ノンフィクション作家保坂正康の岸田文雄評が面白い。
(北海道新聞・各自核論)
私の見るところ、この首相は東条英機型であると思う。東条の強引さ、直線的な発想という特徴はないのだが、もっとも重要な点が重なり合うのだ。
1,自分と周囲の利害得失でしか物事を判断しない。
2,人事で有能の士を遠ざける。
3,大局より小事にこだわり、その実践を誇りとする。
要は状況をつくるのではなく、状況の流れの中でしか判断しないのである。
保阪の指摘は、戦前の歴史(特に昭和10年代)に関する第1人者としての鋭い洞察によるものだ。
哲学・思想はあるが優柔不断に対応する近衛文麿。
迂回しながらも政治的目標の完遂を目指す鈴木貫太郎。
信念欠如、思想欠落の広田弘毅、林銑十郎、平沼騏一郎、阿部信行、米内光政、小磯国昭。
岸田に近衛文麿や鈴木貫太郎の長所を取り入れた首相像の確立を望んでいるが、無理ではなかろうか?
ロシアのウクライナ侵攻やハマスとイスラエルの紛争は、国際社会が傍観していると第3次世界大戦に拡大する恐れがある。
その中で日本はどのような立ち位置をとるか、アメリカに従属するだけのスタンスでは危うい。
アメリカは中国と断絶しても食糧もエネルギーも自給できるから国家存亡の危機などには至らない。
しかし日本は違う。
台湾海峡周辺で衝突が生じると極めて大きなリスクが生じる。
そうならないためにどうするか。本当に知恵を絞らなければならないのだ。
いたずらに強硬論に走った戦前の愚を繰り返してはならない。