・・・ あるきだす中家菜津子 ・・・
11月17日☀夕刊のあるきだす言葉たち は歌人・中家菜津子。3年前に未来短歌会の会員になったが詩人として活躍していたらしい、今年の6月にさっそく彼女の第一歌集を。
書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズ 『うずく、まる』を刊行。6月24日のこのブログですでに彼女の歌集を紹介している。「中家菜津子の短歌に私は翻弄されている」などと。次の4首は「あるきだす言葉たち」のなかの私の好きな作品である。
「ウィンター・カラー」 より
♦ 手をひろげ空を求めているときの踊り子に似た活け花の影
ステージで踊り終えたとき、踊り子が両手をあげまるで空を仰ぐようなポーズをしている。ライトを浴びている踊り子の影が活け花の影のようだ。光と影をうまく捉えている。
♦ 水曜の電車に揺れるうたた寝のからだは水の器のように
電車に坐り揺れながらうたた寝をしている、自分の体が「水の器」のようにおもえてくる。詩人だなぁ中家は。水曜と水の器はやや付き過ぎではないかと私は思うが、、。
♦ ユリシーズひらかぬままに蓮ひらく夢を見ている冬のまひるま
ユリシーズは、この歌の場合はアイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスの 『ユリシーズ』なのか。本を開かぬうちにうたた寝、夢のなかに蓮の花が開いている。愉しい1首だ。
♦ ペンの影てがみに落ちてあわく指すあなたの暮す西の方角
手紙ではなく「てがみ」 特に何かを知らせるのではないのだろう。ここでも作者は「影」にこだわる。あなたの暮す西の、、は日の沈む方角なのだろうか。
11月18日 松井多絵子
♥ 俳句情報・新刊句集
長谷川櫂句集 『沖縄』 青磁社
まんた泳ぐ太平洋の明易し
人魚らの歌聞きにこよ土用波