すでに滞在を始めて2年になる。スミニャックに約1年、サヌールに約一年、いずれも賃貸ビラに住んでいる。静かなサヌールに住んでからはクタとスミニャックの喧騒が一層嫌いになった。特にあの歩道のガタガタ道のひどさと排気ガスの臭いには閉口する。しかしやはりクタからスミニャックのビーチは素晴らしい。夕方子供を連れて夕日が沈むころビーチで延々と続く砂浜を散歩をしたり、砂遊びをする。この素晴らしさはバリの楽しみでも最高のものだと思う。サヌールの海岸は波打ち際を歩くのには適していない。しかし、それを補うように長い舗道が続く。自転車で海岸線をサイクリングすることがクタの魅力にやや敵うが、時には物足りなくなる。
このサヌールのビラも契約期限が今年2月末で切れる。また新しいビラもいいかな、とそれとなく探してきたが、なかなか条件にあうものがない。あっても賃貸料金が折り合わない。バリの不動産屋は日本のように互いの店で紹介しあうシステムがまだ確立されていないようで、これまた効率が悪く料金が高めな感じを受ける。手数料は5%だと聞いたが店によっても異なる。滞在が長期にわたる利点を生かしていきおい面識のある日本人の紹介や自身で見つけた物件をオーナーに直接交渉することになる。
よく知り合いのバリ人やタクシーの運転手からも「安くてよい物件があるよ」と言われることがあるが、概してがっかりすることが多い。相当高額の物件か、あるいはちょっと老朽化しすぎで手入れの悪いもの、やたら美観を無視して継ぎ足し継ぎ足しのもの、日当たりが悪くなんとなくじめっとした感じのものなど時間とタクシー代を無駄にするような経験が多かった。自分たちが住まないので、正直ころあいの物件が理解できないのだと思うし無理からぬことだと思う。
物件のポイントはなんといっても環境で、周りの道路や小道が荒れているとまずい。周りが荒れていると警備上もよくないと感覚的に思う。それに我々特有の理由かもしれないが、自転車が唯一の足なので気軽に出かけるのに具合が悪い。この間もあるビラを下見に行ったがまわりのがたがた道がひどいぬかるみでそれを見たら「場末」というバリにはあまりふさわしくない言葉が頭に浮かんできて即座に下見をやめた。
次のポイントはビラの手入れでそれには屋根をチェックするとわかりやすい。瓦が老朽化して乱れていても手入れがしていない、時に落ちそうなものは論外だ。アランアランで葺いた藁ぶき屋根も手入れの悪いものは裂け目があったりして、雨季の豪雨時には雨漏りがする。雨漏りのする家は最悪で、一旦入居してしまうとこれはなかなか修繕が利かないので注意が必要だ。できれば豪雨の日にチェックするくらいの慎重さがよいと思う。
水質も要注意でこれは下見の段階では見逃しがちな点だ。いまでもかなりのビラが地下水を電動ポンプで汲み上げており、生活排水や下水が浸透している場合もあるので要注意だ。日本のように保険所がチェックをするということがない。ではどうしてチェックするか。検査キットを持ち歩くわけにはいかないのでまずは臭いを嗅いでみることである。問題のある水は少し臭い。そして問題のある水をシャワーで長く使っていると原因不明の痒みがでたりすることがある。また洗濯物がバクテリアのせいですぐ臭くなる。私もスミニャックで数か月痒みに苦しんだが多分水が原因だと考えている。できれば適当な価格で水質を検査してくれるところがあればいいのだが。だれかそんなサービスを始めてくれないかしらと思う。大腸菌などと重金属の何点かのチェックでとりあえずおおまかな検査ができるので。
ビラのオーナーの人柄も重要なポイントだ。契約書など一応の参考にしかならない。後でいろいろ文句をつけられても司法の十分な機能を期待できないこの国ではオーナーの人柄に期待するほかない。一旦問題がこの国の司法に委ねられるとまず勝ち目はないとある人から教えられた。では判断のポイントはと問われるとこれまた困ってしまうのだが、日本で判断する場合もそうだが相手の表情とか生活スタイルとかを直感で判断する以外に手はなさそうだ。しかしこればっかりは難しい。この間も自ら痛い目にあったばかりだから。
バリではデング熱が流行っている。滞在しているビラでも知った顔が4名もデングにかかっている。蚊は少しの水たまりでも好んで卵を産み孵化する。バリでは石の鉢に水を湛えてハスなどを浮かべ装飾とする。中に小魚が生息していれば魚がボウフラを食べてくれるが、そうでない場合はボウフラが所狭しと発生して恐るべき蚊の養殖場となる。つまりデングの基地となる。こんな蚊の養殖場のような鉢を無神経に置いてあるようなビラは避けたほうがよい。