美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その16)

2019年07月23日 23時28分33秒 | 経済

財務省は、国税庁を通じて、税金=財政支出の財源という間違った税金観を学校教育にも広めています。

*税金論をさらに深堀しています。

次のことは、心にとどめておいてください。すなわち、徴税をめぐって政府がするすべての背後にある公的な目的は、公的インフラを供給することである、ということを。公的インフラには、軍事・法制・議会・政府の行政部門などが含まれます。だから、公的インフラには、最も保守的な投票者でさえもが政府にさせようとすることがらがたくさんあります。

それゆえ私は、税金を次のように見ます。すなわち、私たちが推定するところの財政支出の“正しい”額は、私たちができればそうあってほしいと思っているやり方で国家を運営するのに必要なのだから、税額はどれくらいであるべきなのか、と。私が税金をこのように見るのは、“財政支出の正しい額”なるものは、適切に理解するならば、政府財政とは何の関係のない経済政策の意思決定によるものであるからです。

*「政府財政とは何の関係のない経済政策の意思決定」という文言のなかの「政府財政」(government finance)とは、おそらく、経済政策の実施に伴う財政支出の補填のための徴税、いいかえれば、財政支出の財源としての税金という考え方を指しているものと思われます。

政府が政策を実行するうえでの本当の“コスト”とは、政府が消費する現実の財やサービス、すなわち、労働時間の総体や燃料や電気や鉄鋼やハードディスクなどです。これらは、政府が消費しなければ、民間部門に役立てられたはずのものです。だから政府が、政府自身の目的のために、それらの現実の経済的諸資源を動員するとき、民間部門には、より少なくなった経済的諸資源が残されることになります。

*「経済的諸資源」は、resources の訳です。先日来日したステファニー・ケルトン教授がしきりに「resource」と言っているのが印象的でした。MMTの重要な概念のひとつと見て間違いないでしょう。

たとえば、防衛のために十分な数の兵士を備えた“正しい規模の”軍隊の現実のコストは、食物を育てたり、車を作ったり、医療部門や看護部門に従事したり、会社経営をしたり、私たちに株や不動産などを売ったり、私たちの家に色を塗ったり、芝生を刈ったり、なんたり、かんたりする労働力がその分少なくなるということです。

それゆえ、私の見方によれば、私たちは、“財政支出の補填”への慮(おもんぱか)りではなくて、現実の便益と現実のコストに基づいて、公的インフラの“正しい”水準で政府の大きさを最初に設定します。通貨システムは、私たちが自分たちの現実の経済的政治的目標を達成するために使う道具であって、経済的政治的な目標が何なのかという疑問についての情報の源泉なのではありません。正しい大きさの政府を持つために私たちが何を支出する必要があるのかを決めた後、私たちみんなは政府がそれ自身の買い物をしてから例の“デパート”で売っているものを買うのに十分な購買力を持つように課税額を調整するのです。

ざっくりと言えば、私は、税金は財政支出よりかなり少ないほうが良いと思っています。その理由はこれまでもいくつか述べましたが、後でもっと踏み込んで述べましょう。事実として、GDPの5%を占める財政赤字は、ノルマであることが判明しました。そうしてその年額は、約7兆5千万ドルです。しかしながら、その数字自体は、経済的に大したことではありません。それは、経済環境次第で、額が増えたり減ったりしうるのです。徴税の目的は、経済全体の均衡を図り、経済状況が過熱気味になったり冷え込んだりしないことを確かめることである、という点が重要なのです。私たちが望む政府の大きさと範囲を与えられたうえで、連邦政府の財政支出は、この正しい額に設定されます。

そのことは、経済を下降状況から救い出すために、私たちは政府の規模を大きくすべきでは“ない”ことを意味します。私たちは、すでに政府の正しい規模を決めているのですから、経済が下降気味になるたびに、その規模を大きくする必要がありません。だから、景気の下降局面で財政支出をすることは、実際には、数字を増やすことになり、不景気を終わらせるのでしょうが、私にしてみれば、それよりも、十分に効果的なところまで適正な減税をして、望ましいところまで民間部門の支出の回復を図るほうが望ましいと思っています。

*このあたり、自説をケインズ政策的な「大きな政府」と一線を画す意図が感じられます。
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MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その15)

2019年07月21日 22時22分11秒 | 経済

税金の本質から見てありえない議論がまかり通り、自公が参議院選挙で圧勝さえしている。それが日本の現状です。自滅への道をまっしぐらです。

*税金の本質についての議論が続きます。

次に述べるのは、単なる理論的概念ではありません。それは、まさに1800年代のアフリカで起こったことです。そこは大英帝国の植民地で、農作物を育てることを目論んでいました。大英帝国は、植民地の人々に仕事を提供しました。しかしだれも大英帝国の硬貨を稼ぐことに関心を示しませんでした。そこで大英帝国は、すべての人々の住居に、大英帝国の通貨による支払いのみOKの“小屋税”を課しました。その地域は、“貨幣化”され、人々は大英帝国の硬貨を必要とするようになり、それを手にするために労働力や売り物を提供するようになりました。

*「貨幣化」は、monetizeの訳です。一般的には、事業から収益が得られる仕組みを作ることを意味します。ここでは人々が、納税手段である大英帝国硬貨をゲットするために商売をし始めた事態全般を指しているように思われます。

大英帝国は、人々を雇い、大英帝国の硬貨で賃金を支払えるようになりました。その結果人々は、農場で働き作物を育てるようになりました。

これは、例の両親が、子どもたちにお手伝いをさせることによって、彼らから労働時間をゲットしているのとまったく同じです。これは、アメリカドルや日本の円やイギリスのポンドなどのような“不換通貨”と呼ばれるものがうまく働いている仕組みとまったく同じです(金本位制や固定相場制での通貨はこの限りではありませんよ)。

いまや私たちは、違った切り口から税金の役割を考察する準備が整いました。経済学の言葉を使っての、今日の経済における税金の役割を考察する準備が、です。学識のある、今日の経済学者なら“税金の役割は、総需要を減少させることである”というでしょう。“総需要”という彼らの用語は、“購買力”をちょっとだけ大げさにしたものです。

政府は、私たちに課税し、たった一つの理由のために私たちからお金を奪います。納税によって、私たちの購買力はその分だけ落ち、通貨はその分だけ希少性を増し価値が高まります。私たちのお金を奪い去ることによって、政府は、インフレを起こすことなしに財政支出する余地を与えられるというふうにも考えることができます。

*どうしても一言申し上げたくなりました。インフレが起こりそうなときではなくて20年以上続いているデフレ下において、日本政府は「インフレを起こすことなしに財政支出する余地を与えられる」消費増税を実施しようとしています。つまり政府は、デフレ下でインフレが起こることを先回りして心配しデフレのさらなる延長を画策していることになります。この意味でも、消費増税10%実施がいかに馬鹿げた政治判断であるか分かります。この馬鹿げた政治判断の根にあるのは、「税金は、財政支出の財源である」という陋習のような税金思想です。

経済なるものを、私たちが毎年生産し売り物として提供するすべての品物とサービスで満たされた、ひとつの大きなデパートとして考えてみてください。私たちは、そのデパートであらゆるものを買うのに十分なだけ賃金や利益を得ていて、それらをすべて使い果たすと仮定しましょう(もし私たちが借りてでも消費するなら、私たちはそのデパートにあるより多くの物を買うことさえできます)。しかしもしも私たちのお金のいく分かが納税に使われたならば、私たちは、そのデパートで売られているすべてのモノを買うのに必要とする購買力の不足に直面します。その事態によって、政府はほしいと思うものに支出する余地を与えられます。で、財政支出と私たちの支出との合計は、そのデパートで売られているものを超えないことになります。

*つまり徴税は、一国の購買力(需要)が全リソースのフル活用状態(生産能力)を過度に超えてインフレが生じないようにする手立てである、ということです。

しかしながら、財政支出と比較して、政府が課税しすぎたなら、支出の合計が、そのデパートが売っている品々を「確かめる」ほど十分ではなくなります。

*「確かめる」の原語は、make sure です。それ以外、とりあえず訳しようがないので、そう訳しました。買おうかどうか具体的に検討する、というニュアンスなのではないかと思われます。「日本語としての自然さを優先する意訳」を方針としている本稿ではありますが、おのずと限度があることは承知しております。

企業が自分たちの生産したものすべてを売ることがかなわないとき、人々は職を失い、支出するためのお金が減ります。それゆえ売り上げは減ります。人々が職を失えば失うほど、経済状況は、私たちが不況と呼ぶところの下方スパイラルに突入します。

*要するに、デフレを招くような増税は最悪だ、と言っているわけです。
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MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その14)

2019年07月19日 21時32分38秒 | 経済

財務省は、「税金は財政支出の財源である」という間違った税金観によって日本を衰退に追い込んでいます。

*自国通貨を発行している政府にとって、財政支出が、支払い能力の限界に突き当たることはないことと、経済活動全般における税の必要性についての議論が展開されます。

事実は、以下のとおりです。すなわち、財政赤字が政府の不払いをもたらすことは決してありえない。支払い能力の問題はまったくない。財政支出が、FRBにある市中銀行の口座の数字を高めるとき、政府のお金が尽きるなどという事態は起こらないのです。

*「財政支出が、FRBにある市中銀行の口座の数字を高める」という箇所がもしかしたら読み手によっては腑に落ちないかもしれません。中野剛志氏がよく使う図を使って説明をしておきましょう。



日本の場合、アメリカのFRBに当たるのは日銀で、「FRBにある市中銀行の口座」は「日銀当座預金」です。また、話を分かりやすくするために①の国債を購入した市中銀行と③の政府小切手を受け入れた市中銀行が同じだとしましょう。

① 市中銀行Aは、日銀に設けられた日銀当座預金を通じて国債を購入しています。その分、市中銀行Aの日銀当座預金は減り、政府の日銀当座預金は増えます。
② 政府は、公共事業を請け負った企業に、政府小切手によって代金を支払います。
③ 請負企業は、政府小切手を自己の取引銀行Aに持ち込み、代金の取り立てを依頼します。
④ 取り立てを依頼された市中銀行Aは、依頼相当額を請負企業の口座に記帳します(ここで新たな民間預金という名のお金が生まれます)。と同時に、代金の取り立てを日本銀行に依頼します。
⑤ この結果、政府保有の①で増えた分の日銀当座預金が減り、市中銀行Aの日銀当座預金が増えます。
*「財政支出が、FRBにある市中銀行の口座の数字を高める」というのは、この局面をとらえた言葉であると思われます。つまりモスラ―の場合、②から話を始めているのです。
⑥市中銀行Aは、戻ってきた日銀当座預金で再び新発行国債を購入することができるようになります。

*注意したいのは、この財政支出プロセスには民間貯蓄はまったく介在していないこと、すなわち、民間貯蓄をまったく減らしていないこと、のみならず、財政支出額分の民間貯蓄をむしろ増やしていること、の三点です。つまり、財政赤字の増大によって民間資金が不足し、金利が上昇することなどありえない、ということです。それゆえ、財政支出に資金的な制約はない、という結論になるのです。

家計や企業やさらには州政府でさえも、小切手を切るときには、銀行口座にドルを持っていることが必要なのはたしかなことです。さもないと、不渡りになってしまいますからね。それは、彼らが使うドルが連邦政府によってつくられるからです。つまり、家計や企業や州政府は、ドルのスコアキーパーではないのです。

連邦政府は、なぜ課税するのか

もし、連邦政府が支出するのに実際のところ何も得ることはないし、得る必要もないのだとすれば(すなわち、財政支出の財源を捻出する必要がないのだとすれば)、政府はなぜ私たちから徴税するのでしょうか(ヒント:例のクーポン発行の両親が、実はクーポンを発行するために何も必要としないのに、子どもたちに週あたり10クーポンを要求するのと同じ理由です)。

連邦政府が私たちから徴税するとても良い理由があります。税金は、経済活動のなかに、ドルを得る継続的な必要性を作りだすのです。それゆえ、人々がドルを得るために、彼らの財やサービスや労働力を売る継続的な必要性を作り出すのです。場所に対する納税義務によって、政府は、そういう義務がなければ価値がないドルで品々を購入します。というのは、納税するのにだれかがドルを必要とするからです。それは、子どもたちへのクーポン税が、クーポンに対する継続的な必要性を作り出すのと同じことです。そのクーポンは、両親のために家事をすることによって稼がれるのです。

固定資産税を考えてみてください(あなたは、所得税について考える用意ができていないでしょう。固定資産税と結局は同じ結論に至るのですが。しかし所得税は、固定資産税よりも間接的で複雑なのです)。あなたは、ドルで固定資産税を支払わなくてはなりません。さもないとあなたは家を失うことになります。それは、例の子どもたちの状況と同じですね。なぜなら、彼らは10クーポンをゲットしなくてはならないからです。さもないと、ゆゆしき事態に直面することになりますからね。だからあなたは、積極的にモノを、すなわち、財やサービスやあなた自身の労働力を売ろうとします。必要とするドルを得るために。それは、例の子どもたちが、必要とするクーポンを得るために積極的にお手伝いをしようとするのと同じです。

とうとう私は、納税するためにドルを必要とする人々と売ったり買ったりするためにドルを欲しがったり使ったりする人全員とを結びつけなければならなくなりました。

*税を経済活動全般との関連で考察する必要がある、と言っているのでしょう。

それをするために、“クラウン”という名の新しい通貨を持った新しい国家の例に戻りましょう。その政府は、固定資産税を課します。政府は、当税金を軍隊を立ち上げるために課し、兵士たちに給料を“クラウン”で支払うと仮定しましょう。固定資産を持つ多くの人々は、突然、クラウンを手にする必要が生じますが、彼らの多くは、兵士としてのサービスを提供することによって政府から直接クラウンを手にすることをどうしても望まないとしましょう。だから彼らは、売るために品物やサービスを提供し始め、それらと、彼らが必要とし欲しがってもいるクラウンとを交換します。彼らは、従軍することなしにこれらのクラウンを手に入れることを望んでいます。ほかの人々は、いまやわが物にしたいと思うようなたくさんの売り物を目にします。すなわち、鶏肉やコーンや衣類や床屋・医療サービスなどのあらゆる種類のサービスを。これらの品物やサービスの売り手たちは、彼らが納税しなければならないお金を得るために軍隊に入ることを避けてクラウンを受け取りたいと思っています。これらの品々がクラウンと交換するために売り物として提供されているという事実によって、ほかの人々は、それらの品物やサービスを買うのに必要なお金を得るために軍に入らざるをえなくなります。

実際、政府が欲しがっている兵士の人数まで人々が軍に入ることを促されるように物価は調整されます。なぜならそうなるまで、政府の支出によって、納税者が全額を納税できるほど十分にクラウンが発行されないからです。軍隊には行きたくないと思っていてしかもクラウンを必要とする人々は、売れるようになるところまで彼らの売り物の価格を下げざるをえなくなります。それが嫌なら、軍隊に入るしかありません。

*上記は、お金の発行額が少ないと、物価が下がる、すなわちデフレになるという経済学の常識とも符合します。

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第4回 交観会BUNSO 無事に終了しました(その3) 昭和史の書き換えについて

2019年07月18日 21時25分07秒 | 歴史

レーニンとスターリン

③レポーター村田一 小堀圭一郎/中西輝政『歴史の書き換えが始まった!~コミンテルンと昭和史の真相』(明成社)

*本書で指摘されているように、昭和史の(控えめに言っても)大幅な書き換えが必要であることを指し示す海外の最新の文献・文書がぞくぞくと登場しています(平成十九年当時)。「海外の最新の文献・文書」とは以下のとおりです。なお、記述の骨格は本書から借りていますが、適宜編集・加工してあります。

『ミトロヒン文書』(2005年刊。ミトロヒン、クリストファー・アンドリュウ共著、本邦未訳) 旧ソ連のKGB対外情報局文書課長ミトロヒンはKGB本部の機密文書を大量に持ち出した。それには欧米、アジアへのKGBの工作活動が活写されている。冷戦期の日本においてもKGBの工作によって、多くの日本の政治家や官僚、マスメディアが国益に反するような行動に従事していたことが、実名やコードネームで紹介されている。具体例をWikipediaから引用すると以下のとおりである。

日本に対する諜報活動は2005年に出版されたMitrokhin Archives IIに「JAPAN」としてまとめられている。
同文書には朝日新聞など大手新聞社を使っての日本国内の世論誘導は「極めて容易であった」とされている

政界等に対する工作
その中でKGBは日本社会党、日本共産党また外務省へ直接的支援を行ってきたことが記されている。
他にこの文書内で
日本社会党以外でKGBに関与した政治家の中で、最も有力なのは石田博英(暗号名「HOOVER」)であった。
とされている。

大手メディアに対する工作

新聞社等スパイによる世論工作
ミトロヒン文書によると、『日本人は世界で最も熱心に新聞を読む国民性』とされており、『中央部はセンター日本社会党の機関誌で発表するよりも、主要新聞で発表する方がインパクトが大きいと考えていた』とされている。そのため、日本の大手主要新聞への諜報活動が世論工作に利用された
冷戦のさなかの1970年代、KGBは日本の大手新聞社内部にも工作員を潜入させていたことが記されている。文書内で少なくとも5人は名前が挙がっている。

1. 朝日新聞の社員、暗号名「BLYUM」
2. 読売新聞の社員、暗号名「SEMYON」
3. 産経新聞の社員、暗号名「KARL(またはKARLOV)」
4. 東京新聞の社員、暗号名「FUDZIE」
5. 日本の主要紙(社名不詳)の政治部の上席記者、暗号名「ODEKI」
中でも朝日新聞社の「BLYUM」については
「日本の最大手の新聞、朝日新聞にはKGBが大きな影響力を持っている」
としるされている。

1972年の秋までには、東京の「LINE PR」(内部諜報組織)の駐在員は31人のエージェントを抱え、24件の秘密保持契約を締結していた。特に日本人には世界で最も熱心に新聞を読む国民性があり、KGBが偽の統計情報等を新聞に流すことにより、中央部はソビエトの政治的リーダーシップに対する印象を植え付けようとした。」
とあり、日本の主要メディアに数十人クラスの工作員を抱えていたことが記されている。
工作員となった新聞社員のミッションは『日本国民のソ連に対する国民意識を肯定化しよう』とするものであった。例えば、日本の漁船が拿捕され、人質が解放されるとき、それが明白に不当な拿捕であったのにもかかわらず朝日新聞は
「ソ連は本日、ソビエト領海違反の疑いで拘束された日本人漁師49人全員を解放する、と発表した」
と肯定的な報道をさせた、とされている。朝日新聞だけでなく保守系と目される産経新聞にもその工作は及んでいた
最も重要であったのは、保守系の日刊紙、産経新聞の編集局次長で顧問であった山根卓二(暗号名「KANT」)である。レフチェンコ氏によると、山根氏は巧みに反ソビエトや反中国のナショナリズムに対して親ソビエト思想を隠しながら、東京の駐在員に対して強い影響を与えるエージェントであった。」

一般人の工作員化
上記のような大手メディアの工作員は一般人である。それを工作員化する方法については
メディアに属するKGBのエージェントの殆どは、主に動機が金目当てだったであろう。」
と記されている。またその他に、ソ連訪問中にKGBに罠にかけられて工作員になる者もいた。読売新聞社の「SEMYON」はモスクワ訪問中に『不名誉な資料に基づいて採用された。それは闇市場での通貨両替と、不道徳な行動(ハニートラップ)であった』と書かれている

『マオ』(ユン・チャン、ジョン・ハリディ共著。邦訳は『マオ―誰も知らなかった毛沢東』、2005年、講談社)
毛沢東が中華人民共和国建国の「英雄」であるという神話を綿密な取材と研究によって打ち砕き、残忍で執念深い独裁者という実像を浮かび上がらせた書。のみならず、日本にとって切実なのは、『GRU帝国』などの機密資料に基づいて従来の昭和史を根底から揺るがすような新発見、核心に触れた記述が多いことである。例えば、1928年の張作霖爆殺事件が実はスターリンの命令を受けたナウム・エイティンゴンが計画し、日本軍の仕業に見せかけたものだったことや、中国共産党の秘密党員であった張治中がスターリンの指令によって蒋介石の方針に反して、日中を全面戦争に引き擦りこむために第二次上海事変(1937・8月)を引き起こしたことなどが記されている。

*当方、かつて本書を読書会で扱ったことがあり、その精読を通じて、毛沢東神話から100%脱却できた、という体験を有しております。

●『GRU帝国』(アレキサンドル・コルパキディ、ドミトリー・プロコロフ共著、本邦未訳)
GRUとは旧ソ連赤軍参謀本部情報総局のこと。リヒャルト・ゾルゲもこの機関の諜報工作員であった。同局は、ソ連が崩壊した後も存続し、現存する。GRU文書そのものは、プーチン政権時代になってアクセスが難しくなりつつあるとの由。

●『ベェノナ文書』(VENONA)
アメリカ陸軍省内の特殊情報部が、1943年以降、極秘裏に解読してきたソ連情報部暗号の読解内容を、1995年から公開、その文書を指す。解読作業はカーター・クラーク将軍が大統領にも秘密で始めたプロジェクトだったが、そこには、第二次世界大戦の戦前戦中そして戦後、アメリカ政府の中枢にいかに深くソ連の工作活動が浸透していたかが明かされている。例えばルーズベルト政権では、常勤スタッフだけで二百数十名、正規職員以外で三百人近くのソ連の工作員あるいはスパイやエージェントがいたとされる。

*GHQ内のソ連のスパイのなかで有名なのは、ハーバート・ノーマンでしょう。中西氏は小堀氏との対談のなかで多くのページをノーマンの記述に割いています。その要点を箇条書きにしましょう。

・GHQによる初期の占領政策が突出して左派的な傾向を示したのは、GHQ内に急進的ニューディーラーが多くいたからというのがこれまでの通説だったが、べェノナ文書の精査によって、彼らはニューディーラーなどではなくて、コミンテルンあるいは本格的なスパイ・工作員であることが分かってきた。

・少なくとも昭和二十三年までのGHQは、「コミンテルン・コネクション」の人々がその大半を動かしたが、そのなかで、ハーバート・ノーマンの存在が際立っている。

・ノーマンは、日本生まれのカナダ人。戦前のイギリス留学時代にコミンテルンに加入し、カナダ外務省に秘密工作員として入り、戦後、後にマッカーシズムで逆風にさらされたラティモアの強い推薦によりマッカーサーの特別の信頼を得てGHQの一員として来日。

・昭和二十年九月に来日したノーマンが最初にやったのは、アメリカ共産党の秘密党員だった都留重人との接触を再開し、都留といっしょに鈴木安蔵というマルクス主義憲法学者を探し出し、「憲法研究会」を作らせたこと。

・鈴木安蔵と憲法研究会自体が、ノーマンによってオーガナイズされたコミンテルンの工作組織の一端だった。そうして、鈴木らの草案を元にしてケーディスたちが現行の日本国憲法の最終案を作っただけ。

・ノーマンが終始重視したのが、憲法第一条だった。憲法一条の「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって」まではGHQのすなわちアメリカの案。その後の「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」という文言は、極東委員会の修正案である。ソ連の意を受けて極東委員会に行動を促したのがノーマンだった。

・「国民の総意」を口実に、いつでも天皇制を廃止できるようにしておく、というのが一九二〇年代以来のスターリンの対日戦略だった。

・その意味で現行の日本国憲法は「GHQ憲法」というより「コミンテルン憲法」と称するほうが適切である。

*「マッカーシズムは、集団的ヒステリーであり、思想的魔女狩り運動であった」というのが少なくとも日本では通説であるものと思われますが、本書によれば、マッカーシズムの評価は次のようになります。

マッカーシーが依拠していた「ヴェノナ文書」が公開されたことにより、その正しさが証明された。

*ではなぜ、当時のマッカーシーが自説の正しさを証明できず、孤立し敗れ去ったのでしょうか。

(中西)ヴェノナを解読していた米陸軍の超秘密暗号解読機関、そこからFBIに流れた情報をマッカーシーは情報源にしていた。だから正しいのは当たり前なんですね。アメリカにいるソ連のスパイがモスクワに出しているルーズベルト無電を傍受解読した資料です。(中略)しかし、それをもしも公開したらアメリカは冷戦を戦えない。ソ連側に(ソ連が——引用者補)暗号を解読されている事実が分かってしまうわけですから。ですからマッカーシーを犠牲にしてまでも——というのはマッカーシーは「証拠はあるのか」と問いつめられてその証拠が出せないから失脚するわけですが、その証拠を出さない、という決断をしたのは、アメリカの情報部当局だった。あそこまでやったらもう充分という判断だったんでしょうね。

*このあたりで本書の紹介を終えようと思いますが、「陰謀論」と一蹴され貶められ続けてきた昭和史の見直し作業の必要性が、少なくとも真正面から現実を受け止めようとする者にとっては、明らかになったことが、よく分かるのではないかと思われます。

本書の発刊後、中西氏は、ベェノナ文書を同志たちと共訳し、世に問うたのですが、その後絶版になり、いまでは定価の数十倍の値段がついています。目下取り組み中のMMT関連の翻訳が終わったならば、ベェノナ文書の原書を取り寄せ、図書館から中西氏らの訳書を借りて参考にしながら読み進めてみたいものだと考えております。そういう思いに至るきっかけを作っていただいた村田さんに感謝します。

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*拡散希望*【三橋貴明×ステファニー・ケルトン】

2019年07月18日 17時09分23秒 | 経済


*今日配信された『三橋貴明の「新」経世済民新聞』を掲載します。本文中にあるとおり、〈ケルトン教授の知見は、日本国民が共有しなければならない〉という三橋氏の思いに100%賛同するからです。

特に強調したいのは、財務省発のデマ「政府の借金1000兆円!」 とは、実は、「国民の資産が1000兆円ある」という事実を指し示しているだけのことであり、財政支出と徴税の差額の履歴以外のなにものでもない、ということです。

それが深刻な問題であるかのように印象づけられるのは、政府の借金が、国民の貯蓄という源泉からの借り入れであるという誤解が広く行き渡っているからです。ところが実際には、政府の借金が増える分だけ国民の貯蓄という名の資産が増えるのです。言いかえれば、政府の借金が、国民にとっての新たなお金=新たな購買力を生み出すのです。それは理論である以前に事実であり、理論としても、よく考えれば当たり前のことです。

私の講釈は、これくらいにしておきます。

どうぞ、みなさま、下記を拡散してください。   

美津島 記  


***
 

 『三橋貴明の「新」経世済民新聞』

     2019/07/18

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

From 三橋貴明


【三橋貴明×ステファニー・ケルトン】概論、MMT(現代貨幣理論)

https://youtu.be/sJG7gqRbsAI


 はい! というわけで、MMT(現代貨幣理論)を主導する
スティファニー・ケルトン教授をお招きした三橋TVをお届け致します。
朝起きたら、すでに3万8千回超の視聴になっており、ビビりました。

経済学101の皆さんには、この度のケルトン教授招聘に際し、
アメリカ側との交渉窓口になり奮闘して頂きました。
心から感謝申し上げます。

 また、ケルトン教授招聘実行委員の皆さん、
つまりはケルトン教授をお招きするにあたり
ご寄付頂いた皆様にもお礼申し上げます。資金的に余裕ができたため、
人材・機材共に最高レベルの同時通訳でお届けすることができました。
(シンポジウムに出た方は、通訳の方のレベルの高さに
驚かれたのではないかと思います。わたくしは驚きました)


ちなみに、ケルトン教授との対談コンテンツ第一回「概論、MMT」では、
三橋が緊張しているように見え、確かにしているのですが、
スタッフから見ると高家さんも、
ついでにケルトン教授もガチガチだったそうです。

 みんなの緊張がほぐれたのは、第二回のオープニングで高家さんが
NG出しまくった後だとか何とか。

 いやあ、しかしケルトン教授は美人でした。同い年ですが。

 今回、ケルトン教授のシンポジウムに(PVでしたが)参加し、
確認した貴重な「事実」をいくつか挙げると、

1.政府の財政赤字は、政府以外の経済主体にとっての黒字
2.国債発行残高は、政府が支出し、徴税で回収しなかった貨幣の履歴
3.経済の制約は「財政」ではなく、インフレ率(リソースあるいは供給能力)
4.徴税は、国民の支出能力を奪い取る(国民の消費能力を奪い、インフレ率を抑制したいなら、消費税を増税したら?)
5.金融政策で国民の債務を増やすのではなく、財政政策で国民の所得と自信を増やせ!

 まあ、5は「いわゆるリフレ派」という日本における
社会実験に失敗した政策に対する最終的な
トドメでございますが、ちなみに第二回「MMTと日本経済の謎」で、
例の、「370兆円もMBを増やしたのに、インフレ率はゼロ」の図を見せたら、
ケルトン教授は苦笑いしながら、「これは貴重なデータだわ」ですと。

 まあ、そうなるよね。第二回は明日のお昼頃、配信予定です。

 上記の中で特に重要なのは、1と2です。つまりは、
「財政赤字、国の借金が膨れ上がっている!」
 というのは、実は、
「国民の黒字が維持され、政府の貨幣発行量が増えている」
 というだけの話に過ぎないのです。

 この「事実」だけでも共有しない限り、我が国に繁栄の未来はありません。

 ケルトン教授は「定義を変える必要がある」と繰り返していましたが、
特に「財政赤字」は「国民黒字」、「国の借金」は「貨幣発行量」
と呼び変えるべきでしょう。


『【藤井聡】ケルトン教授来日!そのお気持ちに応えるためにも 「正しい経済政策」を広めるべし。
From 藤井聡@(京都大学大学院教授)
ケルトン教授来日! そのお気持ちに応えるためにも
「正しい経済政策」を広めるべし。
昨夜から今日にかけて、昨日のケルトン教授の

MMT国際シンポジウムでの講演がさまざまに報道されました。

正直申しまして、これだけ適切な経済政策論が、

テレビや新聞で大きく報道される状況を目にしたのは、

生まれて初めてではないかと———と今しみじみと感じています。(後略)』
『ケルトン教授の講演の公開についてもご本人と相談したところ、
ご快諾頂けましたので(!)、大至急、公開して参りたいと思っております。』

おお!
というわけで、シンポジウムの映像を流せるかもしれません。

ケルトン教授招聘のためにご寄付頂いた皆様も、

シンポジウムやPVに参加して頂いた皆様も、
「これは、自分たちだけではなく、日本国民が共有しなければならない」

と、思っていて下さると確信しています。

いずれにせよ、財務省や政府の緊縮財政路線との戦いは、

まだまだ続きます。わたくし共は、まだ勝っていません。

勝つまで、負けない。

緊縮財政という日本の成長を妨げる

呪縛を打ち払うために、一人一人ができることをやるしかない。

ちなみに、高家さんが、

「MMTのような正しい"地動説"を広めるために、

私たちは何をすればいいのですか?」

と質問し、ケルトン教授が何と答えたのか。

第三回(来週月曜配信予定)のラストをお待ちください。


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