✿ 最後は 「ふたり」 ✿
11月20日号週間朝日広告~最後はみんな「おひとりさま」~男おひとりさま幸せ処方箋
(3食付きマンションで仲間をふやす) 11月24号 婦人公論広告は~50代からの夫婦、損しない選択 お金、病い、定年後の関係~、これらの広告は世相をよく反映している。中高年の女が3人寄れば夫への不満が話題。定年後の夫は特に嫌われている。しかし例外もある。某短歌結社誌の編集委員T子は定年後の夫が、パソコンの出来ない彼女をサポートしている、夫がいなかったら仕事ができないと彼女は言っていた。
歌集「天空の地図」を先月刊行した桂保子も、闘病中に夫に支えられ、夫を頼っていた。歌集のあとがきに、スポーツマンで健康そのものだった夫が、闘病十か月で世を去ってしまった。思い出すだに苦しい時間だった、、。と書いている。困っているときに力になってくれる人を誰だって大切にする。困っている時にさほど役に立たない夫や妻が「お一人さま」になるのではないか。「天空の地図」はそんなことを私に思わせる歌集である。
✿ 天空の地図 より七首
灯を消さば千の針降る はずはない ないが部屋の灯消し得ず眠る
助手席に居眠る時間が好きでした楽楽ららりら庇はれてきて
泣かないでほしいと今夜も言はれたりいちばん泣きたいだらうひとより
ああこんな日が来てしまつた斎場に音量わづかに<モルダウ>流る
天空ゆとどくメールのあらざれば空ゆく雲を仰ぐほかなし
いつ見ても書斎の椅子のからつぽに今朝は坐らす大きムーミン
乱雑に本を積み置く暗がりゆ低き声せりもうおやすみと
※ ながらみ書房・現代女性草書{3}桂保子「天空の地図」より
11月12日 松井多絵子