「わたしの好きな恋の歌」
短歌研究7月号の大井学の「わたしの好きな恋の歌」に注目した。大井学(かりん)は浜田到に傾倒しているらしい歌人。私も浜田到の作品に惹かれている。先ずは大井の作品を。
{ 新作 大井 学 }
★宿泊者氏名書くきみ姓の欄ブランクのまま 嘘ではないから
※夫婦でない二人が宿泊するとき、嗚呼わたしはそんな妖しくステキな経験がないまま、、、
★天井の木目の流紋きみのさす 「あのあたり」 そうだね天衣のようだ
※天井の木目を天女の衣のように見上げる、大井さん、あなたは画家ですね。
★あたたかきふたりの記憶純白にオコタンぺ湖は凍っていたこと
※これは詩ですね。分かち書きにしたいような、ゆっくり記憶に浸っていたいような。
㊟ 浜田到(1918~68)は内科医であり歌人であり詩人である。短歌研究の編集長として知られた中井英夫に見いだされ、短歌と詩の併走。深夜往診の際の交通事故により49歳で夭折。大井学は浜田到の歌集『架橋』から次の一首を抄出している。
★★あなたとの対話よりしづかに声だけを消せば海湛へくる空間があり 浜田到
「この歌は、恋が愛に変わる時だろうか。静謐な思いが美しい」 これは大井学さんのコメントです。 もやもやした青白い空間に置き去りにされている私。
6月27日 夕暮れになりました 松井多絵子