今回は、『NAIAGARA CONCERT ‘83』CD2の最後まで行ってしまいましょう。
十二曲目は、「Train Of Love~サマー・ローション」です。当曲が歌われたのは、一九七七年六月二〇日渋谷公会堂での「THE FIRST NIAGARA CONCERT」においてです。なぜ「FIRST」なのかといえば、当ツアーが、ナイアガラ・レーベル発足以来初めてのコンサート・ツアーだったからです。七七年六月一九日の大阪毎日ホールを皮切りに、二〇日が渋谷公会堂、二一日が仙台電力ホール、二四日が名古屋勤労会館、二四日が福岡電気ホールという日程のなかでの、当収録は二〇日のものです。
「Train Of Love」は、ポール・アンカが作詞・作曲した楽曲で、アネットが六〇年四月に発表し、全米第三六位を記録しました。同年七月にはイギリスの女性シンガー・アルマ・コーガンが発表し、全英第二八位を記録しました。日本では、最近亡くなった森山加代子が「恋の汽車ポッポ」の邦題で六一年に日本語でカヴァーしました。
ここで大瀧詠一は、その歌詞を大幅に改変して歌っています。
「サマーローション」は、大滝詠一が資生堂のCMソングとして七三年四月に録音した曲なのですが、なぜかしら、一回しかオン・エアされませんでした。
参加ミュージシャンとしては、ギター村松邦男、キーボード井上鑑(あきら)の名が挙がっています。
原曲に触れると、アネットの小悪魔的ヴォーカルがなかなか魅力的です。
森山加代子に関しては、弘田三枝子や中尾ミエなどとともに草創期のジャパンポップスのシンガーとして、大滝詠一は、彼女を哀惜の念を籠めながら高く評価しています。森山加代子は、今年の三月六日に永眠なさいました。合掌。個人的な経験になりますが、一九七〇年、当方中二の春か秋に、函館の野外会場で彼女が歌うところを生で(無料で)観ています。中学生の私にとっても、はじけるような、とてもキュートな歌いっぷりだったことが、いまでも印象に残っています。自然体のコケティの持ち主と申しましょうか。彼女の生来の持ち味なのでしょうね。
Annette Funicello - The Train Of Love
森山加代子 恋の汽車ポッポ(1) 1961 / The Train Of Love
十三曲目は、「Dream Lover~Travelin’Man」のメドレー。一九七六年一〇月七日渋谷公会堂で実施された「GO!GO!NIAGARA」で歌われたものです。
「Dream Lover」は、ボビー・ダーリンが五九年四月に発表した自作自演の曲で全米第二位を記録し、「Travelin’Man」はリッキー・ネルソンが六一年四月に発表した曲で全米第一位を記録しています。当曲の作者ジェリー・フラーは、リッキー・ネルソンに多数の楽曲を提供しているほかに、ゲイリー・パケット率いるユニオン・ギャップの「ヤング・ガール」などのヒット曲を作詞・作曲しています。
Bobby Darin - Dream Lover
Travellin' Man Ricky Nelson
十曲目の「Who Put The Bomp」もそうですが、曲調やテンポやコード進行が似ている曲をさりげなくメドレーにしてしまうところに、大滝ワールドの大きな特徴がありますね。
十四曲目は、「Blue Suede Shoes」です。エルヴィス・プレスリーが五六年三月二三日に発表した楽曲で、全米二四位を記録しました。作者のカール・パーキンスのヴァージョンは五六年一月に発表され、全米カントリー・チャートで第一位、ポップチャートで第二位を記録しています。二人のプレイを掲げておきましょう。
Elvis Presley - Blue Suede Shoes 1956 (COLOR and STEREO)
1956 HITS ARCHIVE: Blue Suede Shoes - Carl Perkins (a #1 record)
演奏メンバーに、エレキギター村松邦男、キーボード坂本龍一の名が見られます。
一五曲目は、ポール・マッカートニーの「Yesterday」です。録音状態は決して良くないのですが、一九六六年十一月三日、岩手予餞会での演奏というだけでも話題性十分です。高校生のころの歌、ということになりますね。このころのヴォーカルにすでに大滝詠一らしさがうかがえます。
(次回に続く)