美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

及川幸久さん動画【敗れたルペン、5年後の勝利を!】

2022年04月27日 17時43分19秒 | 世界情勢
当動画によれば、今回のフランス大統領選挙においても、どうやら不正があったようです。午後10時の段階で1460万だったルペン票が一時間後には1330万となり、なんと130万票減っていたのです。ほかにも疑わしい出来事があったようです。MSMは例によってそれらの事実に触れようとしませんが、ネット界隈では大いに話題になっているとの由。

DS勢力の魔の手は、アメリカ大統領選挙のみならずフランス大統領選挙にも伸びているのでしょう。

それはそれとして、マリーヌ・ル・ペンの大統領選挙における得票率は、2012年17.9%、2017年33.9%、2022年41.5%と飛躍的に伸びています。そうして次回の大統領選挙にマクロンは立候補できません。予断を許さない状況ではありますが、5年後に希望の星が輝いているのは喜ばしいことです。

今年の11月の米国中間選挙、二年後の米国大統領選挙、そうしてその三年後の仏国大統領選挙と、目が離せない状態が続きますね。

それにしても、ルペンを「極右」と侮蔑し続けるMSMは、フランス国民有権者の四割強をも侮辱していることにそろそろ気づくべきです。


2022.4.26【フランス大統領選】敗れたルペンの価値ある躍進!消えた○○○万???【及川幸久−BREAKING−】
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インフレ第二波の展開を、歴史に学んで予想する

2022年04月25日 18時13分42秒 | 経済

スコット・マイナード氏

目下進行中の8.6%のインフレを阻止するため、米国連邦準備制度(FRB)は利上げなどの金融引き締め政策に転換しました。今回の紹介記事は、その先の展開を過去のデータを駆使して予想しています。当論考によれば、目下進行中のインフレは第一波にすぎず、いずれ第二波、第三波が、世界経済を襲います。加えて、その都度波はより高くなるとの由。

前途多難が予想される世界経済ですが、その荒波に呑み込まれることのないよう、共に先読みのセンサーを研ぎ澄ましましょう。

ちなみに、紹介記事に登場するスコット・マイナード氏は「ウォール街の3巨人」のひとりとされる米国金融界の超大物です。

***

マイナード氏: 株価暴落で金融引き締めが止まり物価高騰悪化へ
WWW.GLOBALMACRORESEARCH.ORG/JP/ARCHIVES/23397
2022年4月23日 GLOBALMACRORESEARCH

Guggenheim Partnersのスコット・マイナード氏がCNBCのインタビューで株価とインフレについて語っている。

景気後退懸念
市場では景気後退の前兆であるとされる長短金利の逆転が起こって以来、ようやく景気後退について話され始めている。

• 長短金利逆転を予測できた理由と今後の不況と株価暴落について
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22559

だが筆者にとってはこんな話は去年から明らかだったことであり、ここの読者も聞き飽きているだろう。

*長短金利逆転と株価暴落と景気後退の関係について、リーマンショックを例に挙げましょう。長短金利逆転が2006年2月、景気後退入りが2007年12月だから、2年弱の猶予期間がありました。株価暴落は景気後退の前に起こる場合が多く、リーマンショックの天井は2007年10月で、長短金利逆転から1年半後でした。

それを今回に単純にあてはめると、長短金利逆転が2022年4月、2023年10月が株価暴落、2024年2月が景気後退入り、となります。当論考の筆者は、今回それらが起こる間隔がもう少し狭くなると考えています。〔引用者 注〕


物価が高騰し、Fed(連邦準備制度)はインフレを抑えるために利上げなどの金融引き締め政策を行わねばならず、現在8.6%のインフレ率を抑制するためには金利は2018年に世界同時株安を引き起こした高金利を遥かに越えて上がって行かなければならない。

• アメリカの長期金利、2018年世界同時株安を引き起こした水準に近づく
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22889

そしてそれは株価も実体経済も破壊してしまうだろう。

最大のリスク
だがマイナード氏は興味深くも次のように言っている。

最大のリスクは景気後退ではない。最大のリスクは、株式や原油など何らかの資産クラスが暴落し、Fedが金融引き締めを止めなければならないと感じることだ。

だが金融引き締めを止めるのが早すぎた場合、Fedがインフレ抑制に本気だという信頼が失われるだろう。

何故引き締めを止めることがリスクなのか? 当然ながら現在8.6%のインフレ率が10%を遥かに越えて上がって行ってしまうからである。

もう一度ここからのシナリオを復習しよう。

まず、問題の根源は金融引き締めを行なった場合、インフレ率より先に株価が反応するということである。

金融引き締めは株価にも実体経済にも影響を与えるが、反応が早いのは株価の方である。インフレ相場でもまず金融市場で原油や小麦などの先物価格が上がり、それが時間差で消費者物価に転嫁されてくることは以前説明した。

この事実は金融引き締めを行うとどうなるかということに関係がある。何故ならば、実体経済よりも間違いなく株式市場が先に反応するからである。逆に株式市場に影響を与えない程度の金融引き締めでは間違いなくインフレを止められないだろう。

だから株価の暴落はインフレ阻止のための必要条件である。

株価暴落後のシナリオ
現在、米国株は次のように推移している。



慌てている投資家も居るようだが、この程度では落ちた内にも入らない。1970年代の物価高騰では株価は60%下落したのである。



だが実際に株価が暴落した時、中央銀行はどうするだろうか?

マイナード氏は、この時に中央銀行が引き締めの手を緩めることが最大のリスクだという。何故ならば、株価が下落する程度にはインフレ率は下落しないだろうからである。

しかし中央銀行が甘い判断を下した場合、インフレが収まりきらない間に金融緩和が始まる。そうしてそれがインフレ第2波へと繋がってゆく。そして第2波のインフレ率は現在のインフレ率より酷いものになるだろう。

結論
実際、それが1970年代のアメリカの物価高騰時代に起きたことである。当時のインフレ率を再掲しよう。



第3波まで来ていることが分かる。

現在のインフレも高確率で同じようになるだろう。筆者はこの「インフレ第2波」シナリオを去年から予想している。

• 現在のアメリカの物価高騰はインフレ第1波に過ぎない (2021/12/6)
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/17958

それについてマイナード氏が話し始めたということである。

何度も言うがここではすべてを事前に書いているので、参考にしてもらいたい。もうインフレは手遅れなのである。

• 2022年の株式市場: パーティは終わっているのにまだ踊っている人がいる
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/21985

***

当論者は別の論考で、おおむね次のように言っています。「コロナ後の株価上昇は大規模な現金給付と金融緩和政策によってもたらされた。いまやそれら2つの株価上昇の要因は消滅した。それゆえ株価が上昇する要因はない」と。目下の株価は、どうひいき目に見ても下落しやすい基本体質を有しているとしか言いようがないのです。
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及川幸久動画【マリーヌ・ル・ペンの勝機】

2022年04月23日 00時56分00秒 | 世界情勢


フランス大統領選挙実施までいよいよ一日です。

当方は、反グローバリズム派なので、当然のことながらマリーヌ・ル・ペンを応援しています。

のみならず、フランスの庶民にとっても、さらには世界のためにも、ル・ペンが勝ってほしいと心から思っています。

グローバリズムが一般国民にとっていいことはなにもないのは、贅言を要しないでしょう。

では、ル・ペン大統領誕生がなにゆえ世界のためなのか。

それは、フランス国民を苦しめているインフレの大本の原因は、化石燃料を目の敵にする脱炭素政策と現金給付にあるからです。そうして、脱炭素政策はグローバリズム陣営のイデオロギーなのです。

グローバリズムは、ヨーロッパにおいて、EUやNATOの形で具現化されています。

ル・ペン候補が、反EU・反NATOの立場であることはつとに知られています。

女史が大統領になったからといって、その「本音」がただちに具体化することはないでしょう。

しかし女史の一貫した政治姿勢は、プーチンとの腹を割った対話の機運をもたらすことでしょう。その機運は、きな臭いヨーロッパ情勢の好転に少なからず寄与することでしょう。ル・ペン大統領誕生が世界のためであると当方が主張するゆえんです。

ル・ペンの勝機は、ひとえにフランス一般国民の「目覚め」によってもたらされます。つまり、マクロンのグローバリズムに従っている限り、自分たちに幸せなどめぐってこないことに彼らが気づくかどうかにかかっているのです(われわれ日本人も他人事ではありません)。暴力的なインフレによって、その契機は十分に与えられていると当方は考えています。


2022.4.22【フランス大統領選】マクロンに対してルペンに勝機はあるか?【及川幸久−BREAKING−】
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西側諸国の対露制裁は、致命的な過ちである可能性が高い

2022年04月21日 21時20分20秒 | 世界情勢


*タイトルから、プーチン擁護と受けとめられかねないご時世なので、前もって言っておきます。以下は、100%日本擁護です。そのこころは「日本よ、道を誤ることなかれ」です。

国際決済網SWIFTからの排除などの強硬な経済制裁によって、ロシア通貨ルーブルは、ドルに対して一時期一気に値を下げました。西側諸国の論調は、「プーチン危うし!」でした。

ところがその後、対露制裁前の水準近くまで値を戻しています。それが市場の判断です。つまり「強硬な経済制裁によってロシア経済が崩壊したりぐらついたりすることはない」。

ここからおのずと浮かび上がってくるのは「強硬な対露制裁はもしかしたら失敗に終わるのかもしれない」という疑問です。

次に紹介する「グローバルマクロ・リサーチ」の論考は、「もちろんそうだ。のみならず、当制裁によって、ロシアはむしろ儲かり、西側諸国は自分で自分の首を絞めることになる。つまり自滅する」と言っています。

そういう判断や論が、反米親露のイデオロギストではなくて、オーソドックスなエコノミストやマネーのリアリストたちによって展開されているという事実を、当方は深刻に受けとめます。

賛成・反対、いろいろあるでしょうが、まずは耳を傾けてみましょう。


***

サマーズ氏: ロシアは対露制裁でむしろ儲かっている
WWW.GLOBALMACRORESEARCH.ORG/JP/ARCHIVES/23308
2022年4月20日 GLOBALMACRORESEARCH

アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、ウクライナ危機後のロシアについて面白いことを語っている。

ウクライナ危機後の対ロシア制裁
サマーズ氏はロシア経済の現状について次のように語っている。

ロシアは今や戦争前よりも多くの収入を得ている。そしてロシアの通貨ルーブルは強くなっている。何故ならば、ヨーロッパの国々がロシアから原油を大規模に輸入し続けているからだ。

ロシアのウクライナ侵攻以後、日本を含む西側諸国はロシアに対して制裁を課した。ロシアの中央銀行が国外に保有する資産は凍結され、ロシアの銀行の一部は国際決済網であるSWIFTから排除され、アメリカなどはロシア産のエネルギー資源の禁輸を発表した。

また、「アメリカにあるプーチン大統領の銀行口座」なる存在するわけがないものも凍結されている。
• 西側が制裁で海外資産を凍結したプーチン氏とラブロフ氏、海外口座を持っていない模様
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/20400

ロシアのものであれば架空のものでさえ取り締まってゆこうというスタンスである。

さて、これらはロシアを国際経済から徹底的に排除し、デフォルトに追い込もうとする試みだった。結果としてロシアルーブルは一時暴落していた。

しかしその後どうなったか? ドルルーブルのチャート(上方向がドル高ルーブル安)は次のように推移している。



西側の経済制裁が万能だと信じ、国際経済から締め出されたらロシアは終わりだと信じていた多くの日本人のバイアスは、むしろアメリカのお守り(皮肉にもそれが架空であることをウクライナが証明している)がなければ国際社会で生きていけないという自己の間違った西側依存をさらけ出したものだったのではないか。

*「アメリカは、核武装した国家と戦火を交えることはない」ことが、ウクライナ問題によって判明しました。すなわち「アメリカは、台湾や尖閣諸島に侵略する中共と戦果を交えない。ただし日本に武器の供給はする」。日本人にとって、これがウクライナ問題から得た最も重要な認識であると、当方は考えています。どこかの国の外務大臣は、なにやら楽観的な寝言を発しておりましたが。〔引用者 注〕

筆者は戦争勃発直後に次のように書いている。

• 戦争で株価は下落するのか? 歴史上の株価チャートを振り返る
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/20648

ロシアの主要輸出品であるエネルギー資源の価格はウクライナ情勢のために高騰しており、この状況でロシア経済が消えてなくなることは有り得そうにない。

これがバイアスのない目で見た事実である。そして市場はそれを織り込んだ。

ロシア経済を援助する対露制裁
だが興味深いのはそれだけではない。実際には対露制裁がロシアの収入増加を手助けしている。

何故ならば、アメリカやヨーロッパが表向きはロシアの資源を締め出すと宣言したことで、原油価格や小麦価格などが高騰しているからである。

• コモディティの高騰止まらず、原油や金は高値更新目指す勢い
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/23246

しかしその一方で、ヨーロッパは実際には天然ガスの輸入を続けている。ヨーロッパ人は脱炭素政策という宗教にのめり込み、原油の使用量を激減させた上で、ドイツなどは福島以降原子力発電を否定している。

• サマーズ氏: エネルギー価格を高騰させる脱炭素政策は健全ではない
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/16442

だがそれらのエネルギー量を供給が不安定な太陽光発電や風力発電で補えるわけがない。結果としてロシア産の天然ガスへの依存が大きくなり、禁輸すればただでさえインフレになっているヨーロッパで、電力価格は人々が本当に生活できないレベルまで上がってゆくだろう。

• 5倍に高騰しているヨーロッパの天然ガス価格とインフレ危機
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22488

• フランス、インフレ対策で現金給付へ
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/16682

*「生活できないレベルの物価高」。これが、4月24日の仏大統領選挙の行方を占うキー・ワードになるのではないでしょうか。フランスの一般国民が、何かしらの形で「西洋の長期自殺トレンド」に気づいたならば、僅差でルペンが勝利するのではないでしょうか。〔引用者 注〕

だからヨーロッパは、表向きに禁輸するという姿勢を見せながら輸入を続けるという選択肢を取らざるを得ない。だがこの行動は、わざわざロシアの輸出品の価格を上げてから輸入するような行為に他ならないのである。実はヨーロッパ人はロシアが好きなのではないか。親切なことである。

結論
西側諸国はどんどん自滅してゆく。中東の人々をタダ飯でそそのかしてヨーロッパ入りさせようとし、多くを地中海で溺死させた上で、辿り着いた移民はヨーロッパで婦女暴行を働いたこともそうである。また、脱炭素政策で自分のエネルギーの供給源を自分で断ち始めたこともそうである。さらに、ウクライナをけしかけてロシアとの戦争に追い込み、自国民に不必要な物価高騰をもたらしながらロシアに儲けさせていることもそうである。

• 移民危機からウクライナまで: 西洋文明は自殺しようとしている
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22334

筆者はこれを西洋の長期自殺トレンドと呼んでいる。そして「西洋」には西側諸国の愚かな政策に無批判に従う日本も含まれている。ウクライナは始まりに過ぎない。その結果は本当に酷いことになるだろう。

• 世界最大のヘッジファンド: ウクライナは世界秩序をめぐる戦争の始まりに過ぎない
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/23074

***

岸田政権は、論者のいわゆる「西洋の長期自殺トレンド」に100%寄り添おうとしています。ウクライナ問題から得られる
「アメリカは、台湾や尖閣諸島に侵略する中共と戦果を交えない」という貴重な認識から目をそらしつつ。
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円安進行とドル暴落

2022年04月20日 17時52分51秒 | 経済


20日の外国為替市場で円安が加速し、円相場が約20年ぶりに1ドル=129円台半ばまで下落しました。日米金利差の拡大が主たる要因です。米連邦準備制度(Fed)が悪性インフレを抑え込むため金融引き締め加速に積極的な姿勢を示したのに対して、日銀は利上げを見送り、金融緩和政策維持の姿勢を示したのです。

他方で、下に紹介するように、米国の投資家たちはドル暴落の時期をめぐって、その鋭敏な頭脳をフル回転させています。

ドルが暴落することによって円安傾向に終止符が打たれることになるのか、それとも、ドルと仲良く暴落の道をたどることになるのか、当方にはわかりません。

では、4月18日の「グローバル・マクロリサーチ」の4月18日掲載の論考を紹介いたします。

ちなみにガンドラッグ氏は、「新債券王」というニック・ネームを持つ、投資家の超有名人です。


***

ガンドラック氏、ドル暴落のタイミングを語る
WWW.GLOBALMACRORESEARCH.ORG/JP/ARCHIVES/23193
2022年4月18日 GLOBALMACRORESEARCH

CNBCによるDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のインタビューである。彼はドルが下落すると予想し、そのタイミングまで指摘しているので紹介したい。

ガンドラック氏のドル下落予想
ガンドラック氏はかねてよりドルはいずれ下落すると予想している。

インタビューではその理由を聞かれて改めて次のように答えている。

双子の赤字だ。アメリカの財政赤字は当たり前のように史上最大の水準で、貿易赤字はアメリカ人が現金給付を使って外国製の商品を買い漁ったことで急増した。

財政赤字は当然ながらコロナ後の現金給付などの財政政策によって増加した。つまり国の借金が大幅に増えたということだ。


*バイデン政権は、昨年の3月に国民一人当たり15万円の現金給付を実施しました。(引用者 注)

逆に株式はそのために上昇した。(一方でもう現金給付がないということが株式の今後の運命を決めている。)

• 2022年の株式市場: パーティは終わっているのにまだ踊っている人がいる
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/21985

そして財政赤字を拡大させた現金給付は、ガンドラック氏によれば貿易赤字をも拡大させている。

彼はコロナ後にアメリカで緩和措置が行われたとき、その緩和はアメリカよりもむしろ中国の利益になっていると主張していた。

• ガンドラック氏: 量的緩和は権力者と中国を裕福にし貧乏人をより貧乏にする
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13619

アメリカは商品を大量に中国から輸入しているので、アメリカ人が現金を渡された時に購入する商品は少なからず中国のものである。

資金流出するアメリカ
こうした事実はアメリカから資金が流出していることを意味している。ガンドラック氏は次のように主張する。

ドルの下落は、これらの赤字が制御不能になっていることと密接に関係している。

だが今のところドルの暴落という事態は起こっていない。これについてはここでも何度か説明しているが、ガンドラック氏は次のように説明している。

だが短期的には長短金利が縮まっていることはドルを支えている。

実は今ドルを買っている。今ドルを売っては駄目だ。ドルの売りは4年か5年単位の長期の話だ。


ここの読者には周知の通りだが、今金融市場では金利が上がっている。

特に上がっているのが政策金利に連動する2年物国債などの短期債であり、10年物以上の長期債の金利はそれほど上がっていない。

結果として長短の金利差が縮まっており、一時金利差はマイナスになった。

• 長短金利逆転を予測できた理由と今後の不況と株価暴落について
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22559

これは、本来10年投資しなければ得られない高金利(年率)が2年で得られることを意味する。金利高がドル高に繋がっているのは当たり前なのだが、一方で市場はこの金利高がインフレによるものだということを忘れている。

• 3月のアメリカのインフレ率は遂に8.6%に
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22933

利上げはインフレを抑制するために行われている。そしてインフレは紙幣をばら撒き過ぎたので紙幣の価値が下がっているということである。

市場は高金利に目をやるあまり、国内ではドルの価値が既に年率8.6%で下落しているという事実を忘れている。

ドル下落へ
だがこれは金融市場では平常運転なのである。インフレ期にはまずインフレ率が上がるがドル相場は下がらない時期があり、その後にドル相場はインフレに従って下落する。詳細は以下の記事を参考にしてもらいたい。

• ダリオ氏とサマーズ氏のドル下落に関する論争
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/14160

しかし下落はいずれ来る。だから筆者や著名投資家らはドルの下落のタイミングがいつかを考えているのである。

それはいつだろうか? 今回、ガンドラック氏はタイミングについても言及している。

ドルの下落は、具体的には次の景気後退時に起こるだろう。2023年までは起こらない。

つまり今年は起こらないとガンドラック氏は予想する。

思い出されるのは、ガンドラック氏と同じく債券のプロフェッショナルであるスコット・マイナード氏の景気後退予想である。

• マイナード氏: 米国株は金融引き締めで下落する前にまだ上がる
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/23127

長短金利が逆転したこと、そしてもう一度逆転する可能性があることは、基本的に今後18ヶ月から2年の間に景気後退があるサインだということになる。

だから来年前後だというのがガンドラック氏の見方になる。

*リーマンショックを例に挙げましょう。長短金利逆転が2006年2月、景気後退入りが2007年12月だから、2年弱の猶予期間がありました。株価暴落は景気後退の前に起こる場合が多く、リーマンショックの天井は2007年10月で、長短金利逆転から1年半後でした。

それを今回に単純にあてはめると、長短金利逆転が2022年4月、2023年10月が株価暴落、2024年2月が景気後退入り、となります。あくまでも参考にすぎませんが。

以下のとおり当論考は、もっと早く事が進むと考えています。〔引用者 注〕


結論
一方で筆者のドルの天井予想はもう少し早い。景気後退時ではなく、その少し前に起きる株価暴落時が、市場のドルに対する悲観的態度が強まるタイミングだと考えている。そしてその時は刻一刻と近づいている。

• アメリカの長期金利、2018年世界同時株安を引き起こした水準に近づく
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22889

だから今年中のドル暴落開始も有り得るだろう。他の識者のドル相場予想も参考にしながら、読者にも考えてもらいたい。

• ジム・ロジャーズ氏: ウクライナ危機でドルは暴落する
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/21358

• ポズサー氏: 制裁合戦で金本位制復活、コモディティ高騰でインフレ危機へ
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22124

***
ジム・ロジャーズ氏によれば、アメリカの対露制裁に端を発するドルの暴落には、基軸通貨としてのドルへの信用の失墜という背景があります。

とすれば、今後のドルの暴落は基軸通貨ドルの「終わりのはじまり」として認識することも必要かと思われます。日本はバイデンのアメリカと運命を共にする腹づもりでいるようですから、円の運命も予断を許さないものとなりそうです。先に「ドルが暴落することによって円安傾向に終止符が打たれることになるのか、それとも、ドルと仲良く暴落の道をたどることになるのか、当方にはわかりません」と申し上げたゆえんです。

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