父、母への距離
本日の朝日歌壇入選歌には、父、母の日にちなんだような作品が目立つ。
<永田和宏選>
♥ 面会時間厳守とあるを言ひ訳に私も去るベッドの父を (水戸市) 檜山佳与子
病人の見舞いは難しい。病人に負担になるとは思いつつ義理で見舞う。「面会時間厳守」がむしろ病室を去る口実になる。「私も去る」は父への配慮であろう。
♥ 若い頃きっとゆれてたはずだけど母は私を理解できない (富山市) 松田梨子
高校生の梨子は母を見る目が厳しくなった。「母は私を理解できない」と反抗している。 「若い頃はママだってゆれてたはず」とは進学など今後の進路についてのことか、あるいは彼のことか、母に対して対等に構えている。娘の成長はママを不安にさせることも。
<高野公彦選>
♥ 座いすより立ち上るのを見守れば母は二分で「自立」を果たす (宇都宮) 鈴木孝雄
{選者評} 長~い二分間をはらはら見守る作者。
俳壇にもこんな入選句がある。
<金子兜太選>
♦ 父の日やさらに偉大な父の母 (所沢市) 小坂 進
短歌より更に小さな器のなかに父の母までおもう俳句の力に私は圧倒される。
7月4日 松井多絵子