知り合いのバリ人ワヤンが訪ねてくる。彼はバリに伝わるあるいは身近に見聞した興味深い話をときおりしてくれる。
その1 彼の母方の叔父さんが大変ハンサムで、そのために海の女神ロド・キドウルに恋されて結果海に入って死んだという話をする。彼の生前の話では、亡くなったハンサムな叔父さんの部屋に女神ロロ・キドウルがたびたび訪れたと言う。ある日の早朝3時にバイクでビーチに向かい、そのまま行方不明になったのだという。
ワヤンによるとロロ・キドウルがバリ・ビーチ・ホテルの一室(327号室)に祭られているのは有名だが、バドウンのホテルにもやはりロロ・キドウルが祭られた部屋があるのだという。それはしらなかった。さすがバリ人ワヤン、ディープに知っている。
その2 今日の深夜12時にスミニャックのセメタリー(墓地)でレヤック(バリの妖怪)の戦いが行われるという。なんだかハリーポッターのなかにでてきそうな話で、眉唾な話だなとの表情を浮かべて聞いていると、今日の午後9時にはワヤンの勤務するレストランも含めてスミニャックのレストランは全部店じまいをするという。ますます怪しい話だ。
レヤックが戦ってどうなるのと聞くと、空中で火花が散るのをみることができると言う。数年前にはサヌールのセメタリーで同様のことがあったという。5年に一回とか2年に一回とか、ランダムに起きると言う。それにしてもどうやってその日を知るのだろう。
その3 かつて滞在したスミニャックのビラのスタッフであるマデがそのビラを辞めてオーストラリア人のビラに移ったという消息話から、彼、マデのパパがまでが生まれて間もなくジャワ島に行ったきり帰ってこないという話になった。マデが生まれて間もなくパパはジャワ島に移りその後消息が無く、おばさんに育てられたとの話をマデ自身から聞いたことがあるので、ここまでは既知の話だ。ところがその話には続きがあった。
マデのパパはジャワ島の女性とジャワ島に行き、その後マジックをかけられて家族の記憶を消されたのだという、とんでもない話の続きがあったのだ。それは知らなかった。これまた本当かいなという顔をして聞いていると、ワヤンは両手で印を結ぶような怪しげな手の動きをして、こうやってマジックをかけるのだという。
女を妊娠させて別の女とジャワ島に逃げた、ひどい最低のくず野郎の話がバリ島ではマジックをかけられたという話になるのかもしれないし、あるいは本当にマジックかもしれない。