美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

量子力学について(その7)電子の発見⑤

2020年01月31日 16時21分07秒 | 科学


*今回から、量子力学の講義の動画をメインに据え、その内容の筋道がたどれるようにあらかじめ関連する基礎知識をお伝えしておく、というやり方にしたいと思います。きちんとお読みいただき、繰り返し動画をごらんいただければ腑に落ちるように配慮したいと思っております。





以上をふまえたうえで、以下の動画をごらんください。話の筋道はおおむね明らかになるのではないかと思われます。

高校物理解説講義:「電子の発見」講義5



コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

量子力学について(その6)電子の発見④

2020年01月24日 20時43分19秒 | 科学
*直筆の式の展開を見やすくアップする方法について四苦八苦するうちにいたずらに時が過ぎてしまいました。申し訳ございません。


***

今回は、J.Jトムソンが電子の比電荷(電子の電荷e/電子の質量mつまり、e÷m)を求めた筋道について学びます。そのなかで、物理の知識ゼロだと、話が分からなくなるところがいくつかあります。

それで、今回の話が分かるための物理の基礎知識をいくつか押さえておこうと思います。

まずは、等加速度直線運動の公式について。等加速度直線運動とは、速度が一定の割合で増える直線運動です。どんどん速くなるわけです。ボールが斜面を転がるイメージなんかがそれです。

公式は次の3つです。



次に電磁気の基本公式について。大本の基本式は1つ、そこから派生した基本式がもう1つです。



以上で、準備完了です。

では、電子の比電荷(e/m)の定式を、順を追って導きましょう。




次は、比電荷を定めるためには、電子の速度vを求める必要がある、となります。

今回は、以上です。

高校物理解説講義:「電子の発見」講義4
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

量子力学について(その5)電子の発見③

2020年01月12日 20時23分15秒 | 科学

J.Jトムソンは、1879年に電子の比電荷の測定に成功しました。電子の比電荷とは、電子の質量をm、電子の電荷(電気量)をeとすると、e/mつまりe÷m です。トムソンによってまず電子の比電荷が測定され、次にミリカンの実験によって電子の電荷が求められ、最後に電子の質量が計算で求められました。

では、電子の比電荷はどのような実験によって求められたのでしょうか。



適切な図が見当たらなかったので、自家製の雑ぱくな図でかんべんしてください。

まずは、電子が飛び出す必要があります。フィラメントという金属に電流を流し加熱し電圧を加えると、フィラメントから電子が飛び出します。このまま何もしなければ電子は直進しAのポイントで蛍光を発します。ここで上の図のような位置に電圧を加えると(電場を作ると)、電子はマイナスの電荷を帯びているので、上に曲がります。そうして、電場から外へ出ると等速直線運動をして、蛍光面にぶつかり、Aから上にズレたところで蛍光を発します。加える電圧の大きさを変えると蛍光とAとのずれの大きさが変わります(ちなみに、これがブラウン管テレビの原理です)。

では、この実験装置でどうやって比電荷が求められるのか、次回に数式を使って具体的に見てゆきましょう。

ざっくりと言えば、荷電粒子の比電荷は,電場・磁場内におけるその粒子の軌道を測定すれば求めることができます。

高校物理解説講義:「電子の発見」講義3

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

量子力学について(その4)電子の発見②

2020年01月08日 17時59分54秒 | 科学

J.Jトムソン

イギリスのJ.Jトムソンなどの研究により、陰極線の次の3つの性質が明らかになりました。

1) 電場や磁場によって曲がる。
2) ガラス管に当たって蛍光を発する。
3) 物体によってさえぎられ影を作る。

以上より、陰極線の正体は「負電荷を持つ粒子の流れ」であるとされ、その「負電荷を持つ粒子」は「電子」(エレクトロン)と名づけられました。

以下、それぞれについて若干の説明を加えましょう。

1) について。



上図のようにC(+極)とD(-極)に電場を加えると、陰極線は+極側すなわち上方に曲がります。この現象から、陰極線は負電荷であることがうかがえます。

*「C(+極)とD(-極)に電場を加える」とは、要するにCからD方向に電流を流すことです。「電場」にはきちっとした定義があるのですが、それに深入りすると話が見えにくくなるのでやめておきましょう。



上の図のように、陰極線に磁場を加えると下方にローレンツ力が生じ、陰極線は下に曲がります。



ローレンツ力とは、「動く荷電粒子が磁場から受ける力」です。中学生のころに教わった「フレミングの左手の法則」の親指の方向がローレンツ力の方向です。ひとつ前の図に戻ると、「電流の向き」が右から左の方向(電流の向きと電子の向きは逆です!)、「磁界の向き(磁力線の向き)」が手前から奥への方向とすると、ローレンツ力は下向きになります。ちなみに、薬指と小指は折り曲げないほうがやりやすいですよ。

次に、3)について。



上の図のように、陰極線の進路をさえぎるように金属製の障害物を置くと、陰極線は、その形と同じ影を作ります。これは、陰極線に直進性があることを示しています。またこのとき、陰極と陽極を逆にすると影は現れません。これは、陰極線は陰極から陽極に流れていることを示しています。

以上のような考察から、J.Jトムソンは、陰極線は、負電荷を持つ電子の流れであると結論づけました。

次回は、電子の比電荷の測定に話が移ります。物理学特有の数式が登場します。できるだけ話の筋道を明らかにしながら進みますので、おつきあいくださいね。

*今回は、ほとんどの図とその解説の多くを「わかりやすい高校物理の部屋」http://www.wakariyasui.sakura.ne.jp/#atom に負いました。この場を借りて、お礼を申し上げます。

高校物理解説講義:「電子の発見」講義2
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

量子力学について(その3)電子の発見①

2020年01月07日 21時43分35秒 | 科学


「電子の発見」は、厳密に言えば量子力学の範囲内に入りません。電子の発見にとって画期的な実験だった「真空放電」が実施されたのは19世紀の半ばだったからです。

しかしながら、電子が発見されたプロセスをたどることは、目に見えないミクロな世界を学ぶ上での出発点としてふさわしいのです。

では、電子がどういう実験で見つけられ、どのような電荷を持ち、どのような質量を持っているのかをこれから学びましょう。

*「電荷」という言葉に戸惑われた方がいらっしゃるのではないでしょうか(私もそうでした)。電気のことを物理的、あるいは微視的にいうとき、電荷といいます。電荷には正と負がありそれぞれ正電荷、負電荷といいます。同じ符号同士の電荷は反発し合い(斥力、せきりょく)、異なる符号同士の電荷は引きつけ合います(引力)。

電子は、真空放電をきっかけに発見されました。


真空放電とは何でしょうか。蛍光灯と同じような形をした放電管というガラス管に電極をつなぎ、管内の空気を抜いていきます。そして、上記の電極A(陰極)と電極B(陽極)に高い電圧を加えると、図のように光っている部分が見られ、放電が起こります。このように、気圧が低いときに空間に電流が流れる現象を、 真空放電 といいます。

真空放電をしているガラス管内に蛍光塗料などをぬると、明るく発光します(蛍光灯は、このようなしくみで明るく光るのです)。

ちなみに「真空」とありますが、本当の真空のなかで光は発しません。1/100気圧から1/1000気圧くらいの非常に薄くした空気中で「真空」放電は起こるのです。それ以上もっと薄くすると光を発しなくなるのです。

この〈光を発する何か〉は、「陰極線」と名付けられました。

この陰極線の正体は何なのかということが次に問題になってきます。


高校物理解説講義:「電子の発見」講義1

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする