オヤジと息子の語らう恋の歌 ②
佐佐木幸綱と頼綱の対談を聞いたのは10日前、今日は②を書く。頼綱の揚げた相聞歌40首のなかに俵万智の1首がある。彼より17歳も年上、「心の花」の大先輩である。
♦ 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 俵万智
「サラダ記念日」がベストセラーになったのは30年も前である。しかも「サラダ」はいまだに新鮮だ。明日は7月6日、サラダ記念日である。幸綱氏は「7月6日がよかったんだね。7月7日だったら七夕だ」 頼綱は俵さんから聞いたのですが「サラダ記念日」ははじめ カレー味の「焼肉記念日」とか、私もかなり前にそんな記事を読んだことがある。もし「焼肉記念日」だったらベストセラーになっただろうか。「サラダ」という瑞々しいイメージが若い人びとに短歌を読ませ、詠ませるようになったのであろう。
♦ あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ 小野茂樹
頼綱の好きなこの相聞歌、私も気になる歌だ。幸綱氏はわかりにくさで生きている歌かと。
♦ きみに逢う以前のぼくに遭いたくて海へのバスに揺られていたり 永田和宏
「この歌のどこがいいのかね」と幸綱が訊く。「自分も大切だという距離感だ」と頼綱。
♦ なめらかな肌だったっけ若草の妻ときめてたかもしれぬ掌は 佐佐木幸綱
息子がらこの歌が好きだと言われパパ幸綱はテレる。「若草のは枕詞だよ」と。
♦ 空港で手を振り終えてしばし居て以降しずかな冬がはじまる 佐佐木頼綱
昨年結婚した頼綱、その妻はいま異国にいる。留学中とか、どのような妻か私には謎で終わった講座、でもたのしい1時間半だった。伝統ある短歌結社「心の花」を継ぐ佐佐木頼綱が気さくなプリンスなのがうれしい。サラダがお好きな方だろう。
7月5日 松井多絵子