海外事業の再編に始まり、NTTドコモの完全子会社化による新生NTTドコモグループの誕生、そして2023年7月には新生NTTデータグループがスタートしました。
NTTドコモグループは、NTTコミュニケーションズの法人事業を統合した総合ICT事業が成長軌道に乗り始めています。NTTデータグループも2023年4~6月期の連結売上高(国際会計基準)が1兆円の大台を突破し、長らく国内トップを維持してきた富士通を逆転しました。海外事業の構造改革を進め、さらなる成長に向けて形が整い始めています。
NTTはNTT法による業務範囲規制が及ばない分野において、ここ数年で組織再編を進め、成長への土台をつくった印象です。今回のNTT法見直し議論を契機に、いよいよ業務範囲規制があるNTT東西の課題に切り込もうとしているのではないかと思います。
減少続く固定電話、2035年に500万回線
榊原 NTT東西の光投資は10年以上前にピークアウトしており、2015年2月に始めた卸提供サービス「光コラボレーションモデル」でゲームチェンジを図りま
した。光の投資も販促費も減って営業利益が一気に拡大しましたが、光回線の純増はいよいよ頭打ちが近づいてきた印象です。それでも固定音声関連サービスの減収はじわじわと続くわけで、新領域の開拓で頑張るとしても今後は厳しいかもしれません。
堀越 確かにNTTグループのセグメント別の業績を見ても、不動産やエネルギーなどの新規事業分野を除くと、NTT東西のセグメントである「地域通信事業」の苦しさが目立ちます。2023年3月期の業績でも、他のセグメントが増収増益のところ、地域通信事業だけが減収減益でした。
2022年3月期は新型コロナウイルスの感染拡大で企業のリモートワーク投資という特需があり、その反動があったにせよ、この先のNTT東西の見通しは厳しいですね。光回線の伸びが止まりつつあり、NTT東西は回線サービス依存から脱却し、地域のデジタル化ビジネスに活路を見いだしています。
ただ、2023年3月期の固定音声関連サービスの減収はNTT東日本で315億円、NTT西日本で241億円に上ります。これだけの減収を取り戻す新ビジネスを生み出すのはなかなか難しいですね。
榊原 もっとも、2023年3月期の業績はNTT東日本が減収増益、NTT西日本が減収減益。売上高は1兆5000億~7000億円規模、営業利益はNTT東日本が2854億円、NTT西日本が1349億円なので、厳しいようには全く見えないかもしれませんね。
堀越 NTTは総務省の有識者会議が2023年9月12日に実施した公開ヒアリングでNTT東西の固定電話(加入電話とISDN)について、今後の回線数の見込みを示しました。2023年3月末の1354万回線に対し、2027年3月末には1000万回線を下回り、2035年ごろに500万回線、2045年ごろに230万回線まで減る見込みです。メタル設備による固定電話の赤字は2023年3月末時点で年300億円規模のところ、2036年3月期には年900億円規模まで拡大するとしています。NTT東西の経営環境が厳しくなるのは必至です。だとしたら、NTT法の見直しと併せてユニバーサルサービス制度の今後を議論し、NTT東西の重荷をなんとか軽くしたいと考えるのは当然でしょうね。
榊原 NTT東西はユニバーサルサービス制度で交付金による補てんを受けていますが、大幅な赤字を毎年垂れ流している状況です。2022年度のユニバーサルサービス収支はNTT東日本が約247億円の赤字、NTT西日本が約341億円の赤字でした。ユニバーサルサービスの責務を外してほしいというのが本音でしょう。競合他社もNTT東西にユニバーサルサービスを押し付けたがっていると思っていましたが、総務省有識者会議の公開ヒアリングでソフトバンクが「時代にそぐわない規律・政策」として、「電話の全国提供義務」を挙げていたのは驚きました。
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
---|---|---|---|---|---|
NTT東日本 | ▲172億円 | ▲240億円 | ▲230億円 | ▲226億円 | ▲247億円 |
NTT西日本 | ▲223億円 | ▲333億円 | ▲317億円 | ▲298億円 | ▲341億円 |
一方、NTTが公開ヒアリングで示した固定電話の回線数やメタル設備の赤字の見込みについては過去のトレンドを踏まえたものとしても、競合他社は「規制緩和狙い」と懐疑的に見てくるでしょうね。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02601/100400002/