植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

また「墓碑銘」の時期になった

2021年11月16日 | 雑感
 この時期になると「今年亡くなった人」のことがテレビに流れるようになります。日本の季節から言うと、秋から増え始め真冬をピークに2.3月頃から減少するようです。年寄りにとっては寒さが禁物なのですかね。

 最近亡くなった女性では、細木数子さんと瀬戸内寂聴さんです。昭和から令和にかけて、芸能界や文壇などで目立ったお二人です。瀬戸内さんは、まだ晴美さんだった頃、女性の性愛を赤裸々に表現した小説を書くことで知られましたが、センセーショナルな作品と夫のある不倫などのスキャンダラスな性生活のおかげで、若くして出家しました。それ以降は出筆活動と僧職の半生で、むしろ人生相談などある種ヒューマニストとしての存在感を発揮していました。

 ワタシは、かなりの読書家でありましたが、この人の代表作と言ってもピンとこないし、その著作を読んだ記憶があまりありません。生前語った言葉に「ワタシが出家したのは小説を書くため」というのが印象に残りました。普通は衆生を救うとか、自身の信条から仏門に入ったと言いそうですが、恋愛も含めて欲にも正直な方であったんだろうと思います。好きな人が出来たら奥さんがいても構わない、好きな食べ物はステーキでもなんでもよく召し上がったそうです。

 細木さんは、大殺界とか言って一世を風靡した占い師でした。お父さんは政治家にコネクションがあり暴力団とも親交があったと聞きますが、昭和の前半などは混然とした世相で、政治家も堅気も商売人も垣根が低い時代でした。その頃にカフェや高島易断 の看板を掲げていたその父の姿を見て、数子さんも同じような道を辿ったのですね。売春宿まがいのカフェや旅館を営み二十代で銀座に店を持つなどの商才に恵まれています。
 
 占いや占星術なるものを頭から信じられない性分のワタシとしては、「アンタ、再来年は天中殺よ」と言われてもなんの感慨もわかないだろうと思いますが、テレビではさも預言者の様に振舞い、信じられない高い値段で占い料を貰えたようです。

 しかし、この人が口先で適当に人生相談や占いに応じていたかというとさにあらず、とてもよく勉強や情報収集を行い人の観察術を心得ていたと思いますね。有名人を前に占う時、相手が驚くように過去の行状や出来事を言い当てるのは、事前に詳しく調べ上げ相手の性格を分析できたからだと思います。「よく当たる」と人気のでる占い師の共通点はそこ、雑談し、名前や風体など限られた情報から目の前の客の悩み事を予想するのが秘訣です。そして、「あなたのまわりに水の流れが見える」といった誰にでも合致するキーワードを言い、勝手に客が思い当たるような気持ちにさせるのです。

 自分のことを信用すれば後は簡単、どう行動すればいいかは人生経験豊かな人なら、当たり障りのないことを言うだけですし、何年後に結婚できるなんてことはそのうちみんな忘れてしまいます。当たらぬも八卦であります。

 霊感商法でだいぶあくどく稼いだようです。人の悩みに乗じて、時には怖がらせることで大きな富を築いた細木さんも、お父さん同様暴力団との関係が取りざたされ、だいぶ前に表舞台からぷっつり姿を消してしまいました。島倉千代子さんの借金の肩代わりから取り入って、ずいぶん島倉さんの稼ぎをかすめ取ったとも言われます。あんた地獄に落ちるわよ、と言い放っていたご当人は今どちらに行くのでしょうか。

 もう一人少し前に亡くなった女帝がメリー喜多川さんです。享年93歳、3年前に亡くなったジャニー喜多川のお姉さんです。ジャニーさんの特殊な性癖で築かれた少年達芸能人の一団を率い、昭和の後期から芸能界の中心に位置したジャニーズのもう一人のリーダーでした。ジャニーズ事務所では、ジャニーさんによって踏みにじられ芸能界を追いだされた若者も多く、逆鱗に触れて出入り禁止になることを恐れたマスコミ・芸能関係者は喜多川さんの性癖にふれるのがタブーであったのです。メリーさんもそれを知らぬはずも無いのですが、周りの人間を奴隷のように扱うという姿勢は変わらなかったようです。

 どんなに権勢をふるい、巨万の富を得て周りの人間を睥睨出来たとしても、死には抗えません。いずれお迎えが来ます。あとは忘れ去られるだけであります。
「無名の人たちがいたおかげで、今の世の中がひどくならずに済んでいる」という何かの映画で見た言葉が頭に残って離れません。

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