観た。2008年の米独合作で、ベルンハルト・シュリンクの小説「朗読者」を映画化したもの。ケイト・ウィンスレットが好演している。

とにかく映像がきれいだ。主人公の少年が池で泳ぐところを上から撮った映像や、20年経った後にハンナの墓を訪れる丘の映像は見事だ。

例によって予備知識なく見だしたので、最初は15歳の男の子と36歳の女性の情事から始まり、そのエロティックさに見入っていたのだが、少年が「オデッセイ」や「子犬を連れた夫人」本を朗読するシーンがさかんに挿入されることにより薄汚い部屋での15歳という未成年と熟年女の、やや背徳性を帯びた映像が浄化されている。つまり見る側も物語の世界に引っ張り込まれている。

このあたりまでは、単にこの地味で暗い目をした女が単に読んでもらう事の好きな女だと思ってみているだけだ。二人が自転車でピクニックに行き、料理を頼むところでも、女はメニューには目を通さずに、少年に同じものをという。隣で小学生がメニューを見て盛んに笑っているのを見る女の目は、おやなんでと思うが作者の意図はまだわからないようになっている。

ある日、少年の前から女が姿を消す。その後ロースクールの学生として傍聴に行ったナチス親衛隊の裁判で、女が被告席に座っている。女は収用所の火事で300名の女性を閉じ込めて殺した罪に問われている。収用所の若い女を選んで、朗読させていたことも明らかになる。「私は収用されている300名をガードすることが任務で、それを忠実に実行したに過ぎない」と反論するが、決定的な証拠として、報告書を女が書いたかどうかが問題になり、被告席で筆跡を鑑定することになるが、女はそれを拒み、終身刑が決定する。

私はこのあたりでようやくこの女は字が書けないのではないかと思い出す。刑務所で元少年につたない字の手紙を書いた段階で、ようやくこの女が文盲であることがはっきりする。送られてくるテープと刑務所で借りた本(子犬を連れた奥さん)を突き合わせて文字を覚えていく。

終身刑が20年を経て釈放されることになるが、釈放を前にして女は読めるようになった本を何冊か踏み台にして首をつる。本を踏み台にしている女の足がクローズアップされる。

文盲を知られることを死ぬほど嫌った女が、文字を読めるようになってようやくナチス親衛隊時代に自己の犯した犯罪に自責の念にとらわれ、自殺すると解釈するのだろうか。知ることの苦しみ、特に罪悪感もなく自己の任務に忠実であっただけの下級兵士や親衛隊の戦争犯罪人の罪、少年が大人になった後の対応を描いて、男の自己保身と勘違いな罪滅ぼしなど、いろいろと印象深い映画だ。

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