「今年」
涙があるだろう
今年も
涙ながらの歌があるだろう
固めたこぶしがあるだろう
大笑いがあるだろう
今年も
あくびをするだろう
今年も
短い旅に出るだろう
そして帰ってくるだろう
農夫は野に
数学者は書斎に
眠れぬ夜があるだろう
だが愛するだろう
今年も
自分より小さなものを
自分を超えて大きなものを
くだらぬことに喜ぶだろう
今年も
ささやかな幸せがあり
それは大きな不幸を
忘れさせることはできぬだろう
けれど娘は背が伸びるだろう
そして樹も
御飯のおいしい日があるだろう
新しい靴を一足買うだろう
決心はにぶるだろう
今年も
しかし去年とちがうだろうほんの少し
今年は
地平は遠く果てないだろう
宇宙へと大きなロケットはのぼり
子等は駆けてゆくだろう
今年も歓びがあるだろう
生きてゆくかぎり
いなむことのできぬ希望が
「地球へのピクニック」
ここで一緒になわとびをしよう ここで
ここで一緒におにぎりを食べよう
ここでおまえを愛そう
おまえの眼は空の青をうつし
おまえの背中はよもぎの緑に染まるだろう
ここで一緒に星座の名前を覚えよう
ここにいてすべての遠いものを夢見よう
ここで潮干狩をしよう
あけがたの空の海から
小さなひとでをとって来よう
朝ごはんにはそれを捨て
夜をひくにまかせよう
ここでただいまを云い続けよう
おまえがお帰りなさいをくり返す間
ここへ何度でも帰って来よう
ここで熱いお茶を飲もう
ここで一緒に坐ってしばらくの間
涼しい風に吹かれよう