その日も私は、いつものように咲人と電話していた。
もはや彼との電話は毎日のものになっていた。
「そんなこと言われても、話すことなんてないけど」
と、やや呆れ顔で言ったのは私だ。
こうも毎日話していたら話すことなんてなくなる。
それでも咲人は毎日電話したがったし、電話するたびに私に今日はどう?と訊いた。
咲人は始めから自分自身をあまりお喋りじゃなく、沢山質問する人間だとことわっていた。
宣言通り彼は私に質問責めしてくるので、英語の練習には有効なものの、お喋りとしてはタフになってきた。
まぁ実際は彼も私に質問されれば饒舌に語るのだけど。
「何かないのかよ。仕事のことでも、新しい友達のことでも」
「友達?あー、そういえば最近面白い物もらったわ」
「教えて」
「実はね、9つも下の男の子からプレゼントをもらったのよ。何をもらったか予想できる?」
咲人は唸った。
まぁ、確かにヒントが少なすぎる。
私は早々に首輪のことを教えた。
そして、それについて話したときの翔一の反応についても。
「私も日本の友達もすごくビックリしたし面白がったのよ。
でも彼は全然ビックリしなかったし、他にもそういう趣味の子がいるし、
“きっとメイサちゃんには強力な磁石があるんだ”って言われたの(笑)
私、そういう人を集める磁石があるのかな?」
と、私が笑いながら問うと、咲人は事も無げに即答した。
「そうだろうな」
「え?そう思うの?」
「思うよ」
えっちょっと待って?
っていうことは………
「待ってよ。って事はつまり……咲人も含まれてるって事…?」
また即答だった。
「Of course」
おっ……お前もかーい!!
「えぇぇぇぇぇ」
「メイサは強力な磁石を持ってるんだよ」
「い、いらないよそんなのぉぉぉ」
「なんで?俺が思うに、何か前情報があったから君に首輪をあげたんだと思うぜ?
君がそういうものが好きだとか何か言ったとか。違うのか?」
う、スルドイ。。。
そう、実はプレゼントされる前にそういう会話があった。
正直に言うと私は性的には被虐趣味、いわゆるMさんだ。
でもそれに倒錯するというか執着してるわけでもなく、ノーマルでも愛があれば問題ないし、
なんていうか、ソフトM?
おそらく女性には多いタイプだと思う。(いや知らんけど)
加えてそんな機会もなかったので、そのためにツールを使った事はなかった。
けれど雅留は若いのにそういうものが大好きな男の子で、
いざ付き合い出したら「メイサは何が好きなの?何に興味があるの?こんなのはどう?」と興味津々だった。
なので、そこは正直に、手錠とかなら好きかも…と答えたのだ。
ほんでもってなぜかそこから首輪に派生したのだ。(いやホントなんで?)
咲人の指摘があまりに的を得ていたので、私はちょっとたじたじと答えた。
「えっと…その、まぁ確かにちょっとそういう話はしたけど」
「どんな」
「その…彼に、私の性癖について聞かれたから…」
「どんな性癖なの」
「え、えっとぉ…」
タジタジな私とは対照的に、咲人は矢継ぎ早だ。
た、たすけて〜(汗)
なんでコイツこんなに食いついてんのよぉー(涙)
私は困り顔で、しかし一応語気だけは毅然と…を目標に(笑)答えた。
「私はね、耳を噛まれるのが好きって答えたの」
「…ほう」
「耳とか、首とかを噛まれるのが好きなの。
で、多分私がそう言ったから彼は首輪も好きだと思ったんじゃない?」
Interesting!と咲人が叫んだ。
そ、そうか?なんでそんな盛り上がってんの?
「俺、その性癖聞いたことなかったよ」
「そう?耳って結構一般的だと思うけど…」
「わからなくもないが…」
「でしょ。だって耳とか首って、その、」
「プライベートエリアだよな」
「はい、そういう事です…」
Interesting, Interesting と何度か呟き、咲人はまた質問した。
「で、君はその子とその首輪を使ったの?」
「いいえ?」
「なんで?」
「いや、単に今の所チャンスがなかったし…」
「ふーーーん?じゃ、君はいつからその性癖に気づいたの?」
「え?耳のこと?それともそういうちょっと受け身なところ?」
「受け身なところ」
「うーん。元彼の一人がそういうの好きだったからかなぁ。」
「なるほど。彼とはどんなことをしたの?」
「(えっ!?)い、いやぁ、そんな大した事してないよ」
「例えば?」
「う、うーん、別に何も使ってないし…」
「具体的には?」
「え〜?いやぁ、本当そんな、なんて言ったらいいんだろう…」
ていうか皆さん!!
これ英語で話してるわけですよ。
私が帰国子女ならともかく、なんでこんなプライベートトークを知り合って間もない男とシラフで英語でしなきゃいけないの!?
いや日本語ならいいのかって言われたらそうでもないんだけど!
私はほとほと困ってしまい、今度ね、と話を切り上げた。
…つもりだったが、
「約束する?」
しねーよ!
「なんでわざわざそんな事アンタと約束しなきゃいけないのよ!?」
「それもそうだな」
「オイ!(笑)」
散々質問責めにしたくせに、すんなり納得している咲人に吹き出してしまった。
本当に変なヤツ。
「ところであなたは?あなたも私の磁石で引き寄せられた男の一人なら、そういう趣味があるんでしょ?」
「もちろん」
「どんな?あなたも首輪が好きなの?」
「いや、ちょっと違うな。俺はボンデージが好きなんだ」
「ボ…」
「力のアンバランスさって言えばいいのかな。それが好きなんだ」
さ、さいですか……。
支配欲があるのかな。
まぁ多分、結局彼もSって事よね。
私の磁石、MっていうかNなのかな……。
咲人は偏屈で偉そうで変人だったけど、基本的にはいい奴で、
それは他の人達、つまり、私の磁石に引き寄せられたと言える人達にも当てはまった。
9つも下なのにご主人様にならんとしている雅留。
色々ツールを持ってるけど温厚な翔一。
あまり連絡は取れないけど話すたびに楽しいジョー。(待って、彼そんな性癖あったっけ!?)
と、まぁ他にも色々あったのだけど、咲人も含め、こういう人達ものことをなんと呼ぶのが的確だったのかはよく分からない。
友達?男友達?彼氏?いや、違うよね?
そして仁さんは………何だったんだろう。
この時はまだ仁さんは私の中でちゃんと解決していなくて
どんなに咲人と話して笑っても
梓に話を聞いてもらっても
心はシクシクと痛んで、来ない連絡を待ち続けていた。
続きます。
もはや彼との電話は毎日のものになっていた。
「そんなこと言われても、話すことなんてないけど」
と、やや呆れ顔で言ったのは私だ。
こうも毎日話していたら話すことなんてなくなる。
それでも咲人は毎日電話したがったし、電話するたびに私に今日はどう?と訊いた。
咲人は始めから自分自身をあまりお喋りじゃなく、沢山質問する人間だとことわっていた。
宣言通り彼は私に質問責めしてくるので、英語の練習には有効なものの、お喋りとしてはタフになってきた。
まぁ実際は彼も私に質問されれば饒舌に語るのだけど。
「何かないのかよ。仕事のことでも、新しい友達のことでも」
「友達?あー、そういえば最近面白い物もらったわ」
「教えて」
「実はね、9つも下の男の子からプレゼントをもらったのよ。何をもらったか予想できる?」
咲人は唸った。
まぁ、確かにヒントが少なすぎる。
私は早々に首輪のことを教えた。
そして、それについて話したときの翔一の反応についても。
「私も日本の友達もすごくビックリしたし面白がったのよ。
でも彼は全然ビックリしなかったし、他にもそういう趣味の子がいるし、
“きっとメイサちゃんには強力な磁石があるんだ”って言われたの(笑)
私、そういう人を集める磁石があるのかな?」
と、私が笑いながら問うと、咲人は事も無げに即答した。
「そうだろうな」
「え?そう思うの?」
「思うよ」
えっちょっと待って?
っていうことは………
「待ってよ。って事はつまり……咲人も含まれてるって事…?」
また即答だった。
「Of course」
おっ……お前もかーい!!
「えぇぇぇぇぇ」
「メイサは強力な磁石を持ってるんだよ」
「い、いらないよそんなのぉぉぉ」
「なんで?俺が思うに、何か前情報があったから君に首輪をあげたんだと思うぜ?
君がそういうものが好きだとか何か言ったとか。違うのか?」
う、スルドイ。。。
そう、実はプレゼントされる前にそういう会話があった。
正直に言うと私は性的には被虐趣味、いわゆるMさんだ。
でもそれに倒錯するというか執着してるわけでもなく、ノーマルでも愛があれば問題ないし、
なんていうか、ソフトM?
おそらく女性には多いタイプだと思う。(いや知らんけど)
加えてそんな機会もなかったので、そのためにツールを使った事はなかった。
けれど雅留は
いざ付き合い出したら「メイサは何が好きなの?何に興味があるの?こんなのはどう?」と興味津々だった。
なので、そこは正直に、手錠とかなら好きかも…と答えたのだ。
ほんでもってなぜかそこから首輪に派生したのだ。(いやホントなんで?)
咲人の指摘があまりに的を得ていたので、私はちょっとたじたじと答えた。
「えっと…その、まぁ確かにちょっとそういう話はしたけど」
「どんな」
「その…彼に、私の性癖について聞かれたから…」
「どんな性癖なの」
「え、えっとぉ…」
タジタジな私とは対照的に、咲人は矢継ぎ早だ。
た、たすけて〜(汗)
なんでコイツこんなに食いついてんのよぉー(涙)
私は困り顔で、しかし一応語気だけは毅然と…を目標に(笑)答えた。
「私はね、耳を噛まれるのが好きって答えたの」
「…ほう」
「耳とか、首とかを噛まれるのが好きなの。
で、多分私がそう言ったから彼は首輪も好きだと思ったんじゃない?」
Interesting!と咲人が叫んだ。
そ、そうか?なんでそんな盛り上がってんの?
「俺、その性癖聞いたことなかったよ」
「そう?耳って結構一般的だと思うけど…」
「わからなくもないが…」
「でしょ。だって耳とか首って、その、」
「プライベートエリアだよな」
「はい、そういう事です…」
Interesting, Interesting と何度か呟き、咲人はまた質問した。
「で、君はその子とその首輪を使ったの?」
「いいえ?」
「なんで?」
「いや、単に今の所チャンスがなかったし…」
「ふーーーん?じゃ、君はいつからその性癖に気づいたの?」
「え?耳のこと?それともそういうちょっと受け身なところ?」
「受け身なところ」
「うーん。元彼の一人がそういうの好きだったからかなぁ。」
「なるほど。彼とはどんなことをしたの?」
「(えっ!?)い、いやぁ、そんな大した事してないよ」
「例えば?」
「う、うーん、別に何も使ってないし…」
「具体的には?」
「え〜?いやぁ、本当そんな、なんて言ったらいいんだろう…」
ていうか皆さん!!
これ英語で話してるわけですよ。
私が帰国子女ならともかく、なんでこんなプライベートトークを知り合って間もない男とシラフで英語でしなきゃいけないの!?
いや日本語ならいいのかって言われたらそうでもないんだけど!
私はほとほと困ってしまい、今度ね、と話を切り上げた。
…つもりだったが、
「約束する?」
しねーよ!
「なんでわざわざそんな事アンタと約束しなきゃいけないのよ!?」
「それもそうだな」
「オイ!(笑)」
散々質問責めにしたくせに、すんなり納得している咲人に吹き出してしまった。
本当に変なヤツ。
「ところであなたは?あなたも私の磁石で引き寄せられた男の一人なら、そういう趣味があるんでしょ?」
「もちろん」
「どんな?あなたも首輪が好きなの?」
「いや、ちょっと違うな。俺はボンデージが好きなんだ」
「ボ…」
「力のアンバランスさって言えばいいのかな。それが好きなんだ」
さ、さいですか……。
支配欲があるのかな。
まぁ多分、結局彼もSって事よね。
私の磁石、MっていうかNなのかな……。
咲人は偏屈で偉そうで変人だったけど、基本的にはいい奴で、
それは他の人達、つまり、私の磁石に引き寄せられたと言える人達にも当てはまった。
9つも下なのにご主人様にならんとしている雅留。
色々ツールを持ってるけど温厚な翔一。
あまり連絡は取れないけど話すたびに楽しいジョー。(待って、彼そんな性癖あったっけ!?)
と、まぁ他にも色々あったのだけど、咲人も含め、こういう人達ものことをなんと呼ぶのが的確だったのかはよく分からない。
友達?男友達?彼氏?いや、違うよね?
そして仁さんは………何だったんだろう。
この時はまだ仁さんは私の中でちゃんと解決していなくて
どんなに咲人と話して笑っても
梓に話を聞いてもらっても
心はシクシクと痛んで、来ない連絡を待ち続けていた。
続きます。
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