ASIAの独り言

   

パンプキン・タクシー

2020年06月07日 11時01分17秒 | 日記
昨日仕事がキツく、結構ヘトヘト。湿気で髪ベトベト。金髪のネドベド。
ア~ンド土砂降りなので、終電あるのにタクシー。全然来ない。
あ、今はスマホで呼べるのか。って思ったら来た。真っ黒で、何かデカい。
上の提灯がなく、平べったいのが控えめに載ってる。迷わず手を挙げた。滑るように停車。
バンって手前にドアが開かず、ウイーンってスライドして開く。何か物々しい。

アイボリーのシート。革張り。グリーン車みたいなアームレスト。え? 後部座席が2列?
何、この豪華な車内。初乗り420円でいけるの? どこにも書いてない……冷や汗。ますますネドベド。
……こ、こ、これ、ハイヤーじゃね?
何、誰かがサプライズで寄越してくれたの? そういえば誕生日近いし。
このまま舞浜のホテルに連れてかれ、豪華なディナーでお祝い? 誰が?

テンション上がって、インコのようにキョロキョロ見回してたら、運転手が一言。
「どちらまで?」……何、この低音ボイス。渋い、渋過ぎる。
え? どちらまで? あれ? サプライズは?……何か急に普通のタクシーっぽい。
恐る恐る行き先を告げる。「かしこまりました」やっぱ渋い……私は何に乗ってるんだ?

静かに走り出す。あ、その前に聞くべきだった! 今からでも!「これ、タクシーですか?」
「いえ、ハイヤーです」あぁ! やっぱりかぁ!……どう言って降りようか容量いっぱい考えたとき、
「いつもは」と追加の言葉。てことは?……
「このご時勢海外からのお客様がいらっしゃらないので、タクシーとして走っております」
見る見る頬が緩み、みんなのたあ坊みたいに脱力し、アイボリーのシートに沈み込む。良かった~(汗)……

ラッキー! タクシー料金でハイヤーに乗ってる!……急に下世話なテンション。
ただ運転手さん、ちょっとだけやりづらそう。どうも道に詳しくない感じ。
それで申し訳ないと思ってるっぽい。訳を聞くと、
「普段、ほとんど高速なもので」……えぇ~?
何とかサミットや会談の偉い人、映画のプロモーションで来たスターとか乗せたみたい。すんご~い♪
「成田からホテル直行が多いもので……申し訳ございません」
いえいえ、そんなお車にこんなエビフライのしっぽみたいなのが乗っちまって汚れちまってごめんなさいの悲しみ。

一旦恐縮はしたものの、運転手さんの細やかな配慮のおかげで段々リラックス。
束の間自分がDIP、じゃなく、ZIPでもなく、あ、VIPになったかの如く夢のようなひと時が過ぎ、家の近くに着いた。
「お支払いはカードで?」……お、まずカードと来た。VIP気分継続。でも、そろそろガラスの靴は脱がなきゃいけない。
「あの、PASMOでもいいですか?」と聞いてみた。
「申し訳ございません。まだ対応しておりませんので」絵に描いたような苦笑いでやんわり断られた。
……紙幣と小銭を渡す。ちょうど出せるところも庶民的。お釣りはいらないよ(当たり前)。
「足元お気を付けください」静かにゆっくり開くドア。雨の音が強まる。
乗るとき気づかなかったけど、ステップが二段になってる。とことん高級、徹頭徹尾ゴージャス。君の瞳にレヴォリューション!

私が角を曲がってから、発車した様子。見えなくなるまで待っててくれたっぽい。
(お金が細かくて数えてただけなら、ごめんなさい……)
部屋で一息つき、かぼちゃのポタージュかきまぜながら時計を見ると、針が午前零時を指していた。魔法は解けたんだな。