ジェニファー・グランホルム女史
ヨーロッパのエネルギー事情に触れる前に、ひとつ言い忘れたことがあります。
それは、売電政権のカーボン・フリー政策を推進する中心人物についてです。
カーボン・フリー政策を推進する中心人物は、ジョン・ケリー気候変動特使です。そうして、売電政権の最高目標は二酸化炭素排出削減であることを考えれば、この目標を追求する中心人物であるケリー特使の権限は絶大です。それゆえ藤井氏によれば、ケリー特使は実質的な意味で「影の大統領」であるといえるでしょう。
さらに、ケリー特使は、かつてのオバマ政権の国務大臣でした。オバマの懐刀だったのです。そのことを考えれば、オバマ元大統領こそが、影の大統領ケリーが自分の意思を体現するという意味で売電政権の真の大統領である、となるでしょう。アメリカは、「オバマ院政」の時代に突入したのです。
もうひとり。売電政権のエネルギー省長官に就任したジェニファー・グランホルム女史(62)は、2003年から2011年の間ミシガン州の知事を二期務めた人物です。その前は、ミシガン州の司法長官を務めていました。女史は、ミシガン州の自動車産業を没落させることでのし上がりました。ことさらに二酸化炭素規制に熱心で、その分、理の当然として、内燃機関を使った自動車産業にことさらに敵対的なのです。アメリカ自動車産業は、このような「カーボン・フリー」の推進者たちに苛め抜かれて凋落してきたのです。
ここから、ヨーロッパのエネルギー事情に移ります。
2019年12月1日からEUの欧州委員会の委員長を務めているウルズラ・フォン・デア・ライエン女史(62)も、パリ協定支持のカーボン・フリー推進派の政治家です。
欧州委員会の委員長は、EUを巨大な一国とみなせば、首相に相当する重要なポストです。女史は、委員長に就任するまでは、ドイツの国防大臣を務めていました。当時の女史は、タックスヘイブンのルクセンブルクを擁護し、パリ協定支持の親原発派でした。
ちなみに、フォン委員長の前任者は、タックスヘイブン立国ルクセンブルクの首相を16年間務めていたユンケル氏でした。
藤井氏によれば、フォン委員長や先ほどのジェニファー米エネルギー省長官が目指しているのは、カーボン・フリーという名の原発大復活の世界です。彼らは、電気自動車100%、自動車産業壊滅、安定した電力供給のできない再生エネルギー発電の破棄、原発100%という世界を目指している、と。
それに対して、ドイツの自動車業界は、ガソリン車とディーゼル車をできるだけ長く使えるようにするための広告キャンペーンを開始しました。欧州委員会主導のカーボン・フリー大合唱に、遅ればせながら、異議申し立て・反撃を開始したのです。欧州委員会は、自動車とトラックを対象とした、より厳格な排気ガス規制を実現する「Euro7」を推進しようとしています。それに対して、ドイツの自動車業界は、そんなことをすればドイツ最大の産業を解体することになると警告しています。
いまのヨーロッパは、カーボン・フリーをめぐる、そのようなせめぎあいの渦中にあるのです。それは、言葉をかえれば、原発復活派と脱原発派のせめぎあいです。
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