~ 男が見た妊娠 ~
本日☀朝日俳壇寸評は高柳克弘。1980年生まれの俳人。早大でロシア文学を専攻し、早大俳句研究会に入会。現在読売新聞夕刊土曜日のKODOMO俳句の選者として活躍している。今日朝日朝刊の高柳克弘の寸評は 「男が見た妊娠」である。
妊娠した妻に、おなかに赤ん坊がいるのはどんな感覚なのか、聞いてみた。「うーん・・・・ウナギがにょろっと動く感じかな」 から始まる寸評。高柳克弘は大きくなり始めた妻のおなかを見ていて、次の名句が頭に浮かんでくる。
♦ 吾妻かの三日月ほどの吾子胎(あこやど)すか 中村草田男
胎内の赤ん坊は、背中を丸めた姿をしている。それが三日月のイメージに重なってくる
のだ。ユニークな比喩の句だが、女性の実感からは遠いのかもしれない。
♦ 安々と海鼠(なまこ)の如き子を生めり 夏目漱石
「海鼠」とはひどいなあと思うが、突き放した喩えによって、かえって偽りのない喜びが伝わってくる。妊娠、出産に関わる俳句には、男性が作ったものが多い。自分にはけっして体験できないことだから、その謎を突きとめたいと思うのかもしれない。と高柳克弘は、、。
本日の朝日歌壇の松田梨子と中村桃子は彼を詠んでいる。もはや子供歌人ではなく、そのうちに彼女たちの妊娠の歌がこの欄に載るかもしれない。
< 高野公彦選 永田和宏選 >
✾ 夕焼けを二人で全部分け合ったテストが近い日の帰り道 (富山市) 松田梨子
✾ 秋空は君のようですさわやかで屈託なくてちょっとつめたい (名古屋) 中村桃子
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坐ることなきままに置く椅子の位置すでに現世になき人のため